まーくんと私幕間 爺の胸中
「準備は出来ております」
爺は寝起きでまだ気怠そうにしている主に両手をつき、頭を下げた。
「あの子は何故厄介なものばかり引き寄せるのだろうねぇ」
主は上半身を引き戸に預け片足を立てて座り、整えられた庭を見ている。
「さあ、何故でございましょうな」
新たに生まれ変わって間もない主は写し身を得て、変化激しい世を学ぼうとしていた。
「もう僕の手を離れなきゃいけないのに困った子だよ」
困ったように言うが主の声は嬉しそうだ。それについて爺は何も言わない。主の気のすむままにしたらよい。主の手がなければとうに消えていた取るに足らぬ命であったから。
主が気にする彼女とやらが何故厄介を招き寄せるのか。爺はその答えを半分知っている。
主の気を浴びた彼女は悪しき心に染まりし者にとり、憧れの存在であり穢したい存在である。主が彼女に構えば構うほどに彼女は奴らの至高のものとなる。ゆえに、彼女が厄介に巻き込まれるのは自然なことであった。
「いつでもお迎えする準備は出来ております」
「そうだね、彼女があの言葉を言ったら連れてくるから」
主はふっと姿を消した。彼女のもとへ行ったのだろうか? それとも世を学びに? どちらにしろ爺には関係ないことだった。
爺は下げていた頭を上げ、配下を呼んだ。
主は口ではそう言いながらもう彼女を手放すことは出来ないだろう。
なら、爺のすることは一つだった。
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