第41話 素材集め~ファイアバード
銀狼率いる雑魚狼の群れとの戦いで学習したオレは、夜暗いうちに一人で遠出をすることをやめることにした。
プレイヤー達と一緒に一度アカシアの街に戻ったオレは、一通り集まった『回復薬小』の3束分をギルドに納品して1,050Gを受け取ると、再び街の外に出た。といっても遠出はしない。
辺りが暗いうちはとにかく街の周辺で素材集めに勤しむ。
そこら中にアロエがあるのだからこれだけでも結構な稼ぎになる……はずだ。オマケにアロエだけではなく毒消し薬や麻痺治療薬の材料となるドクダミも拾い続ける。
ギルドへの納品クエストにはこの2つもあったのでついでに受けておいたからだ。ただ、回復薬小と比べるとやや実入りが悪いのであまり期待はしない。……木片?んなもんは作らない。
そうして生産職らしい行動を続けて居ると、LVがまた一つ上がって9になった。雑魚狼戦も加算されていることだろう。これで猫のレベルに追いついた。いや、奴は延々と鍛冶を続けて居るのだから、とっくに水をあけられているかも知れない。
それはそれとして、結構敏捷が上がってきたのは嬉しい。
クロスボウの立ち回りにしても、ダガーでの立ち回りにしても、足回りが素早いのは有利に働くからである。ブーストでドーピングした時の事を考えるとかなり大きい値だ。
そうこうしているうちに周りが明るくなってきたので、今度こそ鳥魔物狩りである。
狙うは、昨日数匹狩った鳥の魔物。……アリスに教えてもらって戦闘履歴を確認すると、魔物の名前はファイアバードだそうだ。クロスボウの一撃で倒していたから気づかなかったが、戦いが長引くと炎を吐かれていたかも知れない。注意するに越したことはないだろう。
銀狼達に襲われた辺りまでやってくると、ファイアバードが大量に飛んでいた。
昨夜、あれだけ探しても見当たらなかったのに……やはり明るい時間帯でないとエンカウントできない魔物なのかもしれない。
こうして見るとファイアバードたちは群れで行動している。
いくらそのうちの一匹をクロスボウで仕留めたとしても、その他大勢に集団で襲いかかられては危険である。倒しきるために削らなければいけない体力値が、雑魚狼より少ないことはクロスボウのお陰でわかっているが、だからといって攻撃力が雑魚狼より少ないとは限らない。
(……『ブーストLV2』は使っておいた方がいいかもしれんな)
大量に作りはしたが、昨日の雑魚狼と銀狼のせいで結構使ってしまっている。在庫数のことを考えると出来れば温存したいところだが、最初の一撃のあと一斉に襲いかかってくるだろう鳥たちを回避出来なくては元も子もない。
戦ってみた結果、使わなくても問題なさそうであればそこから使用を控えればいいだけだ。
オレは『ブーストLV2』でドーピングすると、身を隠せそうな立木の側から手近なファイアバードに狙いをつけて撃った。
昨夜と同様、オレのクロスボウから放たれたウッドボルトは、正確にファイアバードの頭を打ち抜いて仕留める事が出来た。が、やはり近くにいたファイアバード達が一斉にざわめき立った。オレは慌てず落ち着いて立木に身を隠す。あの角度からではそうそうオレの姿を見つける事は出来ないはず……と考えたが甘かった。
ファイアバードたちは一斉に立木に隠れるオレ目掛けて急降下してきたのだ。
(やばっ!見つかってる)
よくよく考えれば当たり前だ。
オレが隠れている立木以外に、姿を隠せるような場所がないのだ。何か敵がいるとなればそこにしかいないというわけだ。
それにしても、魔物の思考もそれなりに頭がいい仕様だ。単純行動しかプログラム出来ていなかったなら、立木に隠れたオレを狙うなんて行動になるわけがない。
……って、感心してる場合じゃない。この窮地を脱しなくては!!
素早く次弾を装填すると、立木からクロスボウを構えたオレは飛び出しながら、飛来するうちの一匹を撃ち落とす。
が、そうした行動などわかりきっているとばかりに散開し、ファイアバードは一斉に炎を浴びせかけてきた。
(あっぶねぇ!)
間一髪、立木から飛び出したオレは丸焼きの難を逃れた。
ていうか、さっきまでオレが隠れていた立木が完全に焼失している。いいのか?それで。
あまり身を隠す意味はなかったが、隠すことも出来なくなったオレは改めてファイアバードの集団を確認する。
5……6……。うむなんとかなるかもしれない。……いやわからないが。
幸いなことにその場にいた全てのファイアバードが襲いかかってきているわけではなかった。少なくとも明確にオレを狙って襲ってきているのが全部で7羽。そのウチの1羽はさきほど立木から飛び出したときに仕留めたので残りは6羽だ。
もう身を隠すことは出来ないので、堂々とクロスボウを構えて近いファイアバードから狙い撃っていく。
が、次の瞬間オレは地面に叩きつけられていた。やったのはもちろんファイアバードだ。倒れたことを理解したオレはすぐにその場を飛び退いて転がるように起き上がる。つい先ほどまでオレが倒れていた場所へ、数匹のファイアバードが上空から叩きつけるような一撃を浴びせた。
(……全っ然弱くない。てか強えだろ、こいつら)
オレは既に後悔している。耐久こそないがその俊敏性、攻撃性、一撃の威力はオレのステータスを遙かに凌駕しているようだ。
ドーピングしていて本当に良かったと心底思った。ここでも『ブーストLV2』は大活躍である。
しかし安心している場合ではない。ドーピングにも時間制限があるし、そもそものんびり構えて勝てる相手ではないことは既にハッキリしている。
すぐに残っているうちの一羽にクロスボウで狙いを定めて撃つ。攻撃をかいくぐって一羽が強烈な一撃でオレを吹き飛ばす。そこへ繰り出される怒濤の追撃。吹き飛ばされた次の瞬間に絶体絶命の瞬間が訪れる。その繰り返しだ。
緊張感があるなんてもんじゃない。死亡退場と隣り合わせの戦いに疲労困憊である。
だが、少しずつ倒してファイアバードの数を減らしているという事実は大きい。それは残り3羽となった時の一瞬の油断……オレは追撃をかわしきれなかったが、数を減らしていたためにギリギリで命を繋いだのだ。戦闘開始直後にやってしまっていたら、お話が確実に終わっている。
なんとか耐えられることが分かった段階で、あとは消化試合となった。もちろん体力回復には自家製の『回復薬小』である。これがないと危なかったのは事実だ。
わりとギリギリの戦いで、オレはファイアバード8匹の群れをなんとか倒したのだが……残念なことに『鳥の羽』は落とさなかった。
本当にガッカリだ……と同時に、もうスタンダードボルトをメインの弾にするのをやめようと本気で思った瞬間でもある。『鳥』の『羽』なんだから、倒したファイアバードから羽をむしって「『鳥の羽』ゲット!」と言いたい。言ってしまいたい……が、倒した魔物は消えてしまう仕様のためどうしようもない。
大きく一つため息をついたオレは、アカシアの街へと戻った。
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名前:ファクト
性別:男
種族:ドワーフ
称号:クイーンビーバスター
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職業:調合士
LV: 9
腕力:19+ 6(STR+50%)
活力:21+13(VIT+70%)
敏捷:23+ 5(AGL70%)
器用:38+ 1(DEX+50%)
魔力:12
運 :13
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武器:ハンティングダガー(STR+12):即死効果50%
盾 :
サブ:クロスボウ(STR+10):命中精度80%UP:調合士装備時
弾 :ウッドボルト(STR+5)
頭 :レザーヘッドギア(VIT+2)
手 :レザーグラブ(DEX+2)
胴 :ハードレザージャケット(VIT+12):毒無効
下肢:レザートラウザ(VIT+4)
足 :ハードレザーブーツ(AGL+10):移動速度20%UP
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所持金:
1,540G
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固有スキル
調合
アイテム鑑定:調合士
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修練スキル
虫の知らせ
必中
短刀術 new!
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レシピ
回復薬小
毒消し薬
麻痺治療薬
木片
ウッドボルト
スタンダードボルト
ブーストLV2
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受注クエスト
回復薬小の納品(束)350G/10個
毒消し薬の納品(束)250G/10個 new!
麻痺治療薬の納品(束)300G/10個 new!
新作武器の材料調達
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受注クエスト(束)に納品時価格を書いてみました。




