表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結ぶと解く  作者: ながずぼん
第七章 米国編
PR
112/254

第111話 変化と訪問

 朝、目が覚めたものの身体が痛すぎて起き上がれなかった。全身の筋肉痛が酷い。

 歳を取ると筋肉痛は一日遅れでやってくるというが、それは若さと関係ないと思う。始まりではなくて終わりが早いかどうかで老化具合がわかるのだと思う。

 狂った懸垂のせいで握力も死んでいるので朝食時にフォークを持つのも辛かった。

 きょうが日曜で検査は休みでよかった。というかこれを見越して昨日が地獄の体力測定だったのか。


 部屋に戻ってベッドに寝転がるとサクラさんからビデオ通話の着信が来た。

「いててて」と辛そうにしていると「なにがあったんですか」と訊ねられ、身体検査だって聞いてたのにアリメカ陸軍の体力測定のメニューをやらされたと言った。

 メディシンボールをおでこにぶつけて彼岸が見えたと言うと、サクラさんは腹を抱えて泣きながら笑っていた。そんなに笑わなくてもいいのに…


「それで、きょう連絡したのは年末に言っていた件のご報告で」


 環境が変わるかもと言ってたあれか。お見合いじゃないとすると転職かな。


「パウラさんは呼ばなくていいの?」と訊ねると「もう話をしたから」とのこと。


「わたし、3月末で外務省を退職して、こっちで新しくNPO法人の立上げに関わることにしたんです。女性の支援団体になるんですけどね」


「え、そうなんだ。立上げだけってわけじゃないんでしょ?」


「はい。代表理事になります。理事に発起人の弁護士の先生がいるんですけど、本業があってなかなかフルで動けないみたいなので」


「ほえー。一気に偉い人じゃん。パウラさんは寂しがってたんじゃない?」


「パウラは頑張れって応援してくれましたよ。わたしだって彼女と離れるのは寂しいですけど、それに縛られるわけにはいきませんからね」


 確かに、あまり鮮明ではないが彼女の表情は晴れ晴れとしているように見える。

 急な話に聞こえるが、準備段階とか悩む時間があって決断したのだろう。だからこそいまこうして未練もなく新しい生き方の話ができているのだろうな。

 ちなみに支援とはどんなことをするか尋ねると「主に性被害に遭われた方の心のケアですね」とのことだった。「もしも嫌な記憶を消したりできると助かるの?」と言うと、本来は自分で乗り越えて欲しいけれどそれが必要な人もいるかもしれないと。

 そんな人がいたら役に立てる場面があるかもしれないと思った。現段階ではできるとは言えないけれど、やり方がわかれば。アサガオさんに会ったら聞いてみよう。


「それで、わたしがこの決断をするにあたって、ハナダさんにお礼が言いたくて」


「はあ?おれなんにもしてないよ?髪型変わったのに気付けないぐらいだし」


「あはは。あれは一生許さないですけど、ハナダさんて自由だなって思ったんですよ。急に一人になって孤独もあったのだろうけど、どんどん前に進むじゃないですか。新しい世界に飛び込んでどんどん知り合い作って」


「自由なのかなあ。いまだって正月なのにアメリカにいるわけだし。まあ知り合いが増えてるのはお膳立てがあるからだよ?飛び込み営業とかおれできないし」


「でも躊躇しないじゃないですか。とにかく、わたしが手放したくないって拘っていたものが、他の可能性を捨ててまで掴んでおかなきゃいけないのかなって思って。それってすごくもったいないなって思ったんですよ」


「んー、まあそれはサクラさんの人生だから。好きに生きればいいよね」


「そういうところですよ、ハナダミツル。その身軽さが羨ましかったんです。それに気付かせてくれて感謝しています。あなたに出会えてよかったです、ほんとうに」


 やべえ。トゥンクしてしまう。さすが二代目ヒロインだけある。破壊力がすごい。


 帰国したらたぶんもう一年近くは地元にいると思うから、日本での生活が始まって時間があるようなら地元を案内するからおいでよと告げて通話は終わった。

 通話が終わった瞬間、全身の筋肉痛を知覚して、翌朝まで唸りながら寝て過ごした。


 ―――――


 月曜日はMRIと脳波検査の日。またあの中年太りの医師に絡まれたら面倒だなと思いつつ脳波検査を受ける。先週は眠れなくて睡眠時の検査ができなかったが、きょうはぐっすりだった。ここまで見越しての身体検査だったのだろうか。

 検査室から出てくると中年太りが何か言いたげだったが、アドラさんが睨みつけると奥へ引っ込んでいった。うちの用心棒にかかれば中年太りなど屁でもなかった。


 昼食にフードコートでハンバーガーを3人で食べ、ミシュラさんに身体のケアの仕方を教わった。今夜は風呂を貯めることにする。

 夜はパウラさんのスペイン語教室。サクラさんの件を話したかったが日本語はダメだと言われたので会話にならなかった。でもサクラさんの名前を出したときにパウラさんはすごく優しい笑顔になっていたので、心から応援しているのがわかった。



 火曜日は心電図と腹部エコー。ランニングマシーンは少しきつかった。

 夜はパウラさんのスペイン語教室。スパルタで教えてもらっている。

 毎日やるというのは覚えが早いかもしれない。昨日覚えた単語は忘れないし、習慣というか日常に組み込まれているのは脳みその使い方が変わる気がする。



 水曜日はお休みだったが、ウチヤマ先生が様子を見に訪ねてきてくれた。

 とりあえずホテル内にあるスターバックスへ行き近況報告をする。

 もっぱら検査内容の話をして、脳波検査の医師が面倒くさい件と、陸軍式の体力測定が地獄だった件について説明した。彼は「恐ろしいですね」と同意してくれた。


 その後、港のあたりを散歩でもしますかと誘って、ホテルを出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ