第63話 辛勝
SIDE エルナ
私は完全に油断しちゃってた。だって首落としたんだよ?普通、勝負ありって思うでしょ?
それなのに首なしで動き出すとか卑怯だよ?!ゾンビってことなの?
そんな油断だらけの私を庇うために、猫さんが負傷しちゃった。本当にごめんなさい。そして庇ってくれてありがとう!この恩はすぐに……って、もしかして猫さん今ので全然動けなくなっちゃってる?
でも確かに無防備にアイツの攻撃を受けちゃったから、そのくらいのダメージが入っててもおかしくない?猫さんは強いけど、アイツの攻撃用の棒も痛そうだよね。
そんなことを考えた私は、アイテムボックスから『回復薬小』を出そうとしながら猫さんに近づこうとしたの。そしたら右の方からファクトが血相変えて走ってくるのが見えるじゃない。あれはきっと猫さんを助けるためだよね。
ファクトが飛んでくるなら大丈夫。そう思った私はアイテムボックスの中で掴んだ『回復薬小』を離した。それにしてもあんなにファクトが必死になるほど、猫さんが酷い状態だと気づかなかったよ。
……?
違うっ!馬鹿は私だ!
首なしのアイツが、動けない猫さんを狙ってるじゃない。何で私はそれに気づけなかったのっ?!
そう、私を狙ったアイツは猫さんを棒で吹き飛ばした。次に狙ってくるのはまた私だとどこかで思い込んでいたのだ。
ヤバいよ!どうしよう?!
ファクトのタイミングじゃ間に合わないよっ!……ええいっ!
「冗談じゃないわっよっ!!」
私は今まさに猫さんに襲いかかろうとしているアイツとの距離を一気に縮めると、猫さん目掛けて振り下ろされたアイツの棒に狙いを定めて思い切り刀を振り回した。
私の全力の一撃はアイツの棒を弾きとばした。反動でアイツの身体が仰け反るようにバランスを失っている。
チャンスかも知れない。でもちょっと気がかりなのは、弾いてバランスを崩している筈なのにアイツの持ってる棒が綺麗に真上に上がったことなのよね。
本当にバランスを崩していたら、あんな風に振りかぶれるかなぁ……。
そう思った私は慌てて追撃せずに、アイツの動きをよく観察したの。その時だった。ファクトが猫さんを抱えて私の前を横切るように通り過ぎたのは。
良かった。……それは間違いなく私の本音。
ファクトの救出が間に合ったってことだもの。それにああしてこの場から少し離れたら、少なくてもアイツの攻撃を受けなくて済むよね。
でも、私はこの一瞬をとても後悔している。
何故なら、アイツから一瞬であっても目を離してしまったから。
違和感があったはずのアイツの棒の動きなのに、何故か私の頭から抜けてしまったこと。ちゃんと目を離さずに観察出来ていたら回避出来てた?……かどうかはわからない。
でも、もしかしたらアイツの必殺技を邪魔したり、もう少し時間を稼いで二人の逃げる時間を作ったり出来ていたかも知れない。それが私の後悔だ。
スローモーションのようにゆっくりと振り下ろされるアイツの棒。
「技だっ!」
聞こえた言葉はファクトの声だったのかな?
誰の声であったとしてもその声が聞こえた直後、アイツの棒が地面に叩きつけられた。
そして私達は木の葉のように軽々と吹き飛ばされたんだ。今度も背後の木に衝突して止まったけど、背中が……違う。全身がとても痛くてたまらない。
一発目の時より近くにいたせいか、比較にならない大ダメージを受けちゃったみたい。身体が痺れてよく動かないし。
でも私は必死に立ち上がった。
二人は私よりもアイツから離れていたけど、今の一撃を食らって二人が無事な訳がない。
ここは私が立たなくちゃ。
これまで二人に支えられ、助けられた私。今戦えなくて何が戦士だ!何が姫武士だ!
立ち上がった私の視界に飛び込んで来たのは、アイツの技で吹き飛ぶ前と全く同じ格好でうずくまっているファクト。そしてうつ伏せのままピクリとも動かない猫さん。
そして、あの必殺技を二度受けても立ち上がった私に向かって、ゆっくりと近づいてくるアイツの姿だった。
ちょっとだけ私はホッとした。
何故なら獲物が私であるなら、これ以上ファクトと猫さんを傷つけさせたりしないで済むからだ。
でも困ったことが一つ。
さっきアイツの必殺技で吹き飛ばされた時に刀を落としちゃったってこと。
どこに落ちているかすぐに分からないし、分かったところで拾うために走り出す余裕もない。
私はファクトから受け取っていた『回復薬小』アイテムボックスから取り出して使った。でも全快するわけじゃない。もう数本使ってもいいけど、アイツはすぐそこまで近づいてきてるし、悠長にアイテムを使っている時間は無さそうだし。
代わりに私は腰にもう一本常備している副武器『脇差』に手を掛けた……が、そこで手を止める。
そう……私は思い出したの。
猫さんがくれた素敵なプレゼント。
これは私の必殺技……ここで『脇差』を鞘から抜いてしまったら、もったいないじゃない。
アイツが近づいてくる。
5m……4m……3m……
もう目と鼻の先にアイツがいる。手にはいつものあの棒。そしてその棒はゆっくりと上がっていく。
私はひたすら待った。アイツが間合いに入るその瞬間を……そして、射程範囲にアイツが入った瞬間、私は『脇差』から刀を抜き放った。
閃光のように刀が走る。
スルスルスルっと鞘の中を滑りながら加速した刃は目にも止まらぬ速度でアイツの身体を切り裂いた。そして……チンという小気味よい音色と共に、猫さん特製の『脇差』は納刀される。
「居合抜刀術!《無心》」
アイツの身体に左下から右上にかけて斬撃痕が入ると、そこを境にズルッとアイツの身体がズレた。
そして二つの物言わぬ肉片と化したのだった。今度こそ勝負ありである。
「やった……猫さん、ありがとう。……ファクトは無事かな?」
私は二人の倒れている方へ目を向けた。近くに私の刀も落ちているみたい。二人が今の今まで動いてないのが凄く気になる。心配で仕方ない。
と、その時私の目の前にピロンとウィンドウが立ち上がったの。
『戦士のレベルが上がりました』
改めてホッとする私。戦いが終わったことを実感する。戦闘中はLVUP表示が出ないからね!
ちゃんと倒せた証拠だ。
私は倒れている二人のところまでくるとアイテムボックスから『回復薬小』を取り出した。そして、倒れている二人の口元へ『回復薬小』を流し込んでみる。瀕死と衝撃で気絶しているだけ……そう思っていた。いや、思いたかった。
フッと湧き出る嫌なイメージ……私は必死で二人が力尽きている可能性を考えないようにしてた。その事実に気づいた。でも……これは……。
するとその時、猫さんの身体がピクッと動いた。
生きてるっ?!
「猫さんっ!猫さんっ!生きてる?!大丈夫?!」
私は必死に猫さんの身体を揺り動かした。絶対に生きている!そう信じて。
すると、猫の大きな瞳がゆっくりと、半分だけ開いた。
「オラは……猫だど」
「良かったぁ!!」
私は猫さんの身体をブンブンと揺り動かした。猫さんの首がガックンガックンなるほどに。
そして猫さんは目を覚ましたのに、ファクトが一向に目を覚まさないという事実から目を背けるように……。
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名前:エルナ
性別:女
種族:人間
称号:クイーンビーバスター
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職業:戦士
LV:12
腕力:70 (48+20(STR+100%)+2)
活力:62 (44+18(VIT+100%))
敏捷:32 (15+10(AGL+50%)+7)
器用:28 (25+ 3(DEX+30%))
魔力: 8
運 :12
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武器:打刀(無銘)(STR+20/DEX+5) :STR値+2
盾 :なし
サブ:脇差(STR+12/DEX+10) :使用時《無心》
頭 :鉢金(VIT+3) :AGL値+1
手 :甲手(VIT+3/DEX+4) :AGL値+2
胴 :稽古道着(VIT+10/AGL+5) :AGL値+2
下肢:稽古袴(VIT+2/AGL+5) :AGL値+1
足 :地下足袋(AGL+10) :AGL値+1
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固有スキル
パワースラッシュ
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修練スキル
剣撃
旋風刃
魔物鑑定
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武器依存スキル
無心
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