83/83
旅人と妖精 ㉒ それでも、歩いていく
道。
二人は歩いている。
町はもう見えない。
「……寒いな」
妖精が言う。
旅人は何も言わない。
少しして、外套を外して渡した。
「……ありがとう」
妖精はそれを受け取る。
少しだけ近づく。
前よりも、自然に。
旅人は一度だけ、町を振り返る。
あの町に置いてきたものを、
思い出さないわけじゃない。
それでも。
歩き出した。
妖精は少しだけ振り返る。
もう見えない町。
それでも、足は止まらなかった。
「お兄さん、早く早く!」
妖精の声がする。
旅人は小さく息を吐く。
そのまま歩き出した。
「……走るな」
それでも、少しだけ足を速めた。
道は続いている。
どこへ行くのかは、まだ分からない。
でも。
隣を走る声がある。




