chase ①
地球での調査活動を続けるヌアサ達。だが彼女達と対立関係にあるデミウルゴス人の介入が確認された。銀河連盟に加入していないデミウルゴス人達との衝突は避けられないのか。
母艦アムルタートの内部にある居住区。ひたすら広く、そして白い空間。その中でヌアサは光のリクライニングチェアに横たわり、緊急通信を受けていた。
「……では、デミウルゴス人の介入は間違い無いのですね? ゴーバン隊長」
「そうだ。実際には介入と言うよりも……武力を背景にした恫喝になろうな、間違い無く」
デミウルゴス人はマルクト人と対立関係にある。と言うよりも、殆どの星間種族と対立関係にある。これは彼らデミウルゴス人が単純に暴力の信奉者である事に起因していた。
他天体への移住を可能にした惑星の住人に対しては、すぐに銀河連盟からの接触が行われる。そして銀河系内における種族間の調停・調整機関である銀河連盟の存在を知らされ、加盟するかどうかの選択を求められるのだ。殆どの場合は加盟を選択する。自分達よりもずっと進んだ種族との交流は、大きなプラスになるのだから。侵略される可能性を云々しても、もうこちらの存在は知られているのだから無意味だ。ならば加盟した方が良いのは明白だ――となる。
だが、稀に加盟を拒むケースがあり、デミウルゴス人がその一例だ。彼らの住むソフィア星系第二惑星デミウルゴスは、マルクト人が住むネツァク星系と隣といっていいエリアにある。その為に他星系へ進出して活動するとなると、どうしても活動範囲が重なる事が多い。そうなると、どうしても大小様々なトラブルが発生してしまう。
本来ならここで銀河連盟の出番となるのだが、未加盟の種族に対しては銀河連盟は強制力を持たないのだ。これは連盟が独裁・独善に走る事を懸念して作られた銀河連盟憲章で、設立当初から定められていた事だ。
マルクト人は連盟憲章に従い、自分達からは決して攻撃を仕掛けたりはしない。が、デミウルゴス人は邪魔者は力で排除にかかる。それが原因で何度も星間戦争を繰り返し、そして勝利してきたのだった。こうしてデミウルゴス人が活動範囲を広げて来られたのは、文明発展の方向を戦闘に特化してきたのが大きな要因だと見られている。
そして今、デミウルゴス人がこの地球にやって来ており、マルクト人の調査を妨害し始めたとの報告が入ってきたのだった。
「では隊長、デミウルゴス人もこの惑星への移住を望んでいると?」
「移住かどうかは分からん。単に侵略かも知れん。何れにせよ、我々は邪魔な存在だろうな」
「そうですね……実力行使でくるのは目に見えています」
「実際、南米調査担当のアンガスが被害に遭っている。なんとか一命は取り留めたが、もう調査活動は不可能だ。ハルワタートに収容して、本格的な治療を開始した」
ヌアサは少し安堵した表情を浮かべた。その顔を見た隊長・ゴーバンは、彼女達が変わったと実感する。この惑星に来るまでは感情を表に出す事が無かった調査員達が、実に様々な表情を見せるようになったのだ。特に一番若いヌアサはそれが顕著だった。
「では隊長、他地域担当のマナナンやルフは?」
「彼らは無事だ。まだデミウルゴス人とは遭遇していない。兎に角、調査対象の安全を最優先してくれ。いざとなれば……対抗手段も止むを得ない」
対抗手段と言っても、調査員の持つ装備――個人用母艦や小型艇――に武装は無い。武装があるのは中枢母艦ハルワタートだけだ。つまりハルワタートが到着するまでは自力で何とかするしかないのだった。
連盟憲章にも個々の自衛権は保障されている。だが、自衛権行使後に連盟評議会で正当防衛である事を立証しなければならない為、どの種族も基本的にトラブルを避ける傾向が強い。事前に準備でもしていない限り、証拠を揃える事など不可能に近いのだから。
活動記録を詳細に残していたとしても、攻撃や反撃に至るまでの経緯が分からなければ意味が無いのだ。車の衝突事故などとは次元の違う話なのだった。
「了解しました。調査対象の安全確保を最優先します」
「うむ。では通信を終了する」
「了解。終了します」
虚空のディスプレイを消したヌアサは、目を閉じて健吾の姿を思い浮かべた。あの気のいい少年を危険に晒してはならない。自分のせいで巻き込んはならない。そう決心したのだった。
いつも通りに遅れています。ある意味で順調ですね。
とりあえず出来た所までUP。




