第64話 その頃……
北の山岳地帯の麓にある山間の街『ルーテリア』
ここルーテリアの街は、イルグラードのプレイヤーにとっての初期街の一つである。
平原の『モルト』
湖畔の『アカシア』
に対して山間の『ルーテリア』は、その北部にそびえ立つ雄大な大山脈が一望でき、自然に囲まれた美しい街である。湖畔のアカシアと比較しても遜色ない景色を誇る街の一つだ。
裏話をすると『モルト』や『アカシア』よりも『初期街』としての開発時期が後期であったため、『モルト』や『アカシア』では見られない店や設備が散見される街でもある。
「こっちこっち!条件討伐の魔物が出たって!ねぇランスちゃん。早速見に行ってみようよ?!」
そんなルーテリアの街南門広場では、手招きしながらピョンピョンと跳びはねている女ドワーフがいた。そんな彼女の元へ二人のプレイヤーが集まってきた。
彼女のパーティ仲間である鬼人戦士と小人族である。
「ミアちゃん。見に行く……のはいいけど、どんな条件でどんな魔物なの?」
「わかんないよ?だから見に行くんじゃない?」
「……ミアちゃん、それは調べた方がいいと思うよ?」
仕方ないなぁといったティアナの苦笑い。彼女達は相変わらずの通常運転である。
「多分そんなことだろうと思って、先に調べてきたよ」
「わぉ!さすがランスちゃん!優秀ぅ!」
実はここ南門広場に集まる前、ミアからランスロットとティアナの二人に対して「大ニュース!南門広場に緊急で集合ねっ!」というフレンド通信が流れていたのだ。それを聞いてランスロットが事前に情報を仕入れてきた……というわけである。
「ランスさん、ミアちゃんと大違いですね」
「えぇ!そこでオトすのぉ?!……あ、で、結局どんなクエストだった?」
「わたしも知りたいです」
この世の終わりのような表情をしていたミアだったが、すぐに立ち直るとランスロットににじり寄っていく。さっきまでミアをからかっていたティアナもミアと一緒になってランスロットに迫っている。
賑やかなことこの上ないやり取りだが、ランスロットのパーティではこれが普通だ。
「うん……見せた方が早いかな。これだよ」
ランスロットがステータスを開き、該当のクエスト欄を開いて見せた。
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件名 :(条件)鬼霊討伐
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依頼者:探索者ギルド
内容 :鬼霊を討伐すること。
期限 :不定期
回数 :1回
条件 :レベル15以下で3人以下のパーティでの討伐
報酬 :ギルド別指定
コメント:あやかしの森の入り口で危険指定魔物である鬼霊を確認しました。街道の安全保持のため、速やかな討伐をお願いします。
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「……えっと、これ多分わたしたちの手に余る敵ですよね?ランスさん」
ランスロットの表示させたクエスト内容を読み、一瞬固まったあとランスロットの方を覗きこむように見たティアナの言葉だ。
以前、《あやかしの森》の奥で先輩プレイヤーである『ファクト』と会って助けられたあと、ルーテリアの街付近で鍛えてLVをあげてきたランスロットたち3人であったが、まだランスロットのLV7がパーティ内レベルの筆頭である3人にとって、とてもクエストを完遂出来るようには思えない。ランスロットがそれを一番分かってそうだ。
「どう見ても無理だろう。パーティメンバ数も3名と限定されているところからLV15の3名でギリギリ討伐出来る強さってことだと思うし」
「負けに行くだけだなんて、それはわたしもちょっと遠慮したい」
「えぇ……そんなんつまんないよ。じゃ、じゃあさ。見学するだけでどう?見てみたいんだよ~!!」
冷静にランスロットの分析を受け止めるティアナに対して、駄々をこねるミア。
ランスロットは、はぁ……とため息をついた。
「見学……はいいけど、行ってみて誰もいなくて、襲われて戦闘になっちゃったらどうするんだ?ミア」
「もちろん!全力で逃げるっ!」
「ミアちゃん。逃げるにもそれなりの実力が必要だよ?」
ティアナが難しそうな表情をミアに向ける。
「えぇ?もうあたしもLV6から7に上がりそうだし、逃げるだけなら大丈夫じゃない?」
「ミアちゃん……」
根拠のない自信に満ちあふれているミアに対して、ため息のティアナ。
「ミア。ティアナの言う『逃げる』は、ミアだけのことじゃないよ。ボク達パーティ全員が『逃げる』ことが出来て初めて『出来る』んだ。敏捷の高いミアだけが逃げる事が出来てもダメだよ」
明らかにガッカリした様子のミア。
でもパーティみんなのことを考えるならこれでいいんだと。言い聞かせるランスロット。
ランスロットとて、条件討伐で出現するレア魔物に興味がないわけではない。でも実際に会ってしまったら、戦ってしまったら……。きっとミアは言葉通り逃げる事が出来るだろう。ティアナも自分が時間を稼ぐことで多分逃がすことは出来る……とは思う。
では最後に残った自分はどうなる?
逃げる事が出来ると断言出来るか?……正直難しいだろうとランスロットは考えていた。これだけ対象LVとの差があると、もしかしたらティアナが逃げるための時間すら作れないかも知れない。そう考えたらとてもリーダーとして見学にOKを出すことは出来なかった。
こんなときファクトさんだったらどうするだろう?
そんなことを考えながら何気なくフレンド通信リストを開き、ランスロットは恩人である彼の名前を目で追った。彼もあれから少しLVが上がっているようだ。別れ際に今度ルーテリアに寄ってくれると言っていたが、いつ頃来てくれるだろうか。ステータスを見る限りログイン中ではあるようだが……。
「じゃあさ?!森の入り口からこっそり眺めてみて、誰も戦ってないようだったらあたしだけ様子を眺めてくる。戦いがもう始まってて、大丈夫そうなら見学する。これでどう?」
懲りないミアは、ガッカリしている時間がもったいないとばかりに次の案を提案してきた。
こういう変に引きずったりせずに前向きなところは、ミアのとても良いところだとランスロットも思っている。するとティアナがどうするの?といった表情でこちらに視線を向けているのに気がついた。
「そんなにまでして見に行きたいなら……行ってみようか。でも危ないとボクが判断したらすぐに帰る。それでいい?」
「ぃやったぁ!」
ミアがピョンピョンと跳びはねを再開した。喜びの気持ちを全身で表現しているとはこういうことに違いない。
「はしゃいでこないだのゴブリンみたいなことしたら承知しないからね?」
「分かってるって!あたしに任せておけば万事OKだよ!」
「全然任せられなさそうだけど、そんなミアちゃんも素敵!」
「でしょおっ?!」
ティアナは全く褒めていないが、ミアは上機嫌だ。いいのか?それで。丁寧に話しているようでティアナの言葉には結構毒がある。
二人のやり取りを見ながらランスロットは呆れていたが、覚悟も決まった。結局この彼女達の面倒はリーダーとして自分がみるんだと。
「《あやかしの森》まではそんなに掛からない。今すぐ行くか、それとも準備していくか……」
「「今すぐっ!」」
ミアとティアナの言葉が完全に一致した。こういうのは仲良しだな。
まあもともと何かするためにINしたのだ。敢えてしなきゃいけない準備などない。鬼霊に万一襲われた時にどう対処するか?なんて準備は遭ってみなきゃわからないからしなくていい心配である。そもそも戦う目的じゃない。
南門広場で集合していたランスロット達は、《あやかしの森》に向かうべくルーテリアの南門を抜けて街を後にした。
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名前:ランスロット
性別:男
種族:鬼人
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職業:戦士
LV: 7
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固有スキル
《パワースラッシュ》
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修練スキル
《槍術》
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名前:ティアナ
性別:女
種族:小人属
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職業:白魔法使い
LV: 7
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白魔法
ヒール
ハイヒール
デポイズ
デパラ
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修練スキル
《回復の心得》
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名前:ミア
性別:女
種族:ドワーフ
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職業:探索者
LV: 6
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固有スキル
《オートマッピング》
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