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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第七章 米国編
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第133話 修正と作戦

 「ドウカシマシタカ?」とおれに向かってドレスのアドラさんが言っている。


 びっくりしてガタンと音を立てて立ち上がり、周りを見回すと高級レストランでみんなと食事をしている。これって夢か?それともタイムリープ?どういうことだ?


「ねえ、なにがあったの?」真剣な顔のアサガオさんに袖を引っ張られる。

「これって、どういう?」わけがわからないまま立ち竦み、涙がこぼれてくる。


「みなさんごめんなさい。なにかが起きたみたい。ちょっと狭いけど今からホテルのわたしたちの部屋に移動してちょうだい。彼から話を聞かなくちゃ」


 アサガオさんに支えられておぼつかない足取りで店を出た。心配そうに寄り添ってくれるヨハンソンとアドラさんの頬に触れると温かくて、涙が止まらなくなった。

 サヨさんは近くにいるのだろうか、いるなら合図してほしいと念じてみたけれど反応はなかった。おれからコンタクトが取れないのが胸をざわつかせたままにする。


 アサガオさんたちの部屋に行き、ソファに座らされ教授に水をもらう。

 一口飲んでから、明日起きた出来事について思い出せる限り詳しく話をした。


「なんてこと!わたしが乗り込んでめちゃくちゃにしてやろうかしら!許せないわ!」


「まあまあ、落ち着いて。相手がどの組織なのかもわからないのですから」


 ブチ切れるアサガオさんを教授が宥める。まじで国が滅ぶから落ち着いて欲しい。


「ハナダさんはHIVウイルスを解いた際に情報構造そのものを解いたんですよね?だとしたら時間という情報構造を解いたということじゃないのかな」


 ハナザワ室長がタイムリープについて解説してくれる。


「おそらく彼らの死を認めなかった瞬間に彼らが死んでいない世界線へ観測者としてジャンプしたのではないですか?量子消しゴムが過去の選択肢を再展開する要領で」


 ウチヤマ先生がさらに解説してくれるけれど、量子消しゴムってなんだ?


「私たちが今ここにいるということはハナダさんが観測者として違う確率分布をしたということでしょうね。その選択肢があのレストランの時間に収束したと」


 ハナザワ室長がさらに付け加えるが、もう言っている意味がわからない。

 ただ、あのレストランの時間に幸せを感じていて、そこに戻りたいと思ったと言う事であれば納得がいく。こっちに来て一番幸せな時間だったから。

 そう思いヨハンソンとアドラさんを見る。身体を張っておれを守ってくれたことは絶体に忘れない。これから先この二人の言葉を疑うことはない。絶対にだ。


「それでこれからどうするつもりなの?あなた達はどう考えているの?一人二人ならわたしだけでも相手できるけど、大勢になるならこちらも人数揃えなきゃだし」


 アサガオさんがヨハンソンたちに考えを尋ねる。自分の国を相手に戦うのかと。

 すぐには答えずヨハンソンとアドラさんが英語で相談している。お互いの考えを言い合って作戦を擦り合わせているようだ。やがて双方頷き、ヨハンソンが口を開く。


「日本までどうにか逃げてもらいます。私とアドラでそれをサポートします」


「できるの?あなたたち二人だけで」


「空港や港は明日には監視下に置かれて人も配置されるでしょう。いますぐ出れば或いは飛行機に乗れるかもしれませんがリスクが高いです。なので明日の夜に出発してアドラの車でテキサスのリバティまで送ります。そこから私のツテでメキシコに入って、メキシコシティから日本まで飛んでもらいます。ひとまず内通者の存在を確認するため、ハナダさんが誘拐されたという工作をして、あとは遠隔でサポートします」


 え?メキシコに行くの?しかもテキサスのナントカからは一人なの?大丈夫?


「そう。じゃあわたしの出番はないわね…アドラさん、あなた日本語もう少し話せるようになりたくはない?」


「ハイ、話セルヨウニ、ナリタイデス。ハナダト、話セナイト、危ナイ」


「そうよね、わかった。少し彼女借りるわね、そっちで作戦詰めてちょうだい」


 アサガオさんがアドラさんに日本語を仕込んでくれるようだ。

 その間おれたちはヨハンソンの作戦を聞いて、どう動くか詰めることにする。


 まずおれは今夜誘拐されることになるので、ホテルの部屋をめちゃくちゃにして携帯など追跡可能なものは全て部屋に置いていくことになる。そして、監視カメラを欺くため、教授のコートと帽子を借りてアサガオさん、ウチヤマ夫妻と共にアーリントンの住宅まで移動する。そして明日の夜にアドラさんが迎えに来るまで待つことに。


 ウチヤマ夫妻には明日、逃亡中に必要となるものの買い出しに出てもらう。逃げ場がなくなるので高速道路は使わないでリバティまで行くとなると、早くても5日、慎重を期せば一週間以上かかるとのこと。ある程度の食料や車中泊用の毛布など、結構な荷物を用意することになる。


 ハナザワ室長には帰国後の手配をしてもらう。日本大使館で好き勝手にやってしまった行動が完全に裏目に出ているため保護も無理、帰国の手配もこちらでやるしかない。せめて入国時に妙な妨害をさせないための根回しと、安全確保をお願いした。


 アズマ教授には、明日ヨハンソンと共に誘拐の偽装工作に証人として加わってもらいつつ、首謀者がどこの組織なのかそれとなく探ってもらう。その後はアサガオさんと合流し早々にアメリカを出国してもらう。おれの安全確保が履行されなかったことで取り決めが無効化すれば、アサガオさんからの情報が入らないので強硬手段に出てくることも在り得るらしい。いくらアサガオさんといえども武装集団相手では分が悪い。


 アサガオさんたちともう一度擦り合わせをして作戦開始となる。

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