第176話 魔女会との初取引
モーフェイはガイの反応がそこまで大きいとは思わず、慌てて説明した。「き、昨日、俺のスライムが角の薬草を食べただろ? 夜にひどい怪我をした子猫がいて、そいつが傷口へ薬草を吐き出したら、すぐに治ったんだ」
ガイはしばらく彼を睨みつけ、ようやく手を放した。
「角に生えた薬草には確かに特殊な効果がある。だが、量には限りがある。欲しいだけ手に入ると思うな」彼は声を落とした。「昔は、あの牛の角が万病に効くという噂まであった。牛の角を狙おうとした奴もいる。だが、すでに研究した者がいてな。瓶中の幻獣は、体の一部が切り離されるとエーテルとなって消える。牛の角は残らん」
「それは噂が嘘だと証明しているんじゃないか?」
「人間は自分の信じたいものしか信じん」ガイは彼を睨んだ。「だから、角と薬草のことは外でむやみに話すな」
「安心しろ。俺はそんなおしゃべり野郎じゃない」
そのとき、治療所の職員が調薬室へ入ってきた。「治療所で使える薬草は、もう一つ残らずなくなりました。最近はどこも薬草不足で、次の分がいつ届くかもわかりません」
モーフェイは空になった机を見つめ、心の中でため息をついた。異世界転移ものの主人公って、みんな手作りで抗生物質を作れるんだよな。俺の番になったら、あれは確かオレンジにカビが生えるのと関係があった、くらいしか覚えていない。はあ、どうしてこんなに差があるんだ。
ふと、今夜の取引を思い出した。
「薬草を手に入れる方法があるかもしれない。ただ、明日まで待ってくれ」モーフェイが言った。
調薬室にいた者たちが一斉に振り向いたが、モーフェイはそれ以上説明しなかった。
ガイもそれ以上は尋ねず、空いた机へ顎をしゃくった。「試せる薬草が手に入ったら、また呼べ。お前は先に自分の用事を済ませろ」
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午後、モーフェイは点石成金工房へ戻った。中へ入るなり、荷箱に行く手を阻まれる。
トビーは作業台の奥から顔を上げた。「モーフェイさん、ビズネス商会から届いた荷物です。確認して受け取りましたが、置き場所が見つからなかったので、ひとまず入口に積んであります。受領記録も机の上に置いてありますので、もう一度確認していただけます」
モーフェイは記録を手に取り、一項目ずつ確認しながら感慨にふけった。「前に一覧の文字を一行ずつ見ていたときは、特に何も感じなかった。だが、実際に目の前へ積まれると、これだけの量があるんだと実感する。やっぱり工房が狭すぎるな」
荷物に問題がないことを確認すると、モーフェイは作業台へ戻り、蓄魔護腕の隠し武器の加工を続けた。その後、ミラが残したスマート・ルーンの質問にも目を通す。
そうしているうちに、窓の外は少しずつ暗くなっていった。
モーフェイがミラの次の質問へどう答えるべきか頭を悩ませていると、荷箱の隙間から一筋の黒い影が這い出してきた。
黒い影は床に沿って外へ広がり、ほんの少し伸びたところで別の荷箱にぶつかった。隙間へ引っ込むと、今度は方向を変えて再び伸び出す。それでも、広がるのに十分な場所は見つからなかった。
四方八方で行き止まりになる黒い影を見つめ、モーフェイはようやく察した。
「コロネか?」
彼は慌てて近くの荷箱を脇へ動かし、十分な空き地を作った。黒い影はすぐにそこへ流れ込み、床いっぱいに広がる。次の瞬間、コロネと薬草の詰まった藤籠がいくつか、影の中から浮かび上がった。
コロネは工房を埋め尽くす荷物へ目を走らせた。
「最初からこんなに詰め込んでいるのね」コロネが言った。「もっと量が増えたら、こんな狭い場所で中継を引き受けられるの?」
「先に中身を確認してくれ。あとで俺の収納方法を見せる」
コロネは伝票を手に取り、商会の荷物を確認し始めた。モーフェイも薬草を確認する。
両方の確認が終わると、コロネは伝票を置いた。「内容に間違いはないわ。では、この薬草はあなたに渡す。商会の荷物は私が持って帰る」
「その前に、あなたはこんな狭い場所でどうやって中継するのか疑問に思っていたよな? 実演してみる」
モーフェイはジップの幻獣瓶を荷物の箱の前へ置いた。
「ジップ、荷造りを頼む」
ジップが瓶の口から這い出し、淡い金色の力場を広げた。光の波が荷物を完全に包み込み、内側へ収縮すると、ジップはそれを一口で飲み込んだ。しばらくして、四角く整った荷物の塊が尻からぽんと出てくる。
コロネはその塊を見て眉をひそめた。「荷物は中に入っているの?」
モーフェイは塊の角をつかみ、力を込めて折った。荷物の塊は光の輪の中で膨らみ、元の姿へ戻った。
「確認してみてくれ」
コロネはまず鼻をつまんで近づいた。匂いがないことを確かめてから、荷物を隅々まで調べ、最後にうなずく。
「壊れていないわ」彼女は荷物で埋まった工房を見渡した。「この瓶中の幻獣がいるなら、ここは確かに問題ないわね」
「ただ、その方法がちょっと……」コロネは複雑な表情でジップを見た。
「まあいい。荷物を全部ブロックに圧縮してくれるか?」コロネはモーフェイへ振り向いた。「私の魔法では、荷物を持ったまま近くの隠れ場所へ短距離転移することしかできない。拠点へ運び戻すには、私が巨大なカラスに化けて運ぶ必要があるの。全部ブロックに圧縮できるなら、ずいぶん楽になるわ」
「問題ない」
こうしてモーフェイはジップに残業させ、荷造りを続けさせた。
荷箱はそれほど大きくなかったが、数が多かった。途中、ジップは一度、大の字になって床へ寝そべり、抗議の意思を示した。コロネが小さなビスケットを取り出してやると、ようやく作業を再開する。
ほどなくして、四角く整った荷物の塊が、床にきれいに並んだ。
コロネは小さな薬草の包みを取り出し、モーフェイへ渡した。
「これは取引をまとめた報酬よ」
モーフェイは薬草の包みを受け取り、笑った。「じゃあ、もらっておく」
コロネの足元から黒い影が広がり、床の圧縮された荷物の塊をすべて包み込んだ。影が内側へ収束すると、コロネと荷物は一緒に工房から消えた。
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翌朝、モーフェイは通話符文を取り出し、フローラへ連絡した。
「お嬢様、今回の取引は無事に終わりました」
「いいわ。荷物に問題はない?」
「確認した。問題ない。それと、こちらの治療所で普段使っている薬草が尽きた。商会から優先して売ってもらえないか?」
通話の向こうがしばらく静かになった。
「最近、普通の薬草が不足しているのはあなたも知っているでしょう」
モーフェイは唾を飲み込んだ。この出だし、断るか、値上げするつもりじゃないだろうな?
「でも、今回の取引をまとめたのはあなたでしょう。この程度の頼みを、あたくしが断るはずないわ。それに、もう明確な買い手を見つけているから、販路を探す手間も省けるもの」
「さすがお嬢様です。ありがとうございます、お嬢様!」
「そんなにかしこまらなくていいわ。それに、今回の取引をまとめてくれたから、商会から仲介料も支払うわ」
モーフェイは通話符文を握り、口元をつり上げた。
「あとで商会の者を向かわせるわ。それじゃ、これで」
通話が終わってからしばらくすると、工房の大扉からノックの音が聞こえた。
モーフェイが扉を開けると、外に若い女性が立っていた。褐色がかった赤い髪を後ろで結び、額には数本の後れ毛が垂れている。丸いフレームのゴーグルを額に乗せ、灰緑色のつなぎと濃い色の編み上げブーツを身につけていた。腰には作業用のポーチを下げ、背中には幻獣瓶がかすかに見える。
「こんにちは。ビズネス商会のペニーです。荷物の検品に来ました」




