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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第十一章 真相編
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第224話 魔法と科学

 二重構造はなんだか知らないけれど、風で飛ばしているのはわかったと言うと、さっきより驚いた顔で「風だと…?」と言っている。あれ?なんか違うの?


「驚くほど全く理解できていないじゃないか。飛ばしているのは圧力勾配だ」


 すごく呆れられたが少し自慢げに火の玉の魔法の原理を教えてくれた。

 この辺りは腐葉土の堆積が多く、嫌気性バクテリアによるメタン発生があるからそれらを酸素と共に集め結ぶ素粒子で球状に整える。その周りの空気を膜状にして本体を覆う。球体内の酸素とメタンを臨界点に達するまで高速振動させて自然発火。

 火の玉を生成したら背後の空気分子を振動させて火の玉の前方との圧力差を発生させると火の玉は射出される。膜で覆わないと狙ったところへ飛ばせないらしい。


「ほほーん。最初に空気がユラユラってするのが見えたのは玉を丸めてたからか」


「そういうことになるな。で、お前はどんな操作をしたんだ?」


「火の玉の周りにある酸素を剥がした。酸素がなきゃ燃えないと思ったから」


「ぷっ、あははは。私はてっきり火球の外の膜を操作して進行方向を狂わせにきたのかと思っていたぞ。膜がなければ火球も燃焼し続けられなくなるしな」


 対処の正解は「膜を破る」だったみたいだけど、酸素を剥がしたことで偶然そういう効果になったみたいだ。つかバッティンセンターの一番速い球と同じぐらいのスピードだったし140~150km/hぐらい出てるんだから細かい操作なんかできるかよ。


「まあ偶然でも正解だったならいいじゃん。そんで圧力差っていうのは?」


「簡単に言えば温度差だな。急激に加熱させたり冷却したりして周囲の空気との密度の差を作るわけだ。そうやって空気の押し合う力を作って衝撃波に変えているんだ」


 いや、ちょっとわかんないけど、まあ、温度差で気流が生まれるようなもんか。

 あれだ、窓を開けたときに外の暑い空気や寒い空気と部屋の中の温度差が大きいと換気の捗るやつと同じ理屈だなきっと。


「じゃあ、氷の槍も空気弾も、その圧力差で飛ばしてきたってことか?」


「ああそうだ。他にも電子スピンの方向を揃えて磁場を生成する方法や、電荷の集中による反発力で飛ばす方法も試したが、圧力勾配で飛ばすのが一番簡単だったな」


「なるほどな、それでおまえは水の鞭と火の玉と氷の槍と空気弾、それから雷撃を駆使して魔法バトルを挑んできたわけだ。どっちが操作にすぐれているかって」


「な、なにを言い出すんだ。ま、また魔法とか言い出して。な、何度も言うが、あれは科学だ。ファイアーボールなどではない。た、ただの火球だ」


「おれ一言もファイアーボールなんて言ってない。おまえ全部そういう名前付けてんだろ?アイスジャベリンとか。なんだ、水の鞭はウォーターウィップか?あとは…エアスマッシュと、雷だから、サンダーブレークか?あ、これ著作権絡むのか?」


「そ、そうだ、滅多なことを言うな。あれは、イ、イナズマブレークだ…」


「ぷっ、全部魔法の名前があるんだな。もしかして一人でずっと練習してたのか?山に籠ってイメージ通りの魔法が出せるように。あの杖も、水晶壊しちゃったけど、共鳴増幅装置として使ってたんだろ?」


「に、日本人が悪いんだ!私にあんなものを見せるから…私は本来「魔法」というものは特別で神聖で、ある種の到達地点だと考えていたのだ。知識に溢れ思慮深い者だけが世界の理に触れる至高の領域、それが魔法使いだと信じていた。それをテレビゲームでいい具合に抽象化しつつ科学で再現できそうなものを見せられて試したくなって…」


 こいつの言っている魔法使いに心当たりがある。そういう魔法使いを知っている。


「おまえの言う魔法使いって、もしかしてガンダルフなんじゃないのか?」


「お、おまえがなぜそれを…?彼は灰色から白になった時、魔法使いから賢者へと進化して世界の理に触れたように思う。その前からスメアゴルを殺さぬようフロドたちに言って聞かせていた時点ですでにその兆候はあったのだろうけどな」


「やっぱりそうか。まあでも目指す魔法使いが彼でよかったかもな。敵だろうが無暗に殺さないし、仲間を信頼しているし。おまえには友達がいないみたいだけど、そこが補完できたらおまえも白い賢者になれるんじゃないのか?」


「だ、だからお前を呼んだだんだ…、た、旅の仲間として…」


 まじか。おれが仲間になって信頼関係を築くとこいつが賢者になって帰還できる?

 それってなんだ?こいつを理解しろってことか?道のりが長そうだな…


「そうかそうか。難しい話はさておき、さっき言ってたテレビゲームって?」


「ファイナルファンタジーⅣだ。2度目に日本に行ったときに流行っていてな。おかげで滞在が長引いた。あれを科学で再現したら面白そうだと思って習得した」


 アニメじゃなくてゲームってそういうことだったのか。面白そうだってなってごっこ遊びを延々と一人でやってたんだろうな。だから魔法って呼ぶと照れるのか。


「で、魔法使いは各種攻撃魔法も会得したことだし、ここで賢者になって、最終目標である転移魔法、つまりワームホールの習得に本腰を入れたってことか?」


「ふふっ。そうだな《《転移魔法》》いい表現だ。私は父の限界を超えるため量子論でワームホールを生成してきた。あの時代に父が否定的だったのも無理はないのだけれど、認められなかったのは歳のせいだろうな。私と同じようにリガビス粒子が宿っていればもっとじっくり取り組めただろうに」


 エルリカはそう言って掌に水の玉を作って残念そうにつぶやいた。

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