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扉を開こう






新しい現実は幸せだ。旅館のみんなが寝静まっても私たちは変わらず起きている。深夜の自動販売機コーナーで『音楽雑誌っぽいポーズを取ったほうが優勝!』というおふざけに2人で夢中になり、何てことない背景の前で気だるく肘に手をやったり真剣な目線を繰り出し合って、笑い声を押し殺してヒィヒィと息もできない。



お土産を売っている売店は真っ暗だ。今度はラウンジのソファに向かい合わせに座り、また『ファッション雑誌にありそうなポーズ!』と言いつつ、ただの際どいだけのやつをお互いにキメた。私がソファに両脚を伸ばし、かなり浴衣をめくりながら片膝を立てて人差し指を口に触れると「エッロすぎ!」って撮影者の秋葉おじさんは興奮する。



今度は彼女がソファに仰向けになったところを私が上からスマホを構えながら片手で髪を美しく散らして、ついでに胸元もゆるくしてあげて困惑しているところを連写しながら、右手に緑茶のペットボトルを持たせたらまんま企業の宣伝じゃん……って感動して、浴衣をめくって脚を露出させようとすると「やめてよエッチ!」って当然怒られた。



廊下をくすぐり合いながら静かに走り、部屋の鍵を開けてふとんの上にまた飛び込む。そして缶のピーチジュースを飲みだす秋葉に、私は突然大きめのハートを創生してバフッとぶつけた。どうやらこれには魅了の効果があるらしい。まともに食らった彼女は一瞬、華麗な花火が散るのを惜しむような表情をしてしまった後、ニヤニヤしている私を睨んできた。



2人で魔法の枕投げが始まる。卓球のように球を打ち返すのではなく、全部避けなければいけない激しい競技だ。お互いに指でハートや丸や雲や、急いで創生したぐちゃぐちゃな何かを描いて投げ飛ばして、それらをかわしたり避けきれないものを片手で受けて防ぐ。



本人に当たり損ねたものがそこら中に浮遊して和の客室がパステルカラーな空間になった。描き出されたそれらはクラッとさせる香りを放つようで、それはつまり、一度に多く数を飛ばせる方が有利となる。秋葉はひたすら私のハートを顔面に受けて魅惑の香りを吸い込んだ結果「ぐうっ……」と膝立ちでしばらく耐えながらも、最後は酔っ払いみたいにふとんに派手に倒れた。



私も、空気中に霧散しているベルガモットの香に包まれ、大切な秋葉を守りたい……守らなきゃ……という切なさの魔法に浸される。……人間にはなぜ、このような想いがあるのだろう?さらにそれらの芳香が消える瞬間には、まるで彼女が死んでしまったかのような喪失感が襲ってきて、はは……結構やられたな……と苦笑しながら涙を拭う。



秋葉、ハート創るのすごい上手くなったね……と言った途中で気づいたけど遅かった。彼女の言葉を思い出す……創生は、愛と想像力で発動する。私の腕も何気に上達しているということがますます顔の温度を上げていき。

……先程買ったサイダーでも飲んで落ち着こう。プシュっと力任せにペットボトルのフタを開けて、それを少しずつ口に傾けると清涼感の音色が夜の静寂と身体を駆け抜ける。



気がつくと秋葉は起き上がっており、ぼーっとこちらを見て「やめてそんなの……サイダー買いたくなっちゃう……青春…………」と、よく分からないことを言っている。秋葉さん?まだ魔法かかってるの?と聞くと「……そもそも最初から効いてない。だからこれは私の勝ち。」なんて大嘘をおっしゃり。目が合わないぞ。



「丹海、もう一回フタを開けるところからやって?」



リクエストがあったのでそれにお応えして、テーブルにもう一度置いてから手に取り、軽くひねってからゆっくり炭酸を流し入れゴクゴク飲む。本当に美味しい……でもじっくり見ないでほしい。はーっと満足してから秋葉に飲むっ?と渡そうとしたら「はい、オッケーでーす、ありがとうございまーす。」ってなんか撮影終わった。


 

「丹海は絶対女優になれる……でもそれは嫌。」



なんで?キスシーンとかエッチなのとかやるから?と聞いたら「ブホッ」と噴き出した。このムッツリめ。



「私は……束縛も限定もしない。丹海が自分の人生で望むことは何でも……すれば良い…………」



そうだよね、じゃあ面白そうだしやってみようかな?って答えたら「それはダメ……」と小声で言う。なんで?大切な人を束縛しないならその人と誰かがキスシーン撮ってても構わないんだよね?ってイジワルしたら、大きなハートを投げつけられて食らった。知らない女が家に来た時のメス猫みたいなすごい表情をしてこちらを見ている。……まったく、どこが『束縛しない』なのか。

 


まあ……私はそういうのやらないけどね?だってさ、女優とか、若さって色々と限界があるじゃない?と喋っていたら秋葉は静かに私を見て何かを言わんとして。様子が何だか変だから、どうしたの?と聞いたら無言で立ち上がって「何でもない。温泉入ろ?」と誘ってきた。



そういえば露天があるんだったと思い出す。タオルを持ってバルコニーに出ると、この世界の空には星があった。辺りは時が存在しないかのように静かで、深い森からの空気がとても澄んでいる。深呼吸をした。



木のフェンスの隙間から街の夜景が見える。浴衣と下着を脱いでかごに入れ、2人で滑らかな湯に肩まで浸かり脚を伸ばす。春のような心地よい微風に当たりながら目を閉じていると、スイッチを切り替えたかのように少しずつ夜が消え、朝が現れる。優しい日の出がほんのりと私たちを照らした。



思わず、きれいだね……って見とれてつぶやいたら秋葉が足で湯の表面をバチャバチャとやるからやめなさいと私の脚で押さえる。「セクハラエッチ。」って言うけど、秋葉が小学生みたいなことやるからでしょ……と、どさくさに紛れて私が太ももを触ったらびっくりしたのか思いっきり顔にバシャっとかけてきたから徹底的に応戦した結果、秋葉の髪が完全に濡れ、本気で私を湯船に沈めようとしてきて叫んだり叫ばれる声が自然溢れる屋外に長く響き渡った。聞いてる人いたら絶対いやらしいことしてるって思われてたよこれ。


 




あらかじめ吊るしておいた服を着て、チェックアウトして旅館から出発する。どこかにいる富士山にまた来るよ、と挨拶をした。

 


小道を少し歩いて、秋葉は手を差し出すから私は指を添える。どこ行くの?と尋ねたらサービスエリア。と言った拍子にふざけて抱きしめてきて、そのまま景色が移動していく。車やバイクが通る大きな駐車場の真ん中に場が切り替わり、私がハグから勢いよく離れると秋葉はしてやったりとクスクスしてるから無視してさっさと建物に入った。


 

朝みたいだし、中にいるお客さんは少ない。私、あんまり旅行って行った記憶ないんだよね……と、お土産を眺めながらふと話すと、私もほとんどないかな……って返事が来た。秋葉やお母様は普段外出するのだって一苦労だったでしょと聞くと「うん」と短くうなづいてから「でも今は楽……」と、クッキーの箱の裏を見ながら楽しそうにしている。



「母は明るいけど意外と繊細だから……結構、昔から人目とか世間を気にしてるみたいだった。複雑な人なんだよね。」



そう言ってディスプレイされていた黒いサングラスを手に取り、スッとかける。はぁ、似合うなぁ……そんな変装をしたら逆に目立つくらいだ。それに秋葉は目には見えないけどオーラのようなものを持っていて、どんなに服やマスクで隠そうがカリスマみたいのが滲み出ている。やはりお母様と同じく人を惹きつける力があるのだろう。

  


「前はそんな風にストレスがあった……けど、今は現実が変わったから母は気楽になってる。みんなが少し眠りに入って……芸能人だったという一連のことはこの場所では薄れたとしても、それと引き換えに自分を守れた。でも、これまでの記憶や体験は……もちろん大事なものだから。きっと、母はそれを捨てずに、活かして生きていく。同じく私たちも。」



秋葉は蛍光灯のある天井を突き抜けて、遥か上を見ている……私にはその意味が何となく分かる。



今、私たちが置かれている状況は特殊だ。地球が終わったという曖昧で、けど確かな納得と共に、眠りから覚めた者としてここにいて。できること、できないこと、やりたいこと、やる必要はないこと、すべてが手探りだ…………でも、焦る必要はない。新しい現実にいるからこそ、私たちらしく創っていけると思うから。 


 

……そうだね。私は、高校生だった時までの自分の17年間のことを忘れてないから。それを大切にして、愛して、夢を混ぜて行くんだね。だから……私は怖くないよ。「愛」があるから。それが無かったら、私は今ここにいないから……



秋葉はそれを聞いて微笑んだ。「迷い子は……迷い子なりに迷いを楽しめる。」

 


なんだそれ?秋葉さんの名言集?と聞くとうん……と言うから、新作のスローガンは?って尋ねたら「丹海、ポイ捨て、節操無し。」って酷すぎるのを発表した。名誉棄損で訴えようかなと思う。




  

その時、見えていた景色がわずかに歪んだ。あ……えーと、まずい。



秋葉と顔を見合わせ、2人で目の前にある山梨のお土産を手当たり次第カゴに入れてレジで購入し、人の往来の少ない端までダッシュして手をつないで一瞬で秋葉の部屋に戻る。だんだん力が失われてきてドサッと旅行かばんと荷物が肩から床に落ちたが、気にしている場合ではない。



ふらふらになりながら秋葉とベッドへ倒れ落ちる。おでこが熱い……身体が重い。オーバーヒートか何なのか、こんな症状は2回目だ。



初めての時は突然、部屋で気絶した。ということに後から起きて気づいた。感覚的には30分ほどしか経っていないと思うが時間が存在しないから分からない。ひどい首の寝違えと、床に倒れたままついた顔のアザとナゾの打撲で、お互いに首が痛い!って苦闘しながら湿布を貼って大変な目にあったのだ。



「おそらく、これは能力のメンテナンス…………現在、私たちが身体の自己再生のような完璧な現実創造まで行き着いていないとすると、この世界に重なって存在するAIが不完全でバグの溜まる私たちを定期的に再起動させている……睡眠ではなく気を失うという形で……」



秋葉は横になりながらもう一度考察をまとめる。じゃあ……私たちがたくさん創生をすればするほどその分を回復するって感じになるわけ?と聞くと「うん、たぶんそう…………いいにおい。」って、同じく隣で横になる私の頭を目を閉じながら吸っている。くそ、気だるくてツッコミもできない。


 

そういえば、秋葉とこの部屋で再会した時以来、一度もベッドで寝てなかったな……って振り返った。そもそも眠くならないのだから使わなかったんだけど、まさか突然倒れるなんて聞いていない。精神的にショックな出来事だったので今回は顔に床の跡とかアザをつけたくなくて、2人共かなり警戒していたのだ。危うく旅行先にて行き倒れとして通報されるところだった。



1回目に気絶した時から一ヶ月は経っていないはず。今回も日本のあちこちを移動したり旅行したりハートを創ってめちゃくちゃ酷使したからなぁ……って、そんなに頻繁に起こることならベッドはやはり必要だな……と、この部屋にもう一つあるイメージをするけど生まれない。キッチンやテーブルが創生できたのだから可能なはずなのに……と懸命に念じる私を秋葉は「ぜんぜん構わない。一緒でも大丈夫。」とニコニコ見つめている。



いや……このベッド、セミダブルでしょ?やっぱり秋葉が窮屈になるから……と言っても聞いておらず、ぎゅっとされて完全に抱き枕状態だ。秋葉の身体、熱い……私と同じように再調整をしているんだな……とぼんやりしてたら「本当の丹海は……ベッドを作るのを望んでいない………」なんてことを耳元で語りだす。



「ここで創生をするには……夢の世界の『想像力』と、現実世界の『愛の力』の2つが必要。それを一言でまとめると『望み』…………つまり、深いところにいる魂の自分と、それから今現在の自分。その2人が納得した未来しか描き出せない仕組みになっている…………」



えぇ……そんなわけない、ちゃんとベッドをもう一つ欲しいって思ってるのに……って、耳を触るな。



「人間は複雑…………1枚の層で創られてはいない…………奥の、深いところの丹海が『秋葉と一緒にいたい、絶対いたいのぉ』と思っていて…………そして表面の丹海が深いところでそれを合意した。だからベッドを創らないという現実を生み出す…………私が、無意味に札束を創生できないのと同じ……本当に愛と創造性の絡んでいる、本当の望みしか創られない………この世の安全装置………」



……言ってること全然理解できないけど、説明に紛れてなんか恥ずかしいこと言われたな?発熱している頭と共に顔も熱を帯びてきた。ますます人間のこと、自分のことがよく分からないよ……と嘆いたら「そういう丹海もかわいい。」って、首もぞくっとするから触るな。



……ん?それにしても……なんかいいにおいする。変だな?前からうっすら思ってたけど、秋葉は特に香水も何もつけていないのに。同じシャンプーを使っているし……なぜ?って聞いたら「香りも……創生されている。」と、前髪を上げておでこをクンクンし始めた。ちょっと。



「ハートと同じように、新現実では目には見えないものも創造されることに気づく…………ゼラニウム、というハーブの情報によって丹海のそういったエネルギーが今、内側から溢れていることを確認できる…………いいにおい…………」



はっ?なんだそれ?と、秋葉から離れて身体を嗅ぐ。……バラみたいな何かの香りが微かだけど確かにする……えぇ…………?



「私の香り……分かった?」



手を差し出されたから、クンクンする……やっぱり、柑橘系統のにおいするよ、と言うと「丹海は……これ好き?」と問うてきたから正直に、うん……前から……好きかなって答えたら、秋葉は嬉しそうにまた私を抱きしめた。



「私も……丹海の好き……甘くていいにおい…………」



でも、あんまり嗅がないで?と言うと「これは……いわゆるフェロモン……やっぱり誘惑するための能力が丹海には備わっている………創生前から魔法発動が通常状態……エッチチート………」って変な話してるからもういいやってクンクンスンスンされるままに目を閉じた。そうじゃないと秋葉から発せられる香りをどんどん意識しちゃいそうだから……いや、意識しちゃっても別にまずいことはないと…………ん?何だか思考がぐちゃぐちゃになっている気がする……もう静かにしていよう。



……と思ったら部屋の電気を消された。暗いのは苦手だ、途端に不安定な気持ちになる。どこか明かりをつけてほしいと言っても「私がリラックスしないから……ダメ」と秋葉は聞いてくれない。何かおしゃれなルームランプを創生しようとしても生まれず……なんでだよ。おいっ、奥にいる自分出てこいっ。



「暗闇……怖いの?怖くない怖くない……ここにいるから大丈夫だよ。」

 


そんな頭をなでなでされても、慣れないものは慣れない。でも子ども扱いされたから嫌だ、無言で無視した。秋葉の呼吸が聞こえてきても特に何も思わないようにして、秋葉の身体の柔らかさ、熱が伝わっても何も知らない。再起動したら覚えてろよと記憶をセーブしていると、ある一瞬で意識がストンと落ちて…………




  

 

  










ゴト、と音がした。何となく目が覚めた私は、ゆらゆらと浮いたまま、気づけば部屋のドアを開けて辺りを見渡す。さっきの音は……なんだろう、聞き間違いかな……とぼんやりする中、明かりのない廊下に寒気がして戻ろうとすると左足に何かがつっかかる。倒れかけて壁に手をつくと、床に何者かが倒れているではないか。



誰……?黒いシャツを来てうつ伏せで…………………………あ……きは?



そう声をかけると、うぅんと頭を押さえて立ち上がり、のそのそと階段を下がって消える。私はまだ虚ろな感覚のまま、再び真っ暗な部屋へ戻るとベッドには先程と同じ彼女が寝ていて。とても不思議な夢か幻を見たのかもしれない、と目をこすりつつ、もう一度暗闇に身を置いた。















 



  

「……ここあさん……いらっしゃいますか……?」


 


誰かの声がする……。薄く目を開けると部屋は明るくなっていてまぶしい。どの程度意識をなくしていたのか?スマホの時計は既にぐちゃぐちゃと文字が壊れていてあてにはならず。頼りになる体感の方は、やはり前回と同じ30分程度という感じだ。実際にはそれほど長く倒れていないはず。寝違えもない、打撲もない……よかった。熱は引いたみたいだけど何となくまだ目を閉じていたい。


 

「ここあさん……あの、ご心配おかけしました……ずいぶん長く出ていたので……って、ドア開いてますね……あの……ここあさん?私たち帰ってきましたので…………いらっしゃらない?…………ここあさん?」 

 


秋葉に抱き巻かれて、その腕の中でまどろんでいると「こ、こんなこと…………私、やっぱり夢を見てるの……?」という興奮気味な声が近くで聞こえた。ふと目を開ければ私と変わらない年であろう女の子が口に手を押さえ瞳を輝かせている。



「と……尊すぎ………ひとつのベッド………姫と姫の秘密の契り………溢れ出る美の洪水…………神ぃ…………」 



なんか……呪文みたいのを唱えてる方がスマホで写真撮ろうとしてるんですが……新しい魔法使いさん?



あぁ最高の構図です……とつぶやき続けているその人に、あの……もしかして……あおいさん……ですか……?と起き上がりながら聞くと「へっ!?あっ、あのっ、おはようございますっ!」と、スマホを後ろ手に隠した。なんか……テンション高いな。



そうしたら秋葉が、びっくりしたようにガバっと起きた。目をごしごしして、焦点も合わずにぼーっとして「ん………かえってきたん……ですね…………したに……いくので……まっててもらえます……か………」って幼児みたいに喋ってる。かんわいい。



う、うん、あの……お気になさらずゆっくりしてくださいっ、と私にもおじぎして、あおいさんらしき人は『はぁ……姫と姫の花園……ベッドでの密約…………』って色々唱えながら頬に手を当てつつ、そそくさと部屋を出ていった。



ドアが閉まると、秋葉はボフッと枕に雪崩れてこっちを恥ずかしそうに見て。



「丹海……顔、赤くならないでよ…………」



って知らないよっ、秋葉も赤いじゃん!と言えば言うほど何でもないのに恥ずかしい。枕に顔を埋めながら「今の……あおいさん」と説明してきた。うん、分かった。



「やだ……母に会わせるの怖い…………準備できてない…………」



まだそれを言ってるのか。まるでラスボスみたいな扱いだけど、そんななの?秋葉のお母様。

 


でも……今、夢から覚めてるのは私たちだけでしょうし、一緒に集まってやっていかないと2人だけだと色々不安だよ、それに早く仲良くお話したい、って言ったらますます顔が青ざめて「そんな……話ができる人じゃない……」なんて頭を抱えて枕にスリスリして。えぇ……どんな人なの?ますます気になってくるじゃん。



とりあえず下で待ってくれてるんでしょ?早く着替えて行こうよと秋葉を引っ張って、一緒にハミガキして、私は不思議冷蔵庫に『私らしいかわいい服を出して!』と面白半分に柄もないことを念じると魔法学校のローブがピンク色で出てきて、こんなの着れるかっと怒ってたら秋葉に見られて「何がしたいの……」と爆笑された。



それでちょっと元気が出てきたのか、彼女は髪の毛をまとめてポニーテールにしたあと、私が服を創生しているのを楽しそうに見てきて。いいじゃん魔法使いの格好で、ってふざけてるから、じゃあお揃いでご挨拶する?と言ったらやめて……と笑っている。



「しかもご挨拶って……なんかエッチ。」



なに?新婚じゃないの?と聞くと素早く横を向いて「ちがう……誤解される……」なんて口を尖らせている。


 

……じゃあお母様にどう自己紹介すればいいの?『はじめまして、ここあさんの恋人の丹海ですっ』って言ってみる?ってニヤニヤすると「私は……束縛も限定もしない……」みたいな話が始まったから、それじゃあ『とても大切な親友の丹海さんですっ』って紹介してね?とお願いしたら「私は前衛タイプじゃない……初撃は丹海が行くべき……」とまた謎をつぶやいて。おい頼みますよぉ。



私だって初対面の人には緊張するんだからフォローしたりしてね!って本気で言ってるのに「丹海が緊張とかするわけない……」ってふふっと笑う。冗談だと思っているの?



「高校2年の初日から仲良く盛り上がってた……魅了スキルの極み………私にはできない……すごい。」



お褒めいただいてありがとうございますね〜と照れる。……というか、よく見てますねぇ秋葉さぁんって肩をどつくと「だから……誤解されるから……」って何をいまさら。一緒に保健室のふとんに入って魔法薬で抱き合ってお互い告白して口の端にキスをし合った仲じゃないですかぁと腰に手を回したら即、払われた。あんなに私をペットみたいに抱いて嗅いで来たくせに……やられるのは嫌なのか?



「……丹海、行こう。」



秋葉は微かに頬を桃色に染めて、私を呼んだ。ドアの手前でなぜか長いハグをされたから私も背中に手をやって。ついでに彼女の首からの香りをクンクンして『うなじが綺麗だねっ』って囁いて逃げたら耳に手を当てて「丹海っ!」って怒られた。緊張してるのかな?



ごめんごめんって手をつないで、じゃあ行こう?ってドアノブに手をかける。秋葉も手を伸ばし、なぜか2人でガチャっと開けた。共同作業なの?結婚式なの?って言ったらすぐ手を離された。



離れたって大丈夫!愛は感じるものなんだから……と指を立ててドヤったら「パクらないで、はい100万。」とお金を請求される。じゃああげるね?って最高のスマイル1億円をすると「それは夢世界でのみ。現実は厳しい……」とか言うから、首に抱きついてウインクすると黙って無表情になった。ねぇ怖いよ、笑おうよ〜?

 


そうしたら「笑わない……」って答えながら、私の手をまた取って。



ドレスも着てないのに、私はポニーテールの姫君に階段を一段ずつエスコートされながら降りて、丁重に手の甲にキスされた。すると後ろからあおいさんが興奮して走ってきたから、私たちはバラみたいな赤い顔で彼女の誤解を解くのに必死になったのだった。

 




 





  


 

 

 



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