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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第八章 逃亡編
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第146話 褒美と臨機

 話しを聞き終えたとき、すっかりアドラさんの叔父さんのファンになっていた。

 ダイ・ハードとか沈黙の~みたいにシリーズ化して欲しいぐらい興奮していた。

 「いま叔父さんは何をしているんですか?」と尋ねると「工場で半導体を作っています」という地味すぎる近況が返って来た。元々電気回路とかが好きだったようで、それはそれで新しい暮らしを楽しんでいるそうだ。


 二人ともツナギを着てジャンバーを羽織り車から出る。事務所へ行ってヨハンソンに連絡をして状況と今後について打合せる。


「おはようございます。きょうは早いですね。なにかあったのですか?」


「いや、アドラさんの叔父さんの話を聞いてさ、ヨハンソンはどこまで知ってるの?」


「概ねは。彼女の家族にとっての英雄ですし、私も尊敬していますよ」


「そうなんだ。なあ、ヨハンソンもシギント駆使して追跡者を燃やしちゃってよ」


「ははは。それが出来れば苦労しませんよ。車両の特定でもできれば別ですが」


 ひとまずALPRのログは東から右往左往している状態で攪乱しているそうだ。

 今夜はモントゴメリーというそこそこ大きな街まで行くけれど、幹線道路で直線的に向かうと高速道路の重複区間があるので、西に大きく迂回して南下するそうだ。

 追跡車は極力モントゴメリーの東のコロンバスへ誘導するとのこと。ただしモントゴメリーとは高速道路1本なので明日の昼からは慎重になる必要があるみたいだ。


 ヨハンソンとの通話を終えたら、お待ちかねのトラックストップへ向かう。

 プレハブを出るとコンテナを引っ張るトラックがガンガン走っていた。歩道はないのですっかり葉が落ちた街路樹が植えてある土の上を歩く。三叉路の向こう側にその施設はあるが物々しいフェンスで囲まれている。おまけにフェンスには「7000Vの電流が流してあるから」という看板がついている。その割にゲートはないんだが。


 トラックの出入りに気を付けながら施設に入ると受付のおじさんに、なんだお前ら?という顔をされる。アドラさんが笑いながらなにか話をして料金を支払った。

 彼の態度はなんだったのか尋ねると、トラックストップは車で利用することを想定した施設なので歩きで来る客は皆無なんだそうだ。すぐ近くでバッテリーが上がってしまいガソリンスタンドでチャージ中なのだと説明するとおじさんは納得してくれたみたいだ。確かに歩道ないもんな。この辺一体が歩行者はいないものとしているっぽい。


 タオルの入った袋をアドラさんから渡され「45分間使えます」と言われシャワーへ向かう。中にトイレと洗面台もあると聞いていたのでホテルにあるようなユニットバスかと思いきや、浴槽がないだけでけっこう広いタイル張りのバスルームだった。45分もシャワーは浴びないけれど、次はいつになるかわからないので備え付けのシャンプーで頭をごしごし洗った。そして髪の毛がやばいくらいバリバリになった。


 シャワーを出て食堂の方へ行ってアドラさんが来るのを待った。いかにも、という風体のトラック野郎たちがのんびりご飯を食べている。話し掛けられないように目を合わせないでいるとアドラさんがやってきた。席についてハンバーガーのセットを食べる。

 トラック野郎たちに絡まれることなく、バーガーを胃袋に納めるとさっさと施設を出る。入る時は気にしてなかったが、この施設には監視カメラがあちこちにある。

 この映像をチェックされたら一撃で居場所を特定されてしまうなと思った。


 車に戻ったらツナギから再びOHSの制服に着替える。けれど上着はフリースではなくさっきまで着ていたジャンバーにするよう言われ、背中に貼るシールを手渡された。

 DDDという白い文字のシールをジャンバーに貼り付けた。アドラさんはボンネットのロゴを交換する。ダクトと水滴のマークのやつだった。

 その後、ナンバーをこれから向かう先のアラバマ州のものへ付け替えた。


 出発まで荷室でごろごろしながらメキシコへ入るルートの確認をしながら過ごす。

 テキサスから夜間にセスナで飛ぶのがプランAだけど、ひとまずメキシコ湾まで出て、状況により船で渡るプランBも考えているということだった。


―――――


 出発前にヨハンソンに連絡をすると、アーリントンから南西方向へ向かっている車両をもう一度洗い直して、バーミンガムでルートの確定をするということになった。

 今朝通って来た道を戻りUS-78に出て西へ向かう。郊外の住宅地がだらだら続き、川を渡る。建物がまったく見えなくなることはなく、ただびたすらだらだらと郊外の風景が続いて行く。タラポーザを過ぎると林の道になりアラバマ州との州境にそれを示す小さい看板があるぐらいで、まあとにかく林の道だった。


 ヘフリンの北に貨物列車の引き込み線みたいなのがあり、車両の陰に隠れるように車を停めて最初の休憩をする。ヨハンソンに連絡をすると怪しい車両の絞り込みは続けているがまだ見つけられないそうだ。珍しく焦っている雰囲気がある。


 通話を終えたらさっさと移動する。アドラさんも焦っているようだ。

 60kmほど先でUS-78と高速道路の重複区間があるので20kmほど迂回をしないといけないらしい。とはいえ飛ばすことはなくいつも通りの巡航速度だ。1時間半ほど走ると右折してUS-231に入り、高速の上を渡ってAL-174に入る。しばらく走った先で左折して森の道に入ると車は弾けたように加速し、さほど広くない対面通行の道をカッ飛ばして進む。US-78に入り直して西へ進み、バーミンガム手前のアイロンデールという街で給油兼2度目の休憩になる。


 ガソリンスタンド併設のコンビニが閉まっていたので、裏手のショッピングモールの駐車場に停めてヨハンソンに連絡を入れる。


「おそらくこれじゃないかという車両は特定できた。奴らはいまアトランタにいる。ジョージアナンバーのままコロンバスへ向かっているようALPRに挿し込んでいるよ」


「じゃあ、バーミンガムからモントゴメリーへ向かえばいいのね?」


「ああ、奴らにはそのまま南下してタラハシーに向かってもらう」


 おれたちがテキサスへ向かう間、フロリダ半島を南下させるらしい。

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