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よろず屋スイートピー  作者: ハク*
プロローグ
1/11

1.ルノア・セラの1日

新しく連載を始めます。よろしくお願いします。


※本作には暴力描写、死体描写、銃器使用、犯罪描写を扱う場面が含まれます。ハードボイルド寄りの作品です

 よろず屋のルノア・セラの朝は早い。

 

 5時には起きる。


 「おはようリオン」


 黒猫のリオンに挨拶して微笑んで頭を撫でる。餌を用意してあげる。


 その後、事務所の裏手の小さな庭で魔法の鍛錬をする。イメージする()()は、いつだってルノアより強くて一度も想像でも勝てたことはない。


 少しだけ、寂寥感に苛まれる。


 6時、シャワーを浴びて朝食を用意する。今日は豆腐のサラダだ。テレビをつけニュースを見ながら、新聞をチェックする。


 7時、受けている依頼の代筆を書いたり、郵便受けに入っていた手紙などを確認する。


 9時、受けていた荷物の配達の仕事に出る。パン屋、骨董品店、本屋などから荷物を受け取り届け先に持っていく。愛車のバイクに乗り、口笛を吹きながらさくさくと配達する。


 11時には全て終わらせて事務所に戻る。


 オープンの看板を出す。


 この後はリオンと戯れたり本を読んだりして客を待つ。


 昼前に友人のヘーゼルから電話がかかってきた。


 「おはようルノア。お客さんが困ってることがあったから紹介しといたよ。今日の昼過ぎには行くらしいわ」


 彼女は魔導具師で、自身のお客さんをよく斡旋してくれる。


 「分かったいつもありがとう」


 昼過ぎチャイムが鳴る。


 入ってきたのは高貴そうなドレスを着たご令嬢だった。後ろに侍女らしき人を連れていた。


「お邪魔しますわ。ヘーゼルさんからおすすめされて来たのだけど」


「いらっしゃいませ。どうぞおかけください」


 そう言ってソファを勧める。彼女は上品に座った。侍女はソファの後ろに黙って控える。


「失礼しますわ。わたくしメアリーと申します」


 ルノアは名刺を渡して自分も自己紹介する。


「どうも。私はここ、よろず屋スイートピーの所長のルノア・セラです」


 リオンがルノアの膝に飛び乗って、毛繕いをし始めた。


「あら、可愛い猫ちゃんですわね」


 メアリーは身を乗り出す。


 ルノアは微笑んで頷く。


「ええ、うちの看板猫です」


 メアリーを促す。


「それで、ご依頼とは?」


「……ええ、実はわたくしも猫を飼っているのですが、その子が行方不明になってしまって」


 ふう、と困ったように頬に手を当てて彼女は言う。


「それは、ご心配でしょうね」


「ええ、2日前から家に帰って来てないんです。これが彼の、サトルくんの写真ですわ。可愛いでしょう?」


 そう言って、キラキラした目で写真を一枚渡してくる。


 そこには1匹の長毛の白猫が写っていた。


「確かに可愛いですね。他には彼が身につけていた物などございますか?」


「あ、そうですわね」


 そういって、カバンから猫じゃらしを取り出した。


 リオンがピクっと反応するので、撫でて落ち着かせる。尻尾がぱたぱたと振られる。


「これがサトルくんのお気に入りのおもちゃですわ」


「ふむ。これ、お借りすることは可能ですか?」


「ええ、もちろんですわ。…あの子を見つけれますか?」


 心配そうに聞くので、ルノアは自信満々に請け負った。


「任せてください。うちはペット探しで失敗したことはありません」


「まぁ、噂通りなのね。ヘーゼルさんもとても太鼓判を捺していたのよ」


 メアリーは安心したように顔を綻ばせた。


 ルノアはふっ…と笑う。


「友人からの評価はこそばゆいですね」


「じゃあお任せしますわ。報酬の話はわたくしの侍女としてもらっても構わないかしら」


 そう言って後ろに控えていた彼女を促す。


 報酬の話と、見つけた後の連絡先を交換した。


 2人を見送った後、


「さてと、では早速探しますか」


 ルノアはリオンを抱き上げた。


「にゃあ?」


「今回も任せましたよ。所長代理さん」


 任せろ、と言うかのように手をペロペロと舐めるリオン。


 猫じゃらしを彼女の鼻先に寄せると、くんくんと匂いを嗅ぐ。


 それからリオンは、ルノアの手からするりと抜け出して。開け放ってる窓から外に出て行った。


 ルノアは事務所に鍵をかけ、不在の看板を出してリオンの後を追う。


 通りに出ると、リオンは振り返ってルノアを待っていた。


 ルノアが付いてくるのを確認すると、トコトコと歩いていく。


 ここは中央大湖に面した、様々な文化圏の人々が行き交う商業国家ヴェルクロアである。


 よろず屋スイートピーの事務所は、表通りから一本裏手に入った通りにある。


 リオンは行き交う人々を器用に避けて、裏通りを迷いなく進んでいく。


 商業区を抜けて歓楽街へと入っていく。


 飲食店からいい匂いが漂ってくる。リオンはそちらに少し気を取られたようだが、ひと声鳴いてルノアに合図をしてから角を曲がる。


 さらに裏手。少し荒っぽい人々が住まう区域だ。ルノアは首を傾げる。


 メアリーは高級住宅街に住んでるはずだ。なぜサトルくんはこんなとこまで来たのだろう。


 路地裏から声が聞こえてくる。


「……ですが、」


「……いいだろ?あの子には……」


 リオンは迷いなく声の方へ向かう。


 そこにはガラの悪い男女が3人たむろっていた。


「んん?誰だてめー」


 ルノアは瞬時にその中で女が1番強いと判断する。その女はルノアに気づいてガンを飛ばしてくる。


 女たちの足元には、サトルくんがちょこんと座っていた。


 リオンはサトルくんに歩み寄って鳴く。サトルくんも鳴き返すとリオンに頭を擦り付ける。リオンは堂々としている。


「な、なんだこの猫」


 男の1人が戸惑ったように足元を見る。


 ルノアは3人に声をかけた。


「すまないね、その白猫は飼い主が探しているんだ。君たちが世話をしてくれてたのかな?礼を言う」


 そう言って近づいてサトルくんを抱き上げようとすると、


 男の1人がルノアの肩を掴んだ。


「おいおいお姉さんよ、誰の許可があってこの猫を連れていこうとしてるんだ――?」


「手を、離してくれるかな?」


「ああん?」


「もう一度言う。手を離してくれ」


 肩を掴んでいた男がキレた。


「誰に命令してんだ、てめー!」


 右ストレートがルノアの顔面に――


 ピン――


 ――向かう前にルノアの高速のデコピンが男の額を撃った。


 ――ドカン


 男の体は吹き飛んで塀に突っ込んだ。


 ズルズルと吹き飛んだ男は倒れ込む。気絶している。


 残された2人はギョッとする。2人にはルノアが何をしたか全く見えなかった。


「な、何しやがったてめー!」


 男の方がナイフを取り出して、ルノアに向かおうとした時。


「待て!」


 女の方が止めた。


「アネキ、しかし……」


「待てと言ってる。アタシはコイツの顔を見た覚えがある……よろず屋のルノア・セラだ……」


 ナイフの男は目が飛び出すかと思うほど驚愕する。


「あ、()()クロコダイルファミリーを潰した闇月の執行者?……俺たちを締めに来たのか?」


 ルノアはため息をつく。


「だから、さっきも言ったように依頼でそこの白猫を探していただけだ」


 そう言って、リオンと戯れているサトルくんを指差す。


 女は言った。


「……本当にそれだけなんだね?」


「ああ、渡してくれたらすぐ去るよ」


「……分かった、渡すよ。そ、その子の飼い主に謝っておいてくれ。長く引き止めるつもりはなかったんだ。ただ……いやなんでも無い」


 そう言ってナイフの男を引っ張って、後ろに下がる。


「おい……」


 女は顎で気絶した男を指す。


「へ、へい!」


 ナイフをしまった男は、倒れ込む男を担いで立ち去る。女もこちらを最後まで警戒しながらも立ち去った。


「やれやれ」


 ルノアは跪いてサトルくんを撫でる。リオンはともかく、この騒ぎでも動じないサトルくんは大物かもしれない。


 魔法でサトルくんを精査するが怪我や病気などは無いようだ。毛艶も良い。


「どうやらあの者達からは大事にされてたようだね」


 少し考える。一体彼らは何が目的だったのだろう。


 ともかく依頼達成だ。


 猫を2匹とも抱きかかえる。猫達はおとなしく抱かれた。ルノアはその様子にふっ…と笑って帰路に着く。


 これが、よろず屋ルノア・セラの1日である。

 

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