第16話 補習の時間
モーフェイが工房の扉を押し開けると、冷めきれない熱気と苦みを帯びた薬草の匂いが一気に押し寄せてきた。
「誰もいない?」
工房の灯りはたしかについているのに、人影は見当たらない。
配達箱を作業台の足元にそっと置き、ばらけそうな体を長椅子に預けようとした瞬間──「今さら帰ってきたの?」
「うわあああ!」
モーフェイは半歩後退し、喉から出かけた声が途中でぼろぼろに砕けた。
あたりを見回してようやく、作業台の裏に声の主を発見した──ヴィクトルが床に屈み込み、分解した測定器の部品を前に並べて、目盛りピンセットをまだ手に持ったまま、作業台の台面より低い位置にいた。一目見て気づかなかったのも無理はない。
ヴィクトルが顔を上げ、モーフェイの焦げた整流護具にちらと目を止め、眉間の皺をさらに深くした。「整流矩陣が焼けてる。この焼け方……灰霧の深部に踏み込んだのか、それともエネルギー過負荷か?」
「道を間違えて、端をかすっただけだ。運よく戻れた」モーフェイはそれ以上説明せず、声には濃い疲労が滲んでいた。「こんな時間まで寝ないで?」
「待ってた」ヴィクトルは紙をモーフェイの前にぴしゃりと叩きつけ、当然のように平静な口調で続けた。「錬成には新鮮な素材が要る。今は黒市にしか在庫がない。俺は最近行けない。買ってきてくれ」
モーフェイはぽかんとして、手書きの買い出しリストを眺め、それからヴィクトルの目の充血を見やった。
「今まで起きてたのは、俺が帰ってきたら買い物に行かせるためか?」
「『調達』だ」ヴィクトルは訂正し、折り畳んだ手描き地図を取り出してリストの上に重ねた。「下城区の路地、銅の鳥籠が掛かった木の扉を探せ。ノックは『三回長く、一回短く』。隙間が開いても余所見するな。中の人間にこう言え:『鳥のいない籠には、風も留まらない』。出発は夜明け前の四時──そのころ巡回が一番緩くて、門番の機嫌も一番悪い」
モーフェイは唇を一度引き結び、リストと地図をコートにしまった。配達箱に目をやってから、ポケットの灰褐色の骸核を取り出して机の上に置いた。
「'プロトタイプ1号'が持ってきたやつだ。鑑定してくれ」
ヴィクトルの視線が骸核に落ち、二拍止まった。骸核が近づいた瞬間、左目の片眼鏡の符文がかすかに光った。
手に取って観察する。「元素生物の残骸。エーテルがまだ浮動している、剥がして一日以内……」眼光がわずかに凝固し、何かを読み取るような表情になった。「……土元素の素材だ。魔元素が混じっている」
モーフェイは少し間を置いた。「何元素?」
ヴィクトルが顔を上げ、一秒だけ彼を見た。目の中で何かが──演技か本気の無知かを──値踏みしていた。
「元素だ」まずその言葉だけを投げ、教科書の一ページ目を読み上げるような口調で続けた。骸核を灯りの下でひっくり返す。「物質の底層には元素がある。基礎は五種類:金、木、水、火、土、それぞれ異なる性質を司っている──金は伝導と凝錬、木は生命力と有機構造、水は浸透と連結、火は動能と活性、土は支持と安定。その上に特殊元素が二つある:聖は秩序、魔は混乱だ。五種の基礎元素は互いに混合することで派生元素を生み出す。たとえば水と火から風、金と聖から雷が生まれる」
一拍置いて、骸核をそっと机の上に戻した。
「あれほど奇跡的な錬成ができるくせに」ヴィクトルは天気を告げるように淡々と言った。「こんなことも知らないのか?」
モーフェイは一秒かけて消化し、気まずそうに頭を掻いた。「昔習ったことがある。忘れた」
ヴィクトルの表情は変わらず、骸核を机の上に戻した。「鑑定終了」
モーフェイは骸核を見つめ、心の中で呼びかけた。システム、元素分布を確認する方法はあるか?
【全知の視界サポートモード切替。'元素モード'に切り替えますか?】
切り替えろ。
【全知の視界を'元素モード'に切り替えました。】
視野の中で、もとのぼんやりした物質表示が消え、元素表示に切り替わった:【土元素 230(72.6%)、魔元素 87(27.4%)】
この機能、ずっとあったのか?
【常に搭載されておりました。宿主が切替を要求しなかっただけです。】
わかった、わかった、全部俺が悪い。
モーフェイは心の中で白目をむき、配達箱の隙間から漏れる微かな翠色の光を確認した。'プロトタイプ1号'は深く眠っている。
「進化して……その後退化する生き物って」彼はゆっくり口を開いた。「いるか?」
ヴィクトルは片眼鏡をしまい、鼻梁を揉んだ。
「そんなものは聞いたことがない。錬金生物で進化するのは瓶中の幻獣だけだが、進化したら進化したままだ。退化するなんて話は聞いたことがない。明日の素材、忘れるなよ」
言い終えると、ヴィクトルは実験袍を掴んだ。二歩歩いて、振り返らずに付け加えた。「家賃も一緒に持っていけ。黒市に分かる人間がいる」
それだけ言って地下室に消え、モーフェイに追加質問の余地を与えなかった。
工房に残ったのは、灯りのじりじりという音と、配達箱の中のかすかな気泡の音だけだった。
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空が白む前に、モーフェイはすでに坂道の上に立ち、ポケットの中のリストの厚みを手で確かめながら、冷たい空気を深く吸い込んだ。
ポケットにはリストの他に、ヴィクトルが「家賃」として渡した鉱石が三つあった。
坂道を下るにつれ、通りはどんどん狭くなり、呼び込みの声と金属を叩く音が四方八方から耳に流れ込んでくる。
地図に従って三つの分岐を通り過ぎ、看板が次第に低くなり、最後には空が一筋の隙間しか見えなくなったころ、黄ばんだ煉瓦壁のそばにその扉を見つけた──古い木材、塗装が剥がれ落ち、扉枠の上に錆びた銅の鳥籠が吊るされている。籠の中に鳥はなく、乾いた蔓が一本あるだけ。
扉の隙間から漂う匂いは只者ではなかった:素材、香辛料、それからうまく言い表せない金属の生臭さ。
モーフェイは扉に手を当て、少し間を置き、ヴィクトルが「黒市には分かる人間がいる」と言ったときの飄々とした口ぶりを思い出した。まるで市場で値段を聞くような言い方だった。
「……言うのは簡単だ」
彼は三回長く、一回短くノックした。




