第40話 鬼人グレン再び
(どういうことだ?)
オレが最初に感じたのは違和感だ。
あれほどオレに集って襲い掛かってきた狼たちの攻撃が緩む。というか、急に攻撃がされなくなる。
『グルォォォォン!』
そして、遠吠えのような銀狼の鳴き声を合図に狼の群れが、オレの周りから一斉にいなくなった。
(た……助かった……のか?)
オレは思わずその場に座り込む。
さすがにいつ終わるともわからない戦闘に加え、仮に倒し切ったとしても手も足も出ない銀狼が控えているのではただの詰みゲーをやらされている気分だった。だが、狼の群れ側が撤退したことで、この戦いはオレの勝利だ。
すると、ピコン!という軽快な音とともにウィンドウが立ち上がる。
《修練スキル……『短刀術』を習得しました》
(おぉ!やったぞ。あがいたのは無駄じゃなかった)
クロスボウをアイテムボックスに仕舞ってからの死闘が、オレに修練スキルの獲得をもたらしたらしい。オレは早速その効果と習得条件を確認する。
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名称 :短刀術
効果 :短刀による攻撃精度と速度が上がる。
習得条件:1回の戦闘中で短刀による攻撃で
20匹以上の敵にとどめを刺す。
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なるほど。納得の条件と効果である。
要するに少し短刀の扱いが上手になったよ!ということだ。短刀をメインウェポンとして使用しているプレイヤーならみんな持っているのではないだろうか。いや、1戦闘で20匹のとどめは通常のプレイでは厳しいか?
ともかく、このスキルは恐らくエルナが持っている片手剣スキル『剣撃』の、短刀版だろうとオレは思った。
習得条件に難易度の差があるが、運営側がいろいろ頭をひねって調整している結果なのだと思う。そういったスキルがあるだろうと想定して取りに行くには、鬼畜な条件であるという点ではどちらも変わらない。
そんなことを考えつつ、いつの間にか20匹も雑魚狼をハンティングダガーで倒していたことにオレは驚いた。確実に即死効果50%のおかげである。ある意味、オレを襲ってきた盗賊に感謝だ。このスキルは奴のプレゼントだと思って差し支えないだろう。
『虫の知らせ』はクリエラからのプレゼントであるし、オレは多分幸せ者だ。
と、そこまで確認したところで、オレは街の方から大量のプレイヤーが寄ってくるのに気付いた。
何人くらいの集団だろうか?ぱっと見で10名以上はいそうである。向こうもどうやら突っ立っているオレの姿を見つけたようで、アカシアの街からやってきたプレイヤーの集団はオレの周りで足を止めた。
「おいっ!シルバーウルフはどこだ?!」
「それだけじゃないぞ?確かワーウルフの群れもいたと聞いているが、お前が一人で倒した……わけはないよな?」
「てか、なんでこんなとこに一人でいるんだ。まさか俺達を出し抜いたんじゃねぇだろな?」
「あ、こいつアレっす。俺見た奴だ。ワーウルフの群れに襲われてたプレイヤーっすよ。生きてたんですね」
「って……おい。お前ファクトじゃねぇか!」
オレの周りでワイワイガヤガヤと騒ぎ始めるプレイヤー達。ハッキリ言って五月蠅い。
集まってくるなり矢継ぎ早に浴びせかけられる質問にうんざりするオレ。そしてオレは一つの可能性に気づく。
もしかすると銀狼……シルバーウルフって言ってたな。あいつが撤退したのは、こいつらが集まってくる気配を察したからなのか?という可能性だ。
それが本当ならオレはこいつらに感謝しなきゃならない。銀狼が撤退を決めないかぎり、オレに勝ち目はなかったはずだからだ。
ともあれ実際のところはよくわからない。
シルバーウルフの行動は魔物としては不可解なことだらけだ。AIでも積んでるか?と思えるほど行動と判断が複雑であったように感じた。
「てかよ!要するにもういねぇんじゃんかよ!シルバーウルフ。人集めてないでさっさとくりゃ良かったぜ。それによぉ。お前も、もう少し俺らが到着するまで引き付けとけよな……」
実に失礼な物言いだ。他人のためにわざわざ危険な魔物を引き付けておくとかあり得ないだろ。
……そう思って声の主を見たオレは、暴言に納得してしまった。そこにいたのはモルトの街にいるはずの鬼人だったからだ。
「なんだ、アンタか」
「おぃおぃ、随分な物言いだなぁ?俺の獲物ばかりさんざん横からゲットしておいてよぉ。《あやかしの森》は俺が狙ってるって言ってんのにわざわざ狙いやがって。シルバーウルフまで取られたんじゃ立つ瀬がねぇ。ちゃんと俺の分を残してんだろうなぁ?」
何もこのタイミングで……とも思うが、鬼人がダンジョン踏破報酬を狙っていたことは知っていたし、それを先んじてクリアしたのも事実だ。性格上、こいつが絡んでくることは予想の範囲だが……。
「別にアンタへの嫌がらせのためにクリアしたわけじゃない。わざわざ言わなくても分かってるだろうが、俺の目的はちゃんとモルトの街で伝えただろ?その目的で森に行って、……いろいろとトラブルもあって、対処をしているうちに気づいたらクリアしていたってだけだ。敢えて言うなら、ワザとじゃない。だから悪く思うな」
「フン……どうだかな。まあ終わっちまったもんは仕方ねぇ。だが、シルバーウルフは俺のもんだ。手を出すなよ?」
鬼人は今度こそ獲物を横取りするなとばかりに威嚇してきた。
嫌みったらしい圧力に若干気圧されたが、オレはふと思い出すことがあった。
そうだ、こいつには聞きたいことがあった。そう、ダンジョン踏破の条件が、言っていたことと違うじゃないかということだ。聞くなら今しかない。
「あやかしの森の踏破のことだがな?アンタは『重複しない四種類以上の職業で構成されたパーティ』が条件だって言ってたな?そんな情報どこで手に入れた?知っての通りオレは相棒と二人でクリアした。アンタの言う条件など一切満たしちゃいない。これはどういうことだ?」
「あん?そんなこと言ったか?言ってたとしてももう覚えてねぇな。お前にクリアされたと知った時点でもう忘れちまったよ。ま、どっちにしてもオレが自分で調べた条件じゃねぇ。調べさせたことを話してただけだからな。細かいことグチグチ言ってんじゃねぇよ」
鬼人が興味なさそうに吐き捨てる。
乱暴で粗野なプレイヤーだが、その振る舞いに違和感はない。
(つまり、正しい条件など鬼人は知らなかった。いや、間違った情報を本当だと信じていた……というのか)
オレの疑問は鬼人ではなく、鬼人の仲間達に向けられる。が、そう言えば鬼人の仲間であるはずの白魔法使いと黒魔法使いの姿がない。
「アンタ、仲間はどうした?」
「仲間?そんな連中はもういねぇよ。どいつもこいつも俺の役に立たねぇ!新天地を目指して折角アカシアの街に来たってのに、早々にお前に会うんじゃあ俺はツイてねぇ。シルバーウルフもとっくに逃げちまってるようだし、もうここには用はねぇ」
「あ、待って下さい兄貴!」
踵を返した鬼人の後を追うように、モルトでは見覚えのない一人のプレイヤーが続いた。
ある種、天上天下唯我独尊行動しか取れない鬼人ではあるが、アカシアの街に来てすぐに舎弟のような仲間を連れているところを見ると、面倒見のいい一面もあるのだろう。
他のプレイヤー達も、逃げた銀狼と雑魚狼の群れを追いかけようという気は特にないようで、ぞろぞろとアカシアの街へと戻り始めた。オレもその流れに乗っかって一旦アカシアの街に戻ることにした。
目的だった素材『鳥の羽』は、結局一枚もゲットすることは出来なかった。その点だけは非常に残念だった。
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名前:ファクト
性別:男
種族:ドワーフ
称号:クイーンビーバスター
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職業:調合士
LV: 8
腕力:19+ 6(STR+50%)
活力:20+13(VIT+70%)
敏捷:19+ 5(AGL70%)
器用:36+ 1(DEX+50%)
魔力: 9
運 :11
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武器:ハンティングダガー(STR+12):即死効果50%
盾 :
サブ:クロスボウ(STR+10):命中精度80%UP:調合士装備時
弾 :ウッドボルト(STR+5)
頭 :レザーヘッドギア(VIT+2)
手 :レザーグラブ(DEX+2)
胴 :ハードレザージャケット(VIT+12):毒無効
下肢:レザートラウザ(VIT+4)
足 :ハードレザーブーツ(AGL+10):移動速度20%UP
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所持金:
490G
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固有スキル
調合
アイテム鑑定:調合士
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修練スキル
虫の知らせ
必中
短刀術 new!
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レシピ
回復薬小
毒消し薬
麻痺治療薬
木片
ウッドボルト
スタンダードボルト
ブーストLV2
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受注クエスト
回復薬小の納品(束)
新作武器の材料調達
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