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第67話 ジャクムという男

「ギャビイ!」


 というわけで僕はガルドフと共に魔物の群れの最後の一匹……リーダーらしき巨大な魔物を排除する。


「よしっ。これで邪魔者をは全て片付けたけど、あとはこの門はどうやって開けるかだね」

「どいてろ」


 ――ドゴォン!


 そう言って、ガルドフはたやすく門を打ち壊した。


「こうすれば簡単だろう」


 ……結構無茶するな、この人。


「これは……」


 僕はガルドフと共に思わず息を飲む。


 そこに広がっていたのは見たことのない空間だった。


 薄暗いが、今までのような洞窟や土埃のかかった回廊とも違う。


 かなり広い広間のようだ。薄暗くてどれぐらいかはわからないが。

 そして、白いタイルの床。石……ではないようだ。何の素材だろうか?


 しかし、一番に僕らの目を引いたのは両横に並んでいるいくつもの円柱状のガラス筒だ。


 その中には僕らが今まで戦った魔物たちが液体漬けにされて浮かんでいる。


 知識がない僕でもわかる。

 設備が整ったというレベルではない。

 ここは文明そのものが違う。異質な場所だ。


「これが旧文明っていうやつなのか……?」

「むう。何かあるとは踏んでいたが、想像以上のものが出てきたな」


 ガルドフですら目の前の異常な光景に唸っている。


 僕はガラスケースの中の魔物を見ながら、頭の中でいくつもの憶測を巡らせる。


「……なんにせよ、ここでこいつらは作られていたみたいんだね」

「おそらくな」


 人工的に作られたキメラだというのは予想していた。

 だが、ここまで大がかりに作られているとは思わない。


「今のうちに全て壊すか?」

「いや、もう少し調べてからにしよう」


 ガルドフは魔物たちを睨み付けながら言った。


 壊そうとして一斉に目覚めでもしたら、さすがに面倒だ。

 珍しく逸るガルドフを押さえながら、僕らは奥へと足を踏み出す。


 せめて研究用の資料や本などあれば良いのだが。

 もっともあったとしても、僕らに理解できるとは思えないが。

 こういうのに詳しそうなアンジュがいないのが悔やまれた。


「ところでここはダンジョンの中のどこら辺なんだろう?」

「もしやあの巨大な樹の中かもな」


 気を紛らわすために、雑談をかわす僕ら。


「ほほーう。よくぞここまで来られましたねえ」


 そこへ声がかかる。


 コツコツと足音が近づいてくる。


 現れたのは、白衣を着た、ボサボサ頭の痩せぎすの眼鏡男だ。

 眼鏡の奥のその眼はどこか濁っているような不吉さを帯びていた。


「おおう。怖い怖い。そんな目で睨まないでくださいよぉ。私は見ての通りの雑魚もやしなんですから」


 おどけたように言う男。

 当然、毛程も信用できない。

 見た目が弱そうだと舐めてかかったら、実は屈指の魔法使いだったなんてよくある話だ。


「まずは自己紹介を私の名はジャクムと申し回す。しがない雇われの錬金術師ですよ」


「貴様の名前などどうでもいい。重要なのはこれは全部お前が作ったかどうかだ」

「そうですよ。私の自慢の作品たちです」


 ガルドフの問いに、ジャクムと呼ばれた男は隠す様子もなく、むしろ誇るように男は説明する。


 この男は自分の事を錬金術師だと答えた。

 錬金術師とは大まかにいうと、土専門の魔法使いだ。

 金属や鉱物の変換を得意としている。生物の研究をしている者もいると聞くが、非常に稀らしい。


「気になりますか? 気になるでしょうねえ! よろしい、お答えしましょう! まずは遺伝子、もしくはDNA、という言葉をご存じでしょうか?」


 僕らは揃って首を傾げた。


 対して、むしろ説明したくてたまらない、といった様子でジャクムは勝手に喋り始める。

 といっても、突然知らない単語が飛び出てきてついていけそうにないのだが。


「まあ、いわゆる大まかに言いますと、生物の設計図だと思ってください。我々の身体にはそれが含まれています。ここにある機械は魔力で直接干渉したり、採取した遺伝子を組み替える事が出来るのですっ!」


 ジャクムは感極まったように両手を広げる。

 この部屋にある全てがそれだというのか……。

 こいつがあの魔物たちを作って、エルフの里を……。


 やはりというか、コイツがエルフの里の元凶か。


「まさに旧文明の叡智! まあ、これを再稼働までこぎ着けられたのは私の手腕もあってこそですが。……あなた方には礼を言わなければいけませんね。あなた方が来たおかげで、こちらはさらに大量のサンプルを手に入れ、この子たちはもっともっと強くなる!」


 さっきから何を言っているんだコイツは。


「エルフの連中は奮闘してくれましたからねえ。おかげで体の一部しか回収できませんでしたよ」


 残念そうなジャクムのその言葉に僕は思わず反応する。


「ああ。できれば女子供の素体も欲しかっ――」

「わかった。もう黙れ」


 僕は殺気を放って強引に黙らせる。

 ワイアードといい、どうも僕はこういう手合いが嫌いで仕方ないらしい。


「落ち着け勇者。……まあ気持ちはわかるがな」


 言いながら、ガルドフも斧を構える。


「叩き潰すぞ」

「ああ!」


「ははは。怖い怖い。やる気ですねえ。いいですねえ。ですが私はさっきも言ったように喧嘩は出来ません」


 言って、ジャクムはポケットからボタンのようなものを取り出して押す。


「だからこの子たちに代わりに戦ってもらいます」


 ――ビィー! ビィー! 


 すると、けたたましい音が鳴り響くと共に部屋一帯が赤く染まる。


 なんだ。

 何が起こっている⁉


 混乱していると、周りの円柱状ガラスケースの液体がなくなり開く。


「グギイイ」

「ギュイイ」

「グゥウウ」


 そして、中にいる魔物たちが一斉に目を覚まして動き出した。


 今まで倒した爬虫類タイプから、さっき交戦したような強化型。

 中には人に近い造形をしているものもいる。


 ……結局こうなるのか。


「やはり全て壊しておくべきだったのでは?」

「……かもね」


 ガルドフの言葉に僕も力なく同意する。

 もっとも、どっちにしろこうなった気もするが。


「あなた方には新作の試運転に協力してもらいましょう。……皆さん、食事の時間です。一片たりとも残してはいけませんよ?」


 ジャクムは邪悪に笑いながら数歩下がり、魔物たちに言い放った。

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