俺、困ります。
‐17話 俺、困ります。‐
「シュウ、どうするの?」
「絶対やりたくないです」
「そこをなんとか!」
「シュウ、どうするの?」
「関わりたくないです」
「なんとかたのみますって!」
「シュウ、どうするの?」
「今すぐにでもお帰り願います」
「助けてくださいよ!」
「シュウ、どうするの?」
「どうもしません」
「いいお返事くれるまで帰りませんから!」
「シュウ」
「このご時世諦めが肝心ですよ」
「報酬は2000万ゴールド払う!」
・・・。
「テラリプトンはどこにいる!よしミル出発だ!」
「・・・シュウあほ」
✝ ✝ ✝ ✝
「今奴は北口から少し離れた場所にいます。シュウさんにはそこで戦って欲しいのですが、問題は?」
「ない。それよりもお前はどうするんだ。ろくな装備も身に着けてないじゃないかよ」
見るとそいつはタキシードという戦う気ゼロの服装だった。
「私は案内だけを。私ごとき戦っても足手まといかと」
「まぁ・・・いいや」
なんかむかつくけど確かに邪魔くさそうだ。
「そしてヤツの弱点なんですが、胴体中央に動力源がありますので、そこに一太刀入れていただければ、と」
「・・・分かった。んじゃ、準備するか」
十分後、部屋着から俺は全身白、ミルは黒の戦闘服に着替え、家を後にした。
「さっきの話、本当なんだろうな」
ヤツのいる郊外へ向け走りながらそう問う。
「勿論ですとも。倒した暁には必ず!」
「・・・後悔するなよ」
「人間万事塞翁が馬です!」
「あっそうかよ」
町の中を駆ける三人。
昨日の騒ぎの為か、視線が多い。
「・・・ッチ」
「あまりネガティブにお考えなさらないでください」
「ってもなぁ、昨日の今日だとそうなるのも当然だろ」
はぁ、妙に目立つことしちまったからなぁ。
「一部ですがあなたの実力を認めてる方も」
「で、どこだって?」
「え、あぁ、はい、そこを出て右です」
強引ではあったが話をあえてそらした。
今はそういった浮いた話は聞きたくない。
「ミル、バフの準備を頼む」
「ん、分かった」
「あいつがテラリプトンか」
メイフィスト・北口、整備された道路から20分ほど離れた森に近い岩肌の地に姿を現した。
「うっわぁ、勝てる気しねぇ~」
前述したように体長は家屋を優に超え、この意味不明な物体を無理矢理言葉で表すとすれば『巨神兵』だろう。光を照り返しこちらを挑発するかのように剥き出しになっている心臓部。禍々しく赤黒いそれは宙に浮き、上半身と下半身の間で固定されているように見事に静止している。
薄っすら白い半透明の外装。あれをどうにかしないと攻撃は通らないだろう。
なるほど・・・。あそこに「一太刀入れる」ね。そりゃ無敵なんて言われるわけだ。
だとしても・・・。
「ミル、バフだ」
「ん」
呪文を唱え始める。
既に闘技場のスタッフらしき人間が対応に当たっているが、防戦一方のようだ。
「今はどういう状況だ」
一番近場にいた男に問いかける。
「あぁ!シュウさんじゃないですか!今は見ての通り、やられっぱなしですよ」
そう言って改めて戦場を見やる。
地面にクレーターができ、負傷している者、亡くなってる者も見受けられる。
「・・・ひどいな」
「・・・はい」
前言撤回しよう。これは対応に当たってるのではなく。
「テラリプトンには傷一つない、のか」
見事なまでの『蹂躙』だった。