↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結ぶと解く  作者: ながずぼん
第十一章 真相編
PR
219/254

第218話 緑色と火球

 アドラさんは呼吸ができるようになったみたいだったけれど、両手を膝について身体をくの字に曲げ、ゼエゼエと肩で息をしている。


「大丈夫?一旦洞窟まで下って休もうか?」


 彼女にそう言うと、シュゥゥッという音が聞こえて次の瞬間彼女の首がカクンと曲がった。そして白目を剥きながらゆっくりと崩れ落ちた。

 なにをされた?顔を殴った?顎の辺り…?ボクサーのフックみたいな感じ?


 霧の中から一方的に攻撃を仕掛けてくる相手に腹が立つし頭にも来ているのだけど、殺気がなく失神させるのが目的のようで、いまいちキレるまでに至らない。

 攻撃が「同行者が魔法で失神したからビビって逃げる」ことを想定している気がしてならない。逃げたくても一人であの道を戻るの無理だからその作戦は破綻してるけどな!一番弱いやつ残してどうすんだよ。


「おい!二人を入口のところまで運ぶから攻撃すんなよ!殺す気はねえんだろ!」


 そう叫んでまずは倒れているヨハンソンの両脇に腕を突っ込み上半身だけ抱えるようにしてずるずると引きずって入って来た洞窟の近くまで運ぶ。リュックを枕代わりにして寝かせた。ヨハンソンちょう重い。すぐに諦めそうになるぐらい重かった。

 その次にアドラさんも同じように引きずってヨハンソンの隣に寝かせた。

 おれの背負ってきたリュックも二人の傍に置いて少しでも魔法攻撃に対応できるように身軽になる。とはいえ咄嗟の対処ができるのか知らんけど。


 さっきまでいた位置まで戻ると霧に向かって叫ぶ。


「出てこいよ!おれは帰ったりしないぞ。話するまでここにいるからな!」


 霧に向かってそう叫ぶと、真正面から緑色の木のおばけみたいなのがユラーっと姿を現した。え?エルリカじゃないの?

 これガイドのおじさんが言ってた神様ってやつ?まじで罰当たりなの?


 20mほど前方に姿を現した緑色のおばけをよくよく見てみると、丈の長い緑色したレインコートのフードを被った人間だった。左手に背丈と同じくらいのでかい杖を持っている。顔は…残念ながら遠すぎて見えない。

 そいつが杖の先端をこちらに向けた瞬間、その先の空気がユラユラッと揺らいだ。


 シュボゥゥゥーーーーッ


 おいおいおいおいおい、まてまてまてまて。

 ハンドボールぐらいの火の玉を飛ばしてきやがった!こいつまじで魔法使いかよ!

 顔を掠めて飛んできた火の玉はおれを通過して後ろの岸壁に衝突して消えた。


「ちょっと待てって。落ち着けって。話をするだk…」


 シュボゥゥゥーーーーッ


 真正面から火の玉が飛んできて咄嗟に横に飛んで避けた。当てる気ないんじゃないのかよ。完全に殺しに来てるじゃねえか!

 さっさとどうにかしないと黒焦げになって死んじゃうんじゃないかこれ…


 三発目の火の玉はちょっとズレたところに飛んできてまた後ろの岸壁にぶつかる。

 どっちなんだよ!殺すのか殺さないのかはっきりしろよ!つか殺すのナシで!


 それにしてもあの火の玉どういう原理なんだ。それを考えつつじりじりと時計回りに回り込む感じで動くと、緑のおばけも同じように動いて距離を保ってくる。

 ダッシュして一気に距離詰めて肉弾戦に持ち込むか?だけどあの杖のリーチで拳が届く前に殴られそうだし…

 そう思っているとおれの進行方向に向けて四発目の火の玉が飛んでくる。

 あれ?これってもしかして、こっち側に行かせたくないのか?


 時計回りを止めて反時計回りに動く。緑のおばけがそれに合わせた瞬間、左方向にダッシュするとやっぱりそっちに火の玉を飛ばしてくる。先になにがあるのか知らないけれど火の玉の道筋は固定できたっぽい。これで観察し放題だ。さあ打って来い!

 

 なんとなく左側にじりじり動くふりをすると火の玉を飛ばそうとしてきた。発射の直前、杖の前の空気がユラユラッと動くのが見えた。シャボン玉のようなものを作って引火させているっぽい。それがなんなのかどうやって火を点けているのかさっぱりだけど、発射のモーションは見た。そして火の玉が左側に飛んでくる。


 何もないところで燃えているのだから燃料は酸素ぐらいしか思いつかない。そこにあるのか知らないけれど火の玉の中の酸素を剥がすイメージをすると、火の玉はシュッっと軌道を変えてそのままフラフラっと上空に飛んで消えた。

 何か違うみたいだけど、あいつの操作の邪魔はできたみたいだ。もう怖くねえぞ。


 もう一発撃ってみろと言わんばかりに左に動くと即座にシャボン玉を生成して火の玉が飛んでくる。さっきは解いた酸素の数が足りなかったんだと思い、火の玉付近の酸素を全部まとめて塊から剥がすつもりのイメージをする。

 火の玉は一瞬で形を崩しフラフラっと漂って消えた。やっぱり燃えているのは酸素なんだ。理屈がわかれば対処できそうだ。


 火の玉が通用しなくなると知ってか攻撃の手が少しの間止んだ。

 水の鞭で火の玉、次はなんだ?風の刃あたりか?


 にやにやしながら左に進もうとすると今度は氷の槍を飛ばしてきた。

 槍っていうか矢じり?尖った三角錐の氷の塊だった。

 ばかめ!水の類は慣れっこなんだよ!動いているやつも桶の水滴で練習済みだ。

 水素の共有結合を解いてやると氷の槍は霧散した。ははは。ちょろいちょろい。


「おい、おまえ。もういいだろう。魔法バトルはやめて話をしないか?」


 そう言って様子を窺っていると、「Noch nicht(まだだ)」と女の声がした。え?何語?

 どういう意味?と考えていると緑のあいつはまた杖の先にシャボン玉を作った。


 フシュゥゥゥッ


 また火の玉かよと思っているとシャボン玉本体が猛スピードで鳩尾のあたりに目掛けて飛んでくる。咄嗟に腕で庇ってシャボン玉の衝撃に耐える。い、痛てえ…

 

 火の玉じゃなくて空気の弾だった。これアドラさんを失神させたやつか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。