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第75話 合流2

 巨大キメラはエルフの里へ向かっている。


 ……いやおそらくは外の国に向けて侵攻を開始する。


 一刻も早く倒さねばならない。


「どうだ。核の探知はできるか?」

「探知できるけど……、数が多すぎる」


 大きな魔力の渦……格の場所を探していた。

 いくつもの反応があった。

 おそらくはこの巨体を維持するために、補助として作られているのだろう。


「ならば一番大きいのを探せ。それから順に潰していく」

「いや、数十個ぐらいあるんだけど。この巨体の上を駆けずり回って虱潰しに破壊して回るのは……」

「黙れ。最初にやるといったのは貴様だ。完遂して見せろ」

「……はい」


 手厳しい。

 しかし、それを言われては何も返せない。


 こうして一通り探知を終えると、とりあえず僕は近くの核を破壊しに行こうと立ち上がる。


「フフフッ!」


 そこへ真上から耳障りな哄笑が響く。


「フハハハハハハハハッハァ! 無駄無駄ぁ! 今のあなた方は私にとっては蟻のようなもの。蟻の一噛みで何が変わるでしょうかねえ?」


 この声は間違いなくジャクムのものだ。


 勝ち誇ったように嘲りを続ける。


「しかし、まだあきらめる気がないのならば仕方ない。蟻とはいえ、体の上をひたすらに這い回られるのも不愉快。プチッと潰させてもらいましょう」


 見れば、こちらに向かって羽を広げた魔物たちが何十匹と飛んでくる。

 おそらくは森林に残っていた魔物たちを操って呼び戻してきたのだろう。


 ガルドフは戦斧で近付いてきた一匹を両断する。


「我が払う。貴様は探知と破壊に集中しろ」

「……体の方は大丈夫なのか?」


 研究室でジャクムを追いかけようとした時、膝をついた彼の身体に見えた黒い斑点。

 おそらくは魔物の呪毒のものだ。


「無用な心配だ。お前はお前のやるべき事をやれ」


 大丈夫ではないはずだ。

 今も呪毒はガルドフの肉体を蝕んでいる。

 だが、これ以上の心配は彼の覚悟を無下にするも同義だ。


 彼の事を思うならば、一刻も早くこの巨大キメラをなんとかしなければ。


 僕はジャクムが何処にいるのか必死に考える。

 まず思いついたのは頭部だが、あの男の性格的に馬鹿正直そんなわかりやすい場所にいるとは思えない。


 頭が痛くなってきた。

 違う。……これは眩暈だ。


 僕は裾を捲る。

 やはり腕にガルドフと同じ黒い紋様が浮かんでいた。


 やはり僕も呪毒を受けていたか。

 こちらも体が限界だ。

 体が思うように動かない。

 ……ガルドフはこんなものにずっと耐えてきたのか。


「いかん。避けろ!」


 ガルドフの怒声が届く。

 しかし、遅かった。


 既に一匹のキメラ魔物は口を開けて僕の所まで――。


「ギャビッ!」


 寸前、飛んできた弓矢がキメラ魔物を射抜いた。


 遠くの木の枝からレンジャーの人間が射抜いていた。


 どうやら冒険者のようだが、なぜこんな場所に……?


「よし、見つけたぁ!」


 同時に、背中から羽を生やした女が、こちらに向かって飛んでくる。


「ヴェロニカ、久しぶり……ってあれ?」


 いや、ヴェロニカだけではなかった。

 彼女に背負われていた二人組の片割れ……シスカが駆け寄って抱き締める。


「ああ。ラッシュ。ようやく会えました!」

「シスカ! どうしてこんな場所に!?」


 こちらの質問には答えずに、シスカは回復魔法をかけてくれる。


「ああもう、無茶し過ぎです。こんな酷い怪我、呪いまで……」


 みるみる僕の身体を蝕んでいた呪毒は消えていく。

 さすがは聖女様だ。


「お前の周りは本当に退屈せんなあ」


 言いながら、ヴェロニカは空を見る。

 彼女の視線の先には翼を生やしたキメラ魔物たちが迫ってきている。


「まずい。新手が……あれ?」


 言い終わる前に、空中のキメラ魔物たちが氷の礫を喰らい、次々と撃ち落とされていく。


 撃ち落としているのは間違いない。

 ダンジョンの湖畔で、ガルドフと一緒にいた竜人族の女であった。


「お待たせしました、ガルドフ殿」

「レヴィアか。助かったぞ!」


 一掃した女性……レヴィアに対して、ガルドフもどこか安心したような声で返す。

 良かった。どうやら向こうも無事だったようだ。


「ラッシュ。治療は終わりました。あの……彼は?」

「シスカ、彼にも回復をかけてやってほしい」

「……わかりましたわ」


 シスカは一瞬だけ逡巡するも、すぐにガルドフの傷も癒し始める。


「先程、待機していた部隊の者らとも合流しました。いつでも動けます」


 レヴィアは淡々とガルドフに報告をしていく。


「うむ。なんにせよ面子は揃ったようだな。それじゃあ大規模レイドの始まりだ」

「なんで君が仕切るんだよ」


 とりあえず僕は意気揚々と語るヴェロニカの頭を叩いておいた。

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