色々な説明
武器とかの説明だったけど、
増量して 基本設定を全部書き込んだ。
「っと、言う事で!」
「どういう事だよ。」
何故かハイテンションで振り返り、ハリの前で大声を出したリゼに
渋々付いてきたナルが即座にツッコミを入れた。
「…えっと。 と言う事で。」
「……リピートするのかよ。」
「ナル。黙っててよ。」
「はい。」
「ここが、武器屋よ!」
笑顔で黙殺したナルを横目に リゼは背後にある建物を指差した。
それに釣られて、濃い灰色を短く切りそろえた亜人の少年と
白に近い銀色の髪を後ろで結った無表情な少女は その建物を見上げた。
商業地区の中央付近から東に少し言った所、茶屋のあった地区と逆方向の場所だ。
分厚いレンガ造りのこじんまりした建物で、
一階建てのようだが 建物自体の高さはかなりある。
リゼの横にある大きめの木製扉が開かれた入り口の上には、
『ブキヤ武器専門店』と金属製の大型プレートが。
よく見れば、四角い建物の角の上部分には 剣を模した看板が揺れていた。
正に、キングオブ武器屋の風格を備えた武器屋だった。
「まさに武器屋っすね!」
「たしかに。」
と、エルフのような長い耳に獣毛が生えた
獣系亜人特有の耳をピコピコ動かし少年が 元気に応える。
その隣では、表情すら変えずに 無表情に少女が応えていた。
茶屋の新人達の温度差さえあれ納得の声に気を良くしたのか、
リゼは好テンションで入り口に進んでいく。
「じゃあ、レッツ入店~。」
「お~っ。」
と、少女。無表情のままだが、ノリノリだった。
「すごいっす・・・。」
思わず、ハリの口から感嘆の言葉が漏れる。
ブキヤ武器店に一歩入ったハリの眼には
壁の陳列棚に修められた無数の剣や
固定台に挿された槍などの長柄が飛び込んできた。
それは、現実世界では見れない正に幻想的な空間だった。
「おう、リゼとナル坊じゃないか。」
「こんにちは、ガンルドさん。」
「ナル坊はやめてよ、ガンドル。これでも盟主なんだからさぁ。」
「はっ。 リゼに頭が上がるようになったら やめてやるよ。」
「そんな~。」
ハリが武器に見入っている間に、
リゼとナルは店の奥から出てきた武器屋の主人 ガンルドと挨拶を交わしていた。
「・・・ほう。お前さん所に新人がなぁ。珍しい事もある。」
「まったくの初心者さんって初めてだから、少し嬉しいです。」
「ふむ。では、あっちの譲さんも?」
ガンルドが顎で 壁に飾られた短剣などを見ている少女を示した。
「ファーネは、サボッテンダーの所から移籍。」
「なるほどな。いつものように引き受けたわけだ。」
「はい。」
「うん。」
「ふむ。あの腰の短剣はヘルトの量産品か?」
「みたいです。」
「では、二人共 戦闘職志望か?」
「うん。」
「では、二人分でいいな。ナル。」
「頼むよ。」
「おう。」
「二人とも! こっちへ来て!」
ガンルドが頷くと、リゼは新人達に呼び掛けた。
「と言う事で、武器を選んでくれ。」
「いいんっすか?」
驚くハリの目の前で、
剣や槍、杖と魔術書のセット、弓、メイス、狼牙棒、鞭。
変わった物では、鋲付きのガントレットやスリング、チャクラム、
鋼糸、爆弾?やトラバサミなどの罠なんてものまで。
本当に色々な様々な種類の武器が山のように並べられていった。
だが、それらの武器は良く見れば、種類は豊富だが偏りがある。
威力より耐久性や使い安さを重視した物が多かった。
どうやら、初心者用に店にある全ての武器類のサンプルを用意しているようだ。
「おう。払いは、そこのダメ盟主がやってくれんだ。
遠慮せずに。 自分が気に入った物を持って来い。」
「マジっすか!?」
「うん。遠慮しないで選んで。」
「うううっ、ありがたいっす。」
と、驚きながらも恐縮するハリに 気にするなと苦笑するナル。
「さっき説明したけど。
使ってきた武器によって 強さの方向が変わってくるから。
強そうな武器より、使いやすいっていうか 自分にあってるとか
憧れのある武器とか?
そんな感じの物を選ぶと良いよ。」
「俺も多少は説明はしてやろう。」
「ありがたいっす。」
注意を促すリゼに、ハリは武器に視線を向けたまま頷いた。
そして、短剣をまず手にとって抜いて見たり
かと思えば、斧槍を持ち上げようとしてふら付いて見たり、色々と物色を始めた。
その横でリゼとガンルドが手伝い、解説をしている。
それを微笑ましそうに見ながら、
ナルはもう一人の新人 ファーネに声をかける。
「ファーネ。君には短剣を用意できるけど。要るかい?」
「いいんですか?」
「もちろん。 腰のと同じスモールソードがいいかな?」
「できれば、短剣の方が…。」
「よろしい。じゃあ、このダガーなんて・・
と、こちらも短剣と剣を物色し始めた。
ここで、
キャラクターの成長について語っておこう。
DeepMistでは、武器にしろ、魔術にしろ、
鍛えた技術が キャラクターの成長に直結する。
また、固定された職業と言う物は無い。
その代わりに、『称号(Position)』というものがある。
これは そのキャラクターの技術に合わせて
神から与えられる 正に『称号』であって。
単純に言えば。
剣を使っていれば、『剣士』の称号を。
槍を使っていれば、『槍使い』の称号を。
火属性の魔術を集中して使えば、『炎術師』の称号を得られると言ったものだ。
そして、それを教会で 自身の『称号』として認めれば(選べば)、
各『称号』に合わせた神の加護(補正)が付く。
『剣士』の称号なら『剣状の武器で攻撃する際の威力が上がる』
『炎術師』の称号なら『炎系の魔術のみ 詠唱が短縮される。』
などだ。
さらに、『上位称号』と呼ばれるものもある。
これは、特定の『称号』を持った状態で、
さらに条件を満たす事で得られる称号である。
例えば、『剣士』の上級称号は『剣豪』である。
これは『剣士』の状態で さらに剣を使い続けると得られる。
当然、称号の加護も 上級称号だと より強い物になる。
ちなみに、『最上級称号』という物もあり、
『剣士』の最上級称号は『剣鬼』だと言われている。
ただ、実際には。無数の派生称号があるため、
同じ武器や魔術を使っていても 戦い方や何気ない行動によって
まったく異なる称号に行き付くので、
剣だけを使っていたから、絶対に『剣鬼』なる…
とは、一概に言え無いのだが。
「これは・・・。」
しばらく、様々な武器を片っ端から手に取っていたハリであったが、
初めに比べてだいぶ少なくなった武器の山から離れた
カウンター横の壁に立てかけられた木と金属でできた奇妙な棒を見つけた。
その形から、ハリは瞬時に それが何か理解した。
「銃っすか?」
確かに、それは長い金属製の筒やトリガーに見える鍵状の金属部品や
木製のストックなど 小銃に分類される銃に見えた。
「ああ、それか。銃だよ。」
「へえ、まだ置いてあったんだ。」
「いや。かなり前に売れたんだが、結局 戻ってきてよ。」
「初めての弟子が作ったものだからね。」
「ふん、馬鹿弟子が作った割には作りは良いからな。
どうせ売れないにしても、捨てるのが勿体無いだけだ。
なんだよ。 本当に 勿体無いってだけだぞ!?」
「「へいへい。」」
「「ツンデレ乙。」」
真っ赤になって否定するガンルドに
ナル達の生暖かい視線が送られた。
「ごほん。
しかし、銃を知ってるとは。
坊主、なかなか物知りじゃねぇか。
だがなぁ、銃はあまりお勧めできねえな。
あのな、銃は難点の多い武器でな。
確かな事は言えねえが。
おそらく銃を得物にする冒険者は殆ど居ないだろうな。
武器自体の威力は弓より上なんだが・・・。」
と、赤らむ顔を誤魔化しながらガンルド。
「難点って、どんなっすか?」
「幾つかあるんだが・・・。
あえて、一つあげるとするなら、価格だろうな。」
「・・・それは、値段が高いって事っすか?」
「まあ、そうだな。弾は、矢と同じ程度の値段なんだが。
問題は、銃本体の値段だ。」
「ハリ。例えば、君が持っているのは…
『 Kar98k 』って名前の銃だけど。
それ一本で 剣なら3本は買えるよ。」
「えっ、ええっ!?」
驚いて銃を落しそうになるハリだったが、
間一髪 再び抱きしめて持ち直した。
「さらに言えば、
品質の不安定さから来る信頼性の低さもあるな。
実は、武器全般的に 同じ型でも個々にかなりの質のバラつきがある。
良い物もあれば、悪いものもあるって事だ。
遠距離武器ってのは 命中精度重要がモノを言うからな。
実際に試してから問題があれば、修正するんだが…。
その修正を、銃の場合できる技術者が少ないからな。」
と、銃を抱えるハリに話を続けるガンルド。
「加えて、
銃身自体は頑丈にはできてるんだが、
他の武器に比べて 内部構造が複雑でな。
メンテナンスする場合 ある程度分解する必要性がある。
それが面倒だと思うやつも多いんだろう。
あと、仮に壊れた場合、直せる技術者も殆ど居ないのも問題だろうな。
と、まあ そういった諸々の理由で 銃は流行らない。
だから、実際 武器屋の方が取り扱うのを躊躇する。」
「・・・それ、致命的じゃないっすか。」
「うむ。一応、消極的に売り込んでおくと。
武器のメンテナンスは 冒険者の常識だ。
面倒だと思うやつは長生きはできねぇな。
修理は、俺の馬鹿弟子ができる。」
「…それ、弟子の人に丸投げっすよ。」
と、凹みながらも銃にまだ執着を見せるハリ。
それにリゼが語りかける。
「ハリ君。 お金の事は気にしないで良いよ。
自分が気に入った武器を買うのがベストだからね。
ただ、私からも忠告。いえ、助言を言っておくよ。
ガンルドさんは武器屋さんだから、武器屋さんの説明をしてくれたけど。
私は冒険者としての助言ね。」
「はっ、はいっす。」
「過去 銃を使った冒険者達は結構いたの。それが今はいなくなったのはね。
銃は…。判っている称号が『ガンナー(Gunner)』しかないからよ。
しかも、判ってるスキルも『スネークアイ』の一つしか無いのよ。」
「…はあ?」
「弓とかとの互換スキルも無いのよ。 本当に一つきりなのよ。」
呆然と、ハリはリゼを見つめた。
「えっと、リゼさん。 ・・・『スキル』ってなんすか?」
「あっ、知らなかったか。」
「「「おいおい。」」」
・・・。
ぐだぐだついでに、ここで『スキル』の説明をしておく。
それは単純に言って、『必殺技』や『強化技術』などである。
一般的に 成長の過程で 習得でき、
戦闘や製作行為の助けになるのが『技』や『魔術』を指す。
主に、書物を読んだり 人から教わったりして覚える事ができる。
ただ、そのままでは使えない。
剣の技なら、剣の腕(技術)を上げ、
何度もその技を練習して 徐々に成功率を上げ、
初めて その技を使えるようになるのだ。
習得に苦労する分、その効果は大きい。
技の使用を成功させると、『一定時間 詠唱速度上昇』といった特殊な効果や
『普通攻撃の10倍の威力』といった攻撃力の上乗せなどの補正があるからだ。
また、魔術も書などで覚え、同じ系統のスキルを使い続けると、
より強い、より広範囲の、より便利なスキルを使える事ができるようになる
そして、普通 初期の称号の段階でも。
武器の技ならは平均2~3個位、魔術なら5個は習得できるようになっている。
加えて、剣のスキルでも槍で使用できる物があったりする。
『互換スキル』と、冒険者の間では呼ばれるものだ。
専用の武器の補正には劣るが、複数の武器の種類で使えるのだ。
故に、プレイヤーによっては 100以上のスキルが使える者もいる。
その事から判るが。
銃の使用できるスキル一個のみと言うのは異常である。
「・・・って訳ね。」
「なるほどっす。」
と、説明を締めるリゼ。
「で、どうする?」
と、今まで黙っていたナルがハリに声をかける。
「・・・・・。」
「重ねて言うけど。お金の心配はしないで良いよ。」
と、腕を組むナル。
「・・・・ガンルドさん。
ここでは弾は用意できるっすか?」
短い沈黙の後、ハリはガンルドの方を見つめて問いた。
「もちろん。」
「ハリ君。一応、勘違いの無いように言っておくけど。
銃の弾は相場が安い割に、作るのに高い技術が必要なの。
この街で そんな技術があるのって、
マリエさん…あっ、ガンルドさんのお弟子さんね、と
ガンルドさんだけよ。 そうよね?」
「ふん。俺は、あんな二束三文にもならん鉄礫を作る気は無いがな。
まあ、馬鹿弟子が作った物が腐るほどあるからな。
仮に無くなっても、馬鹿弟子が喜んで作るから。 安心しろ。」
「そうっすか…。」
ハリは一度 手元の銃を見つめると、背後を振り返った。
そのハリの表情を見て、
ナルは頷き、リゼは やれやれと苦笑し、ファーネは立ちながら寝ていた。
再度、ガンルドに向き直った。
そして、強い眼差しをもって応えた。
「買います。」
「まいどあり。」
こうして、クトゥーの街に新たな銃使いの卵が生まれた。
と、綺麗に終われば良いが。
「では、それは返してくれ。」
「へっ?」
「それはサンプルだ。
それに別の型の銃もあるからな。」
「あっ。そうなんすか。」
「どうせだから、全種類持ってきたら?」
「それなら、倉庫の中にあるのを直接見てきたら良いじゃない?」
「はあ・・、倉庫に あまり人を入れたくないんだよ。
・・・まあ良いか。おい、こっちだ。坊主。」
「うううっ、すいませんっす。」
とりあえず、話はまだ続く。
しばらくして。
「・・・・・に、762RF弾が15ケース。ナイフ 一本。
そして、譲ちゃん用の バゼラード 2本っと。 あと、これはオマケだ。」
「おっ、魔術スコープか。悪いな。」
「倉庫で埃被ってたもんを買ってくれたんだ、当然よ。」
「ありがとうございますっす。」
銃の試射が終わり、支払いを行っている時であった。
「しかし。良かったよ。」
「うん。最初に ガンルドさんの所に連れて着て正解だったね。」
「ん・・? あ、ああ。・・って、待て。この銃の事を知ってたのか?」
「全然。」
「まあ、予想外の選択? だったけど、マトモな武器を選んでくれたからね。」
「・・・・そうか?」
突然、ナルとリゼが型を撫で下ろし それにガンルドが悩み始めた。
ハリは 意味が判らず 戸惑うばかりだ。
それに気付き、ガンルドはハリに声をかける。
「あー、あのな。坊主。この二人はな。
お前に マトモな武器を選んで欲しいから、ここに来たんだよ。」
「・・・? ありがたい事っすよね。」
が、首を傾げなら応えるハリに ガンルドが判って無いなと苦笑した。
「…いや、そう言うことじゃなくてな。」
「ヘレティックス。」
「へ?」
その声に、ふと後ろを見れば、
寝ていると思っていたファーネが片目を開けて こちらを見ていた。
「ヘレティックスって、ノイナル茶屋は他のギルドに揶揄されてる。」
「ヘレティックス・・・って なんっすか?」
「英語で『異端者』って意味。」
「異端者?」
ハリは意味が判らず聞き返した。
「主流じゃないって意味。
ノイナル茶屋に集まっている人達。 は。
マイナー職だとか。不遇だと言われている称号をわざと選んだり。
変なアイテムを作っていたり。 そういう変人が多い。」
と、ファーネがハリの疑問に応える。
「ヘレティックスって、なんか格好良くね?」
「うんうん。」
「いや。いいのかよ、それで。 変人って言われてるぞ、おい。」
「いや、変人だし? 俺なんて言わば、キングオブ変人だよ?」
「不遇職ですが、何か。笑い。」
「ダメだ、こいつらは。」
その横で 話に入らない3人はコソコソと馬鹿話をしていた。
「で。このギルドには。
変な武器を使う戦闘職も所属してる。はず。噂。
例えば。有名な所で・・・・・・ 『豆腐戦士』とか。」
「・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・・・豆腐・・・っすか?」
「豆腐。」
「あの食べ物のっすか? 大豆から作る白い塊っすか?」
「作り方は知らないけど。 そうそれ。」
「…角で頭でも殴るっすか?」
「そう。 即死効果がある。」
と、ドヤ顔(だと思うけど 無表情)でファーネ。
錆付いたように 首だけで振り返り、自分のギルドの盟主達を見るハリであったが。
「ソイ蔵さんの事かな?」
「そうじゃない?」
「・・・おい、マジなのか? あの噂。」
「「うん。」」
「・・・なんで そんなもんで戦ってるんだよ。」
「冷凍サバで殴りつける人もいるよ? 困った事に。」
「何故 サバ? …いや、大変なんだな。お前らも。」
と、当然のように リゼと話しているナルと。
哀れむような視線を送ってくるガンルドを見て。
「・・・・・・・・・・・聞かなきゃ良かったっす。」
思わず、『 orz 』したハリ。
「大丈夫。」
その肩に、ファーネが手を置いて言葉をかける。
それに顔を上げたハリに。
「茨の道と知っても。銃を選ぶ。あんたも変人。」
「ガハッ。」
「しかも、あんな使い辛そうな銃。。」
「グハッ!」
「マゾ?」
「・・・・。」
トドメを刺されたのか、ハリは痙攣しながら床に伏した。
それを楽しそうに見ていたファーネであった。
「・・・・譲ちゃんも同じギルドに入るって事は変人なんじゃねえか?」
「むしろ、彼女の方が エース オブ 変人。」
「将来有望だよね、二人とも。」
後ろから聞こえる声は全力で無視した。
「また来いよ。」
しばらくして。
なんとか回復したハリを引きずって、一行は防具屋と服屋に向かった。
ちなみに、ブキヤ武器専門店の2つ隣が防具屋で その隣が服屋だった。
『シュメリ防具店』と ショップ『ガールッシュナ』。
防具屋はキングオブ防具屋ではなかったが、品揃えはそれなりに良かった。
そこで、ハリはフード付きのショートコート状のクロスアーマーセット。
ファーネは、つや消しのブラックレザーライトアーマーセットを購入した。
服屋は、かなり大きな建物で そこでアクセサリーなどを購入した。
と、あっさり書いているが。
この防具屋と服屋で 数時間は過ごしたのだが。
理由は簡単。
リゼが
「ハリ君の武器に それだけお金出したんだから。
当然、ファーネの防具と服にもお金を出してくれるのよね?」
と、ナルに詰め寄り、
後ろで(無表情だけど)期待のこもった眼差しを向けるファーネがいたからだ。
よって、ファーネの防具はハリの防具より ずっと良い物が揃えられた。
まあ、それはファーネが前衛職らしいので良いのだが。
問題は、その後だ。ナルの苦難の時間が待っていた。
ナルは縮こまっていた。
ショップ『ガールッシュナ』の3階の通路壁際。
店内は女性で占領され、色取り取りの衣服が並び、
ところによっては、シルクやらレースなどが共演していた。
だが、ナルにそれを見る度胸は無い。
通りがかる女達にキツク一瞥されると、彼はさらに縮まる。
動けない、帰れない。
「ナル♪ これどうかな?」
「いっ、良いと思うよ。」
「む、ちゃんと見てない。 ほらぁ、こっち向いて。」
「うううう・・・。」
とりあえず、リゼが気が済むまでは。
ちなみに、
ハリとファーネは 少し離れた所でアクセサリー類を見ていた。
「う、うまく逃げれたっす。」
「ハリ、ナイス。」
その後。
何故か リゼの服まで買わされ憔悴気味のナル。
それとは対照的に ホクホク顔のリゼ。
その他 新人二人を伴って中央広場に歩いてきていた。
「あれが、トゥーフ教会よ。
称号の変更と もし戦闘とかで死んだ場合 あそこに魂は呼ばれるの。」
と、リゼは広場から高台に立つこじんまりとした教会を指差した。
「なるべくなら、死なないようにするのが一番だけど。
仮に、もし死んでしまうと魂は教会に呼ばれて、
『死』か『復活』を選ぶ事になる。 そこで『死』を選ぶとキャラは消える。
『復活』を選んだ場合、時間…この場合は上げた『経験』の幾分かを糧に
自分の死体が召喚される。
そして、初心者、中堅、熟練者の3人から一人選んで復活させてもらう事になる。
その際、今度は 費用を、お金を徴収される訳だけど。
基本的に 初心者は只か格安だけど 成功率は6割程度。
中堅は それなりに費用を取られて 成功率は8割程度。
熟練者なら すごい費用の代わりに 成功率は99%だ。
徴収される費用は その時々で変わるらしいけど、
原則的に『安い=危険』だって覚えておいて。」
と、説明口調のナル。
「はいっす。 ・・・あれ? もし復活に失敗したら、どうなるっすか?」
「復活に失敗すると、死体は『炭』って状態になる。
それの状態から復活を試みて失敗すると『灰』になって、
さらに失敗すると『消滅』する。
死体が消滅すると、強制的に そのキャラクターは消える事になる。
当然だけど、死体より炭は、炭より灰は、復活する際の確率が低くなる。
噂では、灰の状態だと 熟練者の中で最も復活する確立の高い聖女でも
成功率は 2割以下らしい。
まあ、死ななければ関係ない話だけどね。」
と、ナルは説明を終えた。
それを見計らうように、リゼは背後を振り返る。
彼らの背後には、石造りの大きな建物が そびえていた。
「で。背後のこれが、通称 AGA。 冒険者協会だよ。
ここでは、新人の登録とか、ギルドカードの更新とか、
色々な依頼とかを受け付けているんだ。
と言う訳で、登録に逝くぞぉ!」
「おおおっ!」
と、何故か ハイテンションな女子二人。
日中で混み合い始めたギルドの入り口に突撃していく。
「・・・逝こうか。」
「はいっす。」
そして、残り二人は ローテンションで入り口を潜った。
一気に時間は飛んで、その夜。
「ふーむ。本当に何にも書いてないっす。」
と、ハリは茶屋のソファーに座り、
昼間、登録した際 渡されたギルドカードを指で遊んでいた。
トランプ程の大きさのの薄いカードである。
ただ、絶対に壊れないし 無くす事も無いアイテムらしい。
試しに ギルドに帰ってきた後 買ってきたばかりのライフルで撃ってみたが、
銃弾が貫通した後 すぐに元に戻った。
リゼの話では、魔術や技を含むあらゆる攻撃が試されたらしいが
結果は同じだったらしい。
ともあれ、そんな 明らかにシステムに関連するトンデモカードであるが。
書かれている事は極端に少ない。
『
Name: ハリィ
Species: 小鬼(Goblin)
Position: 旅人(The Walker)
Guild: ノイナル茶屋
Rank: G
N0.46549 』
裏返せば、中央に大きく『AGA License Card』の文字。
それが手渡されたギルドカードに記された全てだった。
「まじっすか、このゲーム・・。」
昨日からキャラクターを綿密に作り上げ、
今日初めて『 DeepMist 』に入ったハリであったが、
実は以前から このゲームの内容は多少は知っていた。
兄が このゲームのヘビーユーザーだったからだ。
だが、その兄もゲームの内容をはぐらかし、
『凄く現実的で難しい』としか言っていなかった。
今日一日やってみて判ったのだが、本当に DeepMistは難しいゲームだ。
というか、このゲームの製作者は 本当にイカレたセンスの持ち主だという事は間違いない。
「お待たせ。ハリ君。」
「いや。そんな事無いっすよ。」
部屋に戻ってきたリゼに 手を振って応える。
「ふふっ。 じゃあ これは返すね。
ノイナル茶屋ギルド専用チャンネルを登録しておいたから。」
「ありがたいっす。」
「どういたしまして。」
と、リゼから黒い板のような物を返されるハリ。
それは、ギルドで支給された魔術具『スマートタブレット』。
ようは、スマートフォンのような多機能アイテムだ。
支給品なので 専門店で購入できる同様の物と比べると 性能は落ちるらしいが。
「じゃあ、そろそろ寝るっす。」
「んっ、ホームは ここの地下室に登録してあるよね?」
「さっきしたっす。」
「じゃあ、お疲れ様かな。」
「はい、お疲れ様っす。」
と、部屋を出てようとしたハリであったが。
その背中に リゼの声がかかる。
「そうだ、ハリ君。」
「なんすか?」
振り返るハリ。
「今日一日、この世界を歩いて見て どうだった?」
「凄いゲームっすね。
霧に包まれ謎に満ちた世界。 剣とかも本物みたいっす。」
「うんうん。」
「しかも、プレイヤーとNPCの区別が付かないようにできてるっすね。
今日あったガンルドさんやアンネさんがNPCかどうか判んなかったっす。」
「最先端のAIを使用してるらしいけどね。」
「そうなんすか。」
「でも、一番驚いたのは。」
と、腕を振ったりして 何かを呼び出す動作をして見る。
が、何も起こらない。 何も見えない。
それに感心したように、ハリは続けて『システム』と呟いた。
すると、ハリの前の宙に飾り気の無い四角いウインドが現れた。
それは、呼び出した者にしか見えないシステムウインドと呼ばれる
VRMMORPGではお馴染みの物。
だが、普通なら様々な項目やボタンが表示される物であるが
ハリの目の前に表示されたものは異なっていた。
『CONFIG(設定)』と『 LOG OUT(終了) 』のみ。
それが、表示されている全てだった。
「 機体の緊急用と システム以外、ウインドが無い事っす。 」
「だから、面白いんでしょう?
ステータス画面も、スキルや熟練値ウインド、装備ウインドすらない。
まあ、メールの送受信とイベントリ、マップの記録は、
それ(魔術具)で代用できるけど。
壊れたりする物だし、絶対的な物ではないでしょう?
ステータス画面が無いから それを予想して。
スキルや熟練値の事が判らないから、人に聞いたり 本を読んだり。
システムから提供されるマップが無いから、
新しい何かがあるかも知れないと歩き回る。
イベントも どういう結末になるか判らないから奔走するんでしょう?」
「敵が強いのかどうかも。
武器の性能も、何もかも判らない。
まさに、全ては 深い霧に隠されている。
それを 一つ一つ 私達が調べて、解明していく。
神様は、称号以外 何も語らない。何もしない。
だから、逆に束縛されない。 あらゆる事ができる。
そういうゲームなのよ、これは。」
そう、リゼは可笑しそうに微笑んだ。
出てきた武器とか。
ナイフ(フィールドナイフ):
フィールドナイフ。 全長 15cm。
なんか金属っぽい物質で出来ている。
武器としての攻撃力は 最低クラス。
価格も最低で、子供のおこづかいでも余裕で買える。
ただ、意外に 戦闘以外の道具としては使い道がある。
ちなみに、何で出来ているのかは 永遠の謎。
バゼラード(スチールバゼラード):
ファーネが買った45cm位の楔形両刃を持つ鋼製の短剣。
鍔が剣先に向かって湾曲し、柄頭が反対側に湾曲している。
そこそこの価値を持つ短剣と評価されている。
Kar98k
全長 1090mm。 装弾数 5発(マガジン式)。 762RF弾使用。
回転ボルトアクション方式ライフル小銃。
第二次世界大戦中のドイツの騎兵銃『Karabiner 1898 kurz』をモデルとして、
762RF弾に対応させ、弾丸の装填方法をマガジン式に変更した改良版である。
威力、命中精度、携帯性、メンテナンス等、
どれも安定した水準を保つ 非常に優秀な銃である。
ただし、お値段は高め。
(注:実際のKar98kにはない架空のモデルです。)
762RF弾
目標の大小に関わらず 一定の効果が得られる点から、多くの小銃に使われる弾丸。
ちなみに、『RF』とは何の略なのかは不明。
色々な説があるが、もっとも有力な説では。
趣味の釣りで釣った川魚の形から弾丸の形のヒントを得たと言う発案者の書記から、
『River Fish』なのではないとか言われている。
どうでも良い話である。
(注:実際には存在しない弾丸の規格です。)
魔術スコープ
狙撃眼鏡。構造は、実際のスコープとほぼ同じ。
普通のスコープと魔術スコープとの違いは、
レンズの保護と光が反射して敵に気付かれないように
レンズ自体に魔術を応用した処理がされている事である。
ハリが貰ったスコープは、旧式の魔術スコープ。
外見は実在する『PSO-1』というスコープを模している。
レティクル(照準線)は、T字型。
倍率は、最大4倍。手動で目盛りを操作する事で倍率を調整できる。
実在のPSO-1スコープとは違い、夜間射撃用機能は付いていない。
ミーレスクロスセット:
ハリが買ったフード付きのショートコート状のクロスアーマーセット。
ショートコートクロスアーマー、シューターグローブ、レザーブーツなど、
弓手など遠距離攻撃系の初心者のために最低限の防具をセットにした物。
かなり丈夫な生地で出来ていており、動き易い。ただし、防御力は期待出来ない。
ハリが買ったセットは、カーキーとブラックを主体とした意匠である。
ちなみに、ミーレスとは兵士の事。
かつては騎士団の兵士に支給されたセットだった事から、こう呼ばれている。
ビッドレザーセット:
ファーネが買ったつや消しのブラックレザーライトアーマーセット。
ビッドとは、素材(皮)になった『ビッドフェイクベア』という熊の魔物の事。
レザーアーマー、ライトガントレット、強化レザーシューズがセットになっている。
動きやすく、防御もそこそこある冒険者に人気の軽鎧セットである。
スマートタブレット:
システム的には提供されていない(と推測される)
メールの送受信とイベントリ、マップの記録を代用する魔術具。
色々なタイプがあるが一般的なのは、掌サイズの硬質の板。
起動すると空中にウィンドが出現し、それを操作する。
ちなみに、所有者以外は基本的に操作できない。
しかし、破壊する事は可能なので、
冒険者は万が一のために 帰還用アイテムだけは身に付けるのが常識。
通称:板。 正式名称を省略すると、エロい意味になるというw
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銃本体の話 補足。
(専門用語が出てきます。解らない単語はググって下さい)
この作品中の『銃』は、
魔術を使って 実弾を発射する魔術機構銃です。
無煙火薬などが存在しない
(素材的に作れない可能性が高い)世界なので、
銃の構造は 実在の銃と基本的に同じですが、
弾丸には火薬(発射薬)の代りに
魔力を固めた物体『結晶』が使われています。
また、冒険者用の銃はボルトアクション形式ライフル小銃が殆どを占めます。
これは、冒険者の武器として 銃に求められる性能が
命中精度が高く、威力があり、確実な動作を信頼でき、
かつ携帯性とメンテナンス性に優れている事だからです。
最後に。
何故 銃の価格が高いのか? ですが。
まず、材料の鋼などが値がはる事。
そして、他の種類の武器より作るより、
様々な分野の高い生産技術が必要な上、
非常に手間がかかるからです。
さらに、実戦に使う『武器』として需要が無くても、
金持ちや貴族(または権力者)の道楽としての狩りの道具や、
また部屋を彩る美術品(置物)として 僅かながら需要があるので
値段を下げる必要性が無いという理由もあります。
それ故、装飾が乏しい銃や古い銃などは需要がないので
分解され素材の状態に戻され、剣などに加工される傾向にあります。
ただ、そういった素材はあまり質が良くないので
素材に拘りがあるガンルドは倉庫の銃に手をつけなかった為、
相当の在庫を持っていた訳です。
馬鹿弟子の為、という理由もある・・・かも知れませんが。
あらかじめ言っておきますが。
私は『銃無敵伝説』とか『銃無双』をやるつもりはないです。
あしからず。
次回から本格的に話を進めたいな・・・(^_^;




