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⑳6通目の手紙

⑳6通目の手紙


*** 欲しいものを手に入れるためには、何かを犠牲にしろ ***


「私、そういうのやだな。何かを手に入れるためには、それと引き換えになる生け贄みたいなものを差し出せってことでしょう」

 幸四郎に届いた手紙に、春菜は嫌悪感を感じたようだ。

「そうとも限らない。すべてのものを手に入れようとすると、何も手に入らないってことじゃないかな。春菜の方の手紙はどうだい」


*** 本当に欲しいものは何か、目先の目的にとらわれるな ***


「うーん。私たちは、今ライターを探しているわよね。幸四郎の落としたライターを持ち帰ろうとしてるのよね。目先の目的はライターを探し、持ち帰ること。でも、それ以外に目的ってあるのかしら」

「それはあるんじゃないかな。持ち帰らなくても、ライター自体を燃やしてしまうとかして消滅させてしまえば目的は達成できるだろ。それに…」

「なによ。思わせぶりね」

「それに、本当の目的はライターを探すことではなくて、メッセージの謎を考えさせることかもしれないしな」

「そんなことして、どうするのよ」

「前にも言っただろう。メッセージの主は、俺たちを試しているんじゃないかって」

 二人は、しばし沈黙した。自分たちがやろうとしていることは何なのか。メッセージの謎解きは二人をどこへ誘っているのか。少なくとも、普段の生活では感じなかった疑問や、新鮮な興味をメッセージは与えてくれるのであった。

「それにしても、何かを犠牲にしろとは言ってくれるわね」

「ああ。欲しいものを手に入れるためには、それ相応の犠牲というか、覚悟が必要だってことなんだろう」

「ねえ、幸四郎」

「どうしたんだ、急に」

「ライターを得るために、私を生け贄にしないでね」

 春菜の目はいつになく真剣なまなざしであった。

「そんなことするわけないだろ」

 いつもなら笑って答える春菜が、今日に限ってはおとなしい。うっすら、涙さえ浮かべているようである。

「大丈夫だって。生け贄が必要なら、俺が生け贄になってやる。さあ、鬼でも悪魔でもやって来い」

「幸四郎…」

 春菜は幸四郎に寄り添った。

「さあ、行くぞ」

 こういう雰囲気は、幸四郎は苦手である。やさしく抱き寄せてやるぐらいの配慮があっても良さそうなものだが、今はそれどころではない。女心のわからぬ男子である。

「そうね、行きましょう」

 幸四郎のやさしい言葉に、春菜も立ち直ったようだ。それよりも、早くライターを探さねばならない。そして、メッセージの謎も解き明かしたい。二人にどんな結末が待っていようが、この瞬間の出来事は忘れようのない時間だった。



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