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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第八章 逃亡編
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第147話 朗報と相談

 US-78でバーミンガムに入り、US-31で南に進んでカレラという街を過ぎたら林の道になる。いくつか郊外の街を通過して、モントゴメリーの西側にある倉庫群へ到着する。ここの倉庫はダンビル以上シャーロット以下なグレードだった。


 プラトッフォーム型なのでシャッターを開けてスロープを上って車を入れる。

 倉庫の中には事務所兼休憩室のような場所があり、でかいソファが2つあった。しかもトイレ完備で助かった。シャワーはないけれど、昨日の昼間に入ったので大丈夫だ。


 事務所でヨハンソンに繋ぎ様子を尋ねると、まだアトランタから動いた形跡はないそうだ。囮のALPRログは間もなくコロンバスへ到着することになっているらしい。

 実のところ昨日あまり寝れてないので、おれもアドラさんも目がしょぼしょぼだ。

 ひとまず安全そうなので車から毛布を取ってきてすぐに寝る。


―――――


 15時頃までぐっすり眠り、目を覚ますとアドラさんが椅子に座って深刻そうな表情で考え込んでいた。

 もしかして居場所が割れた?いや、だとしたら叩き起こしてトンズラするはず。

 なにを悩んでいるのだろう?


「おはようございます。どうかしたんですか?」


「ああ、起きましたか。とても悩ましい状況になってしまいました」


 寝起きで頭は回っていないところへお悩み相談されてもロクな答えが返せない自信しかないので黙って彼女の次の言葉を待っていると「いくら考えても私には判断ができないので、あなたが決めてください」と言われる。いやいや素人に任せちゃダメだろうと思いつつ、なにがどうなっているのか尋ねる。


 シャーロットで接触してきたローハン王はやはりFBI捜査官だった。スミスさんというそうだ。おれたちが寝ている間にNSAを介して彼からヨハンソンに連絡が入ったそうだ。ログを改竄している担当者と話がしたいと。


 彼からもたらされた情報は、高速道路や幹線道路の監視映像とALPRのログを照合しておれたちを追っかけている車両を特定したそうだ。しかも車内がクリアに映っている監視映像を顔認証にかけたところ、助手席の男は元DEA職員で押収麻薬の横流しの罪で懲戒免職となり15年の実刑判決を受けて一昨年刑期を終えて出所してきた人物だったとのこと。

 追跡車両が特定できたことで、ほぼ逃げ切りが確定しそうな状況だ。

 

 ところがここからがアドラさんの悩みどころで、運転手はなんと、叔父さんの件に絡んでいたベラスケス・カルテルの男だという。監視映像ではよく見えないがおそらく後部座席にもう二人の人影があり、四人組でおれたちを追跡しているようだった。

 

 となると助手席の元DEA職員の男がリーダー格で拳銃の男なのだろう。


 アドラさんはおれを逃がすために逃亡を続けるか、相手の車両がほぼ追える状態になったから逆にこちらが待ち伏せて叩くか、その二択で悩んでいるようだった。

 銃撃の男も麻薬カルテルも因縁の相手だし、そんなもんぶっ飛ばす一択じゃないのか。悩む必要なんてどこにもないじゃないか。もしかして相手めちゃ強なの?


「ヨハンソンに繋げることはできますか?」


「はい。すぐに繋ぎます」


 インカムを貰い耳に突っ込んでるうちにアドラさんが繋いでくれる。


「おはようございます。しっかり眠れたみたいですね」


「うん、よく寝た。で、ヨハンソン、FBIのおじさんはどうして情報をくれたの?」


「CIAの案件という割に監視映像を強く求めて来ないから、実情を知りたかったそうです。本当に誘拐なのか、国の安全に関わることなのか。それで彼は休暇をとって仲間に情報を擦り合わせてもらいながらあなたを追っていたそうです。そしたらかわいい坊やが綺麗なお姉さんと逃げているから応援したくなったそうですよ」


「40超えのおっさん捕まえて坊やって。ダイナーに行くのはどうして判ったの?」


「あれは全くの偶然だったみたいです。アトランタ郊外の倉庫群にいることはわかっていたけれど、まさか本人に会えるとは思わなかったって」


 あれは偶然だったのか。だとしたら中華屋とかメキシコ料理に行っていたらこの展開はなかったのか。となるとこれはもうある結末へ導かれている気しかしない。


「素朴な疑問なんだけど、その、FBIやCIAにおれの顔はバレてるの?」


「はい。誘拐の被害者ということで共有されていますよ。それがなにか?」


「ダイナーでおれを見た瞬間にまっすぐ席に来たから。ちゃんと帽子も被ってたし顔がバレてなきゃ特定できないじゃん」


「窓際でそれっぽい人物が通らないか見ていたら本人が店に入って来たからすごく驚いたそうですよ。あなたが来るまで東洋人は見かけなかったそうです」


 完全にレールが敷かれている気しかしない。このためのループだとすら思える。 


「なあ、おれたちに迎撃準備をする時間を作りながら連中を待ち伏せ場所まで誘導することはできるか?」


 ヨハンソンにそう訊ねたとき、彼が口を開く前にアドラさんがガタンと勢いよく立ち上がった。

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