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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第9章 真の力と覚悟

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第071話 氷像の騎士

訓練2日目の午後。


太陽が訓練場を照らし、全員の額には汗が浮かんでいた。


昨日から始まった連携訓練。初日はパターンAとBを繰り返しただけで終わった。動きはぎこちなく、タイミングも揃わない。


ユイは全員を見渡す。


「パターンBを、もう一度」


セイラの氷槍使用時、全員が後退する手順だ。


昨日も何度か試したが、うまくいかなかった。後退の合図に反応が遅れる者がいる。特にカイルだ。重装備のせいで、どうしても動き出しが遅れる。


「セイラ、氷槍を準備」


ユイの指示に、セイラが杖を掲げる。


空中に氷の槍が生成され、冷気が周囲に広がる。地面に薄く霜が降りた。


「全員、後退!」


ユイの声が訓練場に響く。


ハンス、リリア、アイリス、セリス、エルザが素早く後ろへ下がる。


だが、カイルだけが一瞬、遅れた。


盾の重さ。踏み出しの遅れ。足が、半拍遅れる。


セイラが氷槍を放った。


「待っ——」


カイルの声が途中で途切れる。


氷槍はダミーの手前、カイルの足元に着弾した。


冷気が爆発的に広がる。


一瞬で、カイルの下半身が凍り付いた。膝から下が完全に氷に覆われ、身動きが取れなくなる。


「……冷たい」


震える声が漏れた。


アイリスが吹き出す。


「カイル、氷像になってる!」


笑いをこらえきれず、訓練場の端で膝を抱える。


セリスが慌てて駆け寄った。


「カイルさん、大丈夫ですか!」


リリアも続き、治癒魔法で氷を溶かし始める。温かな光が氷を包み、ゆっくりと溶けていく。


やがて、カイルの足が解放された。


だが、全身が小刻みに震えている。


「さ、寒かった……本気で凍るかと思いました」


セイラは腕を組んだまま、立っていた。


「だから、後退しろと言った」


声に、わずかな苛立ちが滲んでいる。


カイルは深く頭を下げた。


「すみません……」


ユイは静かに息を吸った。


失敗は想定していた。だが、連携の難しさを、改めて突きつけられる。


前世では一人で戦っていた。指示を出すことも、誰かと動きを合わせることも、ほとんどなかった。


今は違う。


8名で動く。


それが、どれほど難しいことか。


「もう一度」


ユイは落ち着いた声で言った。


「カイル。後退の合図が出たら、即座に動いてください」


「盾は後ろに向けたままでいい。前を見る必要はありません」


「はい」


カイルが力強く頷く。


「セイラ。氷槍の着弾地点を、もう少し前に」


「分かった」


短い返答。


再び、同じ手順。


今度は、カイルが即座に後退した。


氷槍が放たれ、ダミーに着弾する。


凍結。


誰も巻き込まれなかった。


「成功です」


ユイが告げる。


セリスが笑顔を見せる。


「良かったです!」


カイルが安堵の息を吐いた。


「今度は……凍らなかった……」


ハンスが低い声で言う。


「悪くない。だが、まだ遅い」


その通りだった。


成功はしたが、動きはぎこちない。実戦で通用する水準には、まだ遠い。


訓練は続く。


同じパターンを、何度も、何度も繰り返す。


日が傾き始める頃、ようやく動きが滑らかになってきた。


「今日は、ここまでです」


ユイが訓練の終了を告げる。


全員が地面に座り込んだ。疲労が、はっきりと顔に出ている。


カイルは盾を置き、肩を回した。


「体が……痛い……」


アイリスが笑う。


「でも、カイルが凍ったのは面白かったよ」


「忘れてください……」


リリアが水筒を配る。


「明日も続けるわよ」


全員が黙って頷いた。


ユイは空を見上げる。


まだ2日目だ。


あと5日。いや、それ以上かかるかもしれない。


それでも、やるしかない。


前世では一人だった。


今は違う。


8名で戦う。


それが、どれほど難しくても。


夜。


ユイは拠点の自室で、今日の訓練を振り返っていた。


カイルが凍った場面。


あれは笑い話で済んだが、実戦なら致命的だ。


セイラの制御の荒さ。


ハンスの動きの遅さ。


全員に欠点がある。


それを補い合う。


それが、連携だ。


ユイは窓の外を見た。


月が昇っている。


明日も、訓練は続く。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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