第288話 聖騎士への道
上位職への昇格クエストと言っても様々だ。オレが見聞きしたり体験したりすることで知っている限りでは以下の通りである。
魔導技師(調合士ギルドクエスト)
:Bランク魔導系アイテム20品の納品か、Aランク魔導系アイテム5品の納品。もしくはSランク魔導系アイテム1品の納品。
薬師(調合士ギルドクエスト)
:Bランク薬効アイテム20品の納品か、Aランク薬効アイテム5品の納品。もしくはSランク薬効アイテム1品の納品。
剣士(戦士ギルドクエスト)
:戦士ギルドの道場でLV30の教官と戦い、剣士として必要なスキル《連続発動》を獲得すること
騎士(戦士ギルドクエスト)
:騎士として必要なスキル《シールドバッシュ》を獲得すること
レンジャー(探索者ギルド)
:ラミーラ坑道のクエストボス『キラサカスコ』をクロスボウを使って討伐すること
ちゃんと知ってるのはこんなところだろうか?
こうして並べてみるとレンジャーのクエストが鬼畜仕様に思える。調合士ギルドや戦士ギルドのクエストと比較すると圧倒的に難易度が高い。もしかしなくても、現時点でるー坊しか昇格出来ていないんじゃないか?と思うほどだ。
もしかするとイルグラードにおいてレンジャーはとても優秀なクラスなのではないかと思う。
るー坊はまだいろいろと力を隠しているのかも知れない。
……と、いまはスフィアさんの話だ。るー坊じゃない。
目指す上位職は『聖騎士』ということなのだが、現在白魔法使いであるスフィアさんが目指すということから、オレはてっきり白魔法使いからの派生上位職だと思っていた。ところが、エルナによるとエルナの昇格候補としても、選択肢として『聖騎士』があったらしい。
確かに名前から想像出来るイメージとしては白魔法使いより戦士である。どういうことかと思っていたら、その答えはスフィアさんが既に持っていた。
要するに聖騎士っていう職は、白魔法を使う戦士であるため、双方のギルドのクエストをクリアしなくてはならないのだそうだ。言われてみればよくありそうな条件である。
同様に黒魔法を使う戦士である『魔剣士』は戦士ギルドと黒魔法使いギルドの二つのクエストをクリアする必要があるらしい。
「ところで、結局『聖騎士』ってどんな職なのかな?」
「だから白魔法を使いながら戦士として前衛で活躍するんだろ?」
「ん~そうじゃなくって……上手く言えないけど、魔剣士を紹介された時になんかね……使える魔法に制約があるとか聞かされたから」
「そうなのか?」
エルナの質問を軽くあしらったオレだったが、制約があると聞いて少し興味がわいた。
「どんな制約なんだ?」
「えっと……忘れちゃった」
あははと苦笑いをするエルナ。
エルナらしいといえばらしい。実際に今のエルナに必要な情報か?と言われれば、不要な情報だ。鬼神のごとき強さの白兵戦を武器とするエルナに魔法は必要ない。
「たしか『魔剣士』は強化魔法と自分で選んだ1系統の魔法しか使えないはずですよ」
「あ!それそれ!あのギルドマスターそんなこと言ってた」
助け船を出してくれたスフィアさんに乗っかるエルナ。全く調子のいいことだ。
「つまり……エルナが最初に聞きたかったことは、その魔剣士のように使える白魔法や戦士としての能力に何か制限があるんじゃないか?ってことか?」
「そうそう!そういうこと!伝わって良かった」
エルナはスッキリした表情でうんうんと激しくうなずいている。
ま、いいかとオレはスフィアさんの方を向いた。
「もちろんあります。でもどっちつかずといった中途半端な能力ではなく、回復魔法と支援魔法が使え、防御力と聖属性攻撃に秀でた前衛という感じですね」
と、スフィアさんが説明してくれた。
スフィアさんの説明を纏めると使える魔法の系統は、回復とバフ。
修練スキルとして魔法全体化を習得していれば、対象を全体にすることが出来るため、既に《バフ魔法全体化》を習得しているスフィアさんは、バフ系統に関しては変わらず全体にバフを蒔けるらしい。
ただし、異常状態の治療魔法は一切使えなくなるため、治療アイテムを持ち歩く必要があるらしい。……オレがいればそれも不要だな。
ちなみに戦闘不能状態から復活させる魔法も使えない。オレもまだ蘇生液などのアイテムは《調合》出来ないので、これについてだけは持ち歩きが必要なアイテムだ。
そして特に前衛としての能力は強化効果しかないようだ。
白魔法使いに比べて明らかに防御力・体力は向上するし、使用する武器の能力を戦士並み引き出せるようになる。スフィアさんの場合は、得意な攻撃手段が徒手空拳になるのでナックルや攻撃型の手甲などを装備することになるらしい。
「ちょっと回復方面が弱体化するのは仕方ねえが、その辺はげいるがなんとかしてくれるような気がするんだよな」
と、ミゲル。
そういえばしばらくげいるの姿を見ていない。シナリオも進めてないんじゃないかと心配になったが、ミゲルに言わせれば「あいつのことは何の心配もいらねえ」とのこと。理由はよく分からないが、そういった一緒に行動するのに支障がありそうな事項はいつも勝手にクリアしてくるので、一緒に行動しようとしたときに出来なかったことがないらしい。
「ほれ、噂をすれば……」
ミゲルが顎で指した先……中層広場の隅の方に、噂の人物『げいる』が腕組みをして突っ立っている。向こうもこちらの姿を確認したようで、小さく手を上げるとこちらにゆっくりと歩いてきた。
「これで5人だねっ!」
一緒に行動する人数が増えたことをエルナが喜んでいる。げいるが増えても無口だから賑やかさは変わらないだろうけど。
「おっし!じゃあ戦士ギルドにいくぞ……で、いいんだよな?」
「はい。白魔法使いギルド側のクエストはもう終了していますので」
確認するミゲルに対して、スフィアさんは柔らかな笑顔で頷いた。




