第024話 封印の記録
ユイは文献を読み進めた。
封印陣の図。その周囲に、古代文字が並んでいる。完全には読めない。だが、断片的に理解できる単語がある。
封印。
古代種。
倒せぬ存在。
ユイの心臓が跳ねた。倒せぬ存在。前世で、自分が倒した存在だ。封印陣と、倒せぬ存在が関係している。
ページをめくる。次のページには、さらに詳しい説明があるように見える。だが、文字が擦れていて読みづらい。ユイは目を凝らした。
「封印陣は、倒せぬ存在を……」
その先が読めない。紙が破れている。ユイは溜息をついた。肝心な部分が、欠けている。
他のページを確認する。図や文字が続くが、どれも断片的だ。完全な記録ではない。時が経ちすぎている。
それでも、分かったことはある。封印陣は、倒せぬ存在に関連している。北の森の封印が壊れたということは、何かが解放された。あの黒鱗の魔物が、その何かなのか。
ユイは羊皮紙を取り出し、書き写せる部分だけ記録した。図の形、読める単語、文脈。全てを丁寧に写す。
しばらくして、ユイは本を棚に戻した。これ以上、ここで得られる情報はない。
禁書庫を出ると、司書が待っていた。
「見つかったかね?」
「少しだけ」
ユイは答えた。司書は頷く。
「古代の知識は、多くが失われている。断片を繋ぎ合わせるしかない」
「ありがとうございました」
ユイは図書館を出た。外は午後の日差しが強い。
封印陣と、倒せぬ存在。前世では、倒せぬ存在を一体倒した。だが、その時は封印陣のことなど知らなかった。今は違う。封印陣が複数ある。それが解かれている。そして、倒せぬ存在が関係している。
全てが繋がっているような気がする。だが、まだ見えない。
ユイはギルドへ戻った。訓練の時間だ。
訓練場に着くと、リオンとエリナが模擬戦をしていた。リオンの剣とエリナの魔法が、激しく交錯している。他の冒険者たちが見守っていた。
模擬戦が終わる。リオンがユイに気づいた。
「戻ったか」
「はい」
ユイは訓練場に入った。リオンが言う。
「今から模擬戦を始める。お前も参加しろ」
「分かりました」
ユイは訓練用の短剣を手に取った。今日の相手は、Cランクの冒険者三人だ。ユイ、リオン、エリナの三人で戦う。
リオンが位置を指示する。
「ユイ、エリナの側面を守れ」
「はい」
ユイは位置についた。前世の記憶が体を導く。だが、今は一人ではない。リオンとエリナがいる。
模擬戦が始まった。
相手の前衛がリオンに向かってくる。リオンが剣で受け止める。金属音が響く。
側面から二人が回り込んでくる。一人はエリナへ、もう一人はユイへ。
ユイは短剣を構えた。相手が木剣を振るう。ユイは動きを読み、避ける。そして、反撃。短剣が相手の脇腹を突いた。
「一人、無力化」
エリナが叫ぶ。ユイは頷いた。前世の経験が、少しずつ体に馴染んできている。
だが、もう一人の側面がエリナに迫っている。ユイは駆け出そうとした。だが、リオンの声が響く。
「ユイ、位置を守れ!」
ユイは立ち止まった。そうだ。自分の役割は、側面を守ることだ。前に出ることじゃない。
エリナが杖を掲げる。
「光よ、弾けろ」
光の弾が相手を直撃した。相手が怯む。その隙に、リオンが前衛を押し切った。
模擬戦が終わる。今度は、かなり連携が取れた。前世よりも、確実に。
リオンが近づいてきた。
「いい動きだった」
「ありがとうございます」
エリナも微笑む。
「連携が取れてきたわね。あと少しで、討伐隊にも行けそう」
ユイは頷いた。少しずつだが、確実に進んでいる。
訓練が終わると、日が傾き始めていた。ユイは汗を拭いながら、訓練場の端に座る。
その時、ヴィクトルが現れた。腕を組んで、訓練場を見渡している。
ユイは立ち上がった。ヴィクトルが近づいてくる。
「模擬戦、見ていたぞ」
「はい」
「連携が取れている。訓練の成果だ」
ヴィクトルは腕を組んだまま、ユイを見た。
「禁書庫で、何か見つけたか」
ユイは答えた。
「封印陣と、倒せぬ存在が関係しているようです。ですが、文献は途中で破れていて、詳しくは分かりませんでした」
ヴィクトルは頷いた。
「そうか。報告、感謝する」
ヴィクトルは少し考えてから、再び口を開いた。
「討伐隊の準備は、順調に進んでいる。あと数日で出発だ」
「はい」
「君も、参加する資格はある。だが」
ヴィクトルはユイを見つめた。
「無理はするな。訓練と実戦は違う」
「分かっています」
ヴィクトルは頷いた。
「討伐隊への参加を許可する」
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