第5話 成長
それからはアヤネの力を確かめながら互いに成長していった。
母に話すかどうかも考えたのだが、こんな話をしても信じてもらえない。
それこそ頭がおかしくなったと思われて下手すれば病院送りの可能性すらあった。
それに普通の人として生きたいと言った、彼女の願いを叶える為には、伝えない方が良いと考えた。
表向きは2人とも聞き分けもよく、手のかからない良い子として振る舞った。
運動に関しては記憶が戻ってからはアヤネの方が優れており幼少期からの訓練を教えてもらって俺も一緒にやっていたのだが…。
「死ぬ…無理…」
と早々に音を上げた。
恐らく魔法を使える前提の訓練のようで俺にはそもそもついていけなかった。
アヤネに魔法をかけてもらってギリギリといった感じだった。
「兄様頑張って」
妹からの応援を受けて頑張らないのは兄ではないと必死についていった。
逆に勉強に関しては以前の知識が邪魔をして、上手く吸収できなくなっていた。
あちらとは常識自体が違うらしく、森に狩りにいこうとしたのを必死に止めたのも、今となっては良い思い出である。
話を聞いた限りでは中世…に足を突っ込むかどうか位、日本だとしたら室町時代の農民の子位の知識しか持ち合わせていなかった。
狩りの仕方や、動物の血抜きの仕方、それこそ人体の急所等は知っているのに学校で教わるような事は何ひとつ教えられていない。
この状態のアヤメにはまず道徳から教える必要があった。
母と一緒に買い物に行き、母に言いがかりをつけてきたおじさんを殺気を込めた目で見つめている事に気付き必死に止めた。
後、数秒遅かったらおじさんの命が危なかった。
「えっ喧嘩売って来たんだから殺っていいよね?」
って言っていた妹に恐怖を覚えた。
おじさんについては、妹を必死に抑えてた俺に手を伸ばしたおじさんを母が投げ飛ばして事無きを得てはいないのだが、まぁなんとかなった。
親子揃って血の気が多すぎる。
俺がしっかりしなければ…そう思い直した1日だった。
子供に対しては手加減をするという気持ちがあったおかげで幼稚園や小学校で手を出すという事はなかったのだが…。
運動…特に球技においては手加減を覚えさせるのが本当に大変だった。
小学校への入学の際に、同じクラスにするかどうかの希望を聞かれて授業等の違いがあるとフォローが出来ない可能性があるので、同じクラスを希望した。
おかげで授業等のフォローは問題なく出来ている。
ただ、一度授業で天候の関係で急遽ドッヂボールをやることになり、その際に殺人級のボールを投げてしまいボールと体育館の壁が犠牲になった。
あれは誤魔化すのが本当に大変だった。
球技に関しては事前に練習をして力加減を覚えさせる必要があると、認識した日だった。
勇者の力はどうやら徐々に戻ってくるような仕様だったようで、年々強くなっていく妹に戦々恐々していた。
残念ながら勉学に関しては人よりも少し上程度の能力しか持たせられなかった。
平均よりも少し上程度である。
やはりそもそもの世界の常識が邪魔をしていた。
火を起こすには?→魔法を使うという常識が根付いており、そういう弊害が所々で勉強の邪魔をしていた。
「昔の記憶ない方がよかったかもしれない」
と本人が言っていた。
脳を昔の知識が圧迫しており空っぽのほうが詰め込める気がする(本人談)である。
「18歳で亡くなったんだからそんなこと言うなよ」
となだめてずっと妹の勉強の面倒を見ていた。
小学校に上がった時に祖父が病気で亡くなった。
看護師の母が気づかないほどに静かに病気が進行していたらしく、気付いた時には手遅れだったそうだ。
ちなみに怪我を治療する魔法はあるそうだが病気を治療する魔法はないとアヤメは悔しそうに泣いていた。
その事が相当ショックだったらしく、しばらく部屋に籠り老化を遅らせる魔法を開発して母と祖母に勝手にかけるようになっていた。
おかげというか…母と祖母は学校行事で顔を出す度にいくつなのかと話題になるほどの若さを保っていた。
「魔法に関しては自信あるから」
と本人が言っていたが、普通にチート魔法の部類では無いかと思っている。
元の世界には若返りの薬もあったそうでなんとか再現出来ないかとも言っていた。
そして中学校に上がりそれなりに常識を身に着けた妹の手も離れ自分の勉強などに集中することが出来た。
運動神経は抜群の為、なんの運動部に入るか悩んでいたが団体競技は和を乱しそうという理由で陸上部に入っていた。
走ったり飛んだりだけなら調整が効くからとも言っていた。
俺はというと運動で大成するつもりも無いので、部活に入るつもりはなかったのだが…。
アヤメに呼び出され…。
「調整役やって欲しい…」
とお願いされてしまい陸上部へ…。
どうやらレベルが違いすぎて適正がわからないらしく俺が調整役をすることになった。
初日にアヤメが陸上の中学記録をすべて塗り替えるほどの走りをしてしまったせいでそれに付き合う羽目になった。
「正式な部員になるつもりはないので大会等は遠慮します」
と俺はあくまでも妹の付き添いとしての体をを崩さず学校終わりの部活のみアヤメの調整役としてだけの参加に留めた。
「それが認められないなら私は辞める」
というアヤメの言葉が効いたらしく特別に許された。
そもそも部活自体が自由な学校なのだから許可されなかったら、本当に辞めるつもりだった。
平日は陸上部の練習に参加して土日は勉強に励んだ。
大学を卒業しているので中学位までの勉強で躓く事はないのだが、前世では行けなかった国立の超有名大学に進学すべく大学の赤本で勉強している。
とは言え現状でもすでに合格出来るのではないかと思えるほどなので高校を飛ばして大学に入学しようかとも考えている。
日本でも飛び級制度が導入されて中学から大学に入学が可能となっている。
ただ、経済的な負担もあるので現在、すでに株取引でそれなりに利益を出している。
小学校高学年の頃に母に頼んで証券口座を立ち上げてもらい運用している。
元手はずっと溜めていたお小遣いやお年玉で10万から始めたのだが…その年の収入が200万を超えてしまい税金等で母に迷惑をかけてしまった。
種銭を作るために少し無茶をしてしまった。
そこからはひたすら金を増やし続け現在の資産は2000万を超えている。
しかしこの稼いだ額の何割かを国がもっていくかと思うと腹が立ってくる。
こんな子供からも絞ろうというのだからほんとに腹が立つ。
バックの大きさを考えて暗号資産にツッコミたい気持ちもあるが、あれはあれで面倒も多くそもそも現状は未成年の為手が出せない。
どうにか脱税することはできないかという悪巧みと、税金関係で親に迷惑をかけてしまったので迷惑をかけないように税関係の勉強をしたおかげか、税理士試験の過去問で正答率80%を叩き出せたのでもしかしたら試験も受かるかもしれない。
まぁそう簡単な物ではないとの事なので将来の候補として考えておく程度にしている。
そして脱税の出来なさを悔やんでいた。
どうにか国にバレないように収入が欲しい…と悪い事を考えるがそれを実行に移す度胸も案もなかった。
自分と妹の大学費用位は賄いたいのでこの調子で無理無く貯めていくしかない。
ちなみに『通販スキル』については一度使ってみたのだが…突然目の前に現れる仕様で結局離島料金に加えて届くのも商品によって異なるが1週間位かかるので、使用する機会がなく死にスキルとなっている。
(普通に注文した方が早いんだよなぁ)
まぁ映画やアニメをどこでも見れるというのは非常に助かる為、退屈な小学生の授業中等には非常に役に立った訳だが…。
もっと便利なスキルが欲しかった…と悔やまずにはいられなかった。
転生神サマside
「うーん、実質彼がチート特典みたいな感じになってるなぁ」
彼女への説明はかなりざっくりしたものしかしなかったのだが、彼が良いストッパーであり教育者になってくれていた。
優れた力を持つ彼女だが、この世界での常識等に疎くかなり戦闘民族みたいな考えを持っていたので、もし彼がいなかったら事件を起こしかねないレベルだったのは誤算だった。
彼女には能力の引き継ぎの他に転生スキルを与えているのだがそっちは使う機会はなかなか無さそうなので、実質彼が特典と言っても過言ではなさそうだ。
そして彼自身が恐ろしいほど知識チートをしているので彼に渡したスキルが死にスキルになってしまっているが見ていて退屈しない結果となっている。
この調子で成長していけばもっと面白い事になりそうなので期待している。




