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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第十一章 真相編
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第210話 買物と夕食

 買い出しの運転手もヨハンソンだった。アドラさんとの間に協定が結ばれたようで、彼女から助手席に乗るように言われた。

 ヨハンソンは「動物園に行ったことを思い出しますね」と上機嫌だった。

 動物園の帰り道、出来もしない約束をしたんじゃないかと少しヒヤヒヤしたのを隠してたことを思い出して苦笑いが出る。解決できて本当によかったなと思った。

 そうして10分もしないうちにスーパーマーケットに到着する。


 今夜はテラスでバーベキューだそうで肉と野菜をカゴへ。あとは量り売りの惣菜も充実していたので魚介のマリネっぽいやつとか、ハワイアンなんとかって書いてあるやつを適当にカゴへ入れていく。

 マヨネーズがかかった謎の海苔巻きみたいなのを1パックだけ買ってみる。

 最後に明日の朝食用のパンと飲み物なんかをカゴに入れてお会計をする。

 「ここはおれが払う!」と強く言ったら2人は笑って甘えてくれた。


 車に食材を積んで別荘に戻る。再びヨハンソンの運転でおれは助手席。

 もしヨハンソンが結ぶ素粒子を使えたとしたら何がしたいか尋ねると、街に出て人々の頭を覗いて性的嗜好が合うかどうか見極めたいと言っていた。

 前に見りゃわかるみたいなこと言ってた気がするけど、そうでもなかったのか。


 別荘に着いて荷物を運び入れると、晩飯の支度は二人がしてくれるそうで、すぐに終わるからテラスで待てと言われる。庭に出て煙草を吸いながら暗い海を眺めていると支度の手伝いを終えたアドラさんがやってきた。


「もう支度はできたの?運ぶの手伝おうか?」


「いえ、もう少しかかります。それよりもミツル、もしもエルリカに会えなかったら、元の世界に戻れなかったらどうしますか?」


 確かにその可能性はある。だけどそれを考えると帰れる可能性が低くなるような気がして考えないことにしている。こっちの世界の続きがあるにしても、それは一度戻ってからの話だ。明確なイメージと意思の力。それがあれば帰れるはずだ。たぶん…


「考えてないなあ。あらゆる手を尽くしてもダメだったときに考える感じかな」


「そうですか、そうですよね。そのためにここまで来たのですよね」


 彼女の表情がはっきりとは見えなかったが、寂しそうな気配は伝わってくる。

 すると食材を運んできたヨハンソンがテラスから声を掛けてくる。


「アドラ、引き止めるのはやめろ。彼を困らせるだけだ」


「引き止めるつもりなどない!ただ、残らざるを得なくなった時に彼がどうするのか話をしていただけだ。引き止めたいのはおまえの方だろう?」


「ハナダさん、私はあなたを引き止める気はありません。帰るための手伝いを全力でさせてもらいます。お礼の甘い思い出作りはいつでもお待ちしていますけれども」


 はあ?なにが甘い思い出作りだよ。それ、最高に苦いだろ。

 アドラさんまで「ミツル、スケベするなら私にしておけ」とか言っているし。


「そうだな、思い出作りにとりあえず肉焼こうよ。腹減っちゃったよ」


 そう言ってバーベキューグリルに炭を熾してみるもちょっと火力が弱い。

 見かねたヨハンソンが来て調整してくれていい感じの火加減にしてくれた。

 彼はそのまま焼き場担当になり、甲斐甲斐しく焼けたものを取り分けてくれる。

 そしてアドラさんが買ってきた惣菜を取り分けてくれて、おれは食べるだけ。

 甘やかされすぎじゃね?と思いつつ、皿に載せられたものを胃袋へ納めていく。

 肉はさっぱりしていて中年向けだったし、買ってきた惣菜はどれもダイナミックな味がして面白かった。謎の巻きずしは…、おれの知る太巻きではなかったかな。


 バーベキューが一段落して、いつの間にか買っていたチーズをつまみに二人はワインを飲み始め、さあ次はあなたの番ですよとおれが近況報告をする番になった。


「帰国してからは事件もなかったし、飲み屋で働いていたぐらいなんだよね」


 そう言うと二人は「ただそれだけのはずがない」と言う。

 そういえばFBIから150万円が振り込まれてスミスさんの名刺の入った手紙が届いたと言うと「元DEAの男に報奨金が設定されていたんですね」とヨハンソンが教えてくれた。「それだけの働きをしたという証拠です」とアドラさんに褒められた。


 あとは、春にアサガオさんが地元に来たときに、店のママが彼女と遺伝的に近いようで、量子もつれの状態が強いようだったと言った。特にリアクションはなかった。

 二人はつまらなさそうにするわけでもなく、ただ驚きもしないし「そうですか」という感じだった。手応えがないからといって話を盛るつもりはなかったけれど、続けて大丈夫なのかな?と少し不安になる。


 なので印象が強かった、虚ろな彼女の脳内で負の感情のループを止めた話をした。

 二人はどこか嬉しそうな顔で黙っておれの説明に耳を傾けている。


「そのときに脳の仕組みをあれこれ勉強したからアドラさんの能力がどういうものなのかだいたい想像できたよ」


「さすがね。ミツルが自分から能力を行使するときは、人を救うことを目的にしているのは本当に立派だと思う。ヨハンソンなら2,3人は殺しているんじゃないかしら」


 アドラさんが笑ってそう言うとヨハンソンは鼻で笑って「真っ先におまえの中からハナダさんの記憶を消してやるよ」と負けてなかった。


 あとは店の話しかないなと思って、お店のオンナのコといい感じになってチューしたと言うと、二人が身を乗り出して英語でギャーギャー言い始めた。

 そして別のオンナのコのために新しい店の図面を描いて残してきたと言えば「私も描いてください」とヨハンソンは半裸になり、アドラさんは「私は何番目の夫人ですか?」と真顔で尋ねてくる。

 そうやってはしゃぐために店のオンナのコの話を待っていた気がする。

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