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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第十一章 真相編
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第223話 食事と命名

 エルリカがカウアイ島に渡って1週間もしないうちにオアフ島のパールハーバーが日本軍の奇襲攻撃を受ける。カウアイ島に爆撃などはなかったそうだが住民たちには厳戒令が敷かれ、灯火管制や沿岸監視体制に入ったそうだ。

 この地で寄る辺のないエルリカはこの山へ避難し、そしてBlue Holeへ辿り着く。

 初めてあの景色を見たときはやはり言葉を失ったそうだ。そして自然の作る神秘的な光景だけではなく別の不思議な感覚も同時に得ていたようだ。


「あの時はそれがなんなのか知ることはなかったが、ワームホールを開こうと思ったときに、この場所以外の候補地は考えられなかった」


「ここは特別な場所だと思うけれど、それに相応しい場所だってことなのか?」


「ああ。地球上でここ以外にこれだけの条件が揃っている場所はない。私がこの脚で確かめてきた真実だ。あ、いやまて、南極には行ったことがないからあそこも或いは…」


「いやいや、おまえが南極にいたらおれ戻るの諦めてたかもしれないから、この山でよかったよ。つってもここまで登って来るのすげえ大変だったけどな」


 そう言って苦笑いをしたときに腹がグゥーと鳴った。エルリカの長い旅路を聞いているうちに辺りはすっかり暗くなっているようだった。心なしか少し肌寒くもある。

 ヨハンソンとアドラさんは無事に麓の車まで辿り着けただろうか。


 おれはリュックからヨハンソンが用意してくれた携行食、カロリーメイトみたいなやつを取り出して食おうとするとエルリカがじっと見ているのに気付く。

 「食うか?」と差し出すと嬉しそうに頷いてベッドから立ち上がり、すたすたと早足で駆け寄り、両手で食料を受け取り、またベッドに戻ってちょっと照れている。

 なんだ、そういうふうにしてれば普通にかわいいのに。と思うのと同時に、もしかしてこいつも料理が怪しい感じなんじゃないかと彼女の母親の顔を思い出していた。


 案の定エルリカは料理の類が苦手らしく、食料もどのくらい買い込んでくればいいのかわからず山の上でよく食料が尽きて水を生成して飢えを凌ぐことがあるそうだ。


「そっか、水だけは生み出せるから砂漠だろうが喉の渇きは平気なわけだ」


 そう言うと「お前は本当に物を知らないな」と鼻で笑われた。


「私が生成しているのは純水と呼ばれるもので、そのまま飲むと身体に異常をきたすものだ。人間の飲み水はミネラルや他のものが混ざっている。だからこれは山で拾ったものだが、多孔質玄武岩といってこういったものに通して少しでも飲用に適した浸透圧やPH値に近づけてから飲まないと危険だ。砂漠では口に含むところまでだな」


 そう言ってエルリカはベッドの頭のところに置いてあった石でできた漏斗のような器に掌から水を注いで、木のコップへ通過したものを少しだけ飲んだ。


「なあ、その純水っていうのは植物の水やりに使っても平気なのか?」


「ん?植物?ああ、あの女のことか。あの女は枯れないように調整してるはずだ。純水を植物に与えるとミネラルや養分がないのだから栄養失調になる」


 エルリカたちの生成する水は生物にとっては便利なシロモノじゃないってことか。


 腹は膨れなかったが、ひとここちついたところで、この後どうするのか尋ねると今夜から同じベッドで寝ればいいと言われる。「ハァ?」と素っ頓狂な声が出てしまった。


「見たところお前はまだ性欲が衰えてなさそうだから相手をしてやらんこともないが、ポルノビデオのような対応を期待されても無理だからな。私はセックスにさほど興味がない、あの女と違ってな」


「お、おまえ勝手に何を言い出してんだ。おまえとヤル気なんかねえから安心しろ」


 できれば間違いのないように別々で寝たいところだが、ベッドで寝る以外、このゴツゴツとした岩の上で寝るしかなくそれはあまりにも腰や肩が辛そうだったから提案に乗っかってベッドを半分使わせてもらうことにした。


 ベッドに入る前にもう少し話を続ける。きょう無言で次々と魔法攻撃を仕掛けてきたのは試験だったのかと尋ねた。


「まさかソルベレだとは思いもしなかった。リガビスの使い手が私の噂を聞きつけて勝負を挑んできたのだと思った。あの女の入れ知恵かなにかでな」


 あの女というのはアサガオさんのことなのだろうけど、リガビス?ソルベレ?なんの話だ?それについて訊ねると、格好付けて鼻を鳴らして説明を始めた。


「なにを言っているんだ?リガビス粒子というのは変異ミトコンドリアが生成する意思の力と結びつく選ばれし者のみが有する素粒子のことだ。おまえにはソルベレ粒子を生成するミトコンドリアが宿っているんだろう?」


 あの素粒子にはそんな名前があったんだと言うと「まあ、私が名付けたんだがな」と自慢げに言っている。誰も知るわけねえだろうが。ポンコツかおまえ。


「まあ、リガビス粒子は標準模型では説明がつかない素粒子として拡張モデルのゲージボソンに位置することになるな。記憶場、共鳴場における結合や固定化の機能といったところか。名前がないから私がラテン語でリガビスと名付けたというわけだ」


 解く素粒子であるソルベレ素粒子(仮)についても標準模型の拡張モデルでうんたらかんたらと説明があったのだが、何を言っているのかわからなかった。

 まあとにかく対になる効果があるから衝突すると消滅の際に光子になるらしい。

 対になると光子になるのはハナザワさんから聞いた気がする。それより火の玉だ。


「あの火の玉はどうやってんだ?酸素を燃やしてるらしいことはわかったけれど」


「何?理解できたのはそれだけなのか?二重構造には気が付いていなかったのか?」


 二重構造?あの火の玉って二重構造だったの?ていうか二重構造ってどこが?

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