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イルグラード(VR)  作者: だる8
第一章 物語の始まり
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第24話 あやかしの森

王国と王都の名前が変更になりました。m(_ _)m

 どうして最初からこうしなかったのか。


 そうツッコミをいれられてもおかしくないのだが、あやかしの森の場所についてはアリス(AI)に聞くことが出来た。《あやかしの森》とはモルトの街の西に広がる大森林の通称らしい。プレイヤーのゲーム進行支援をしてくれるAIなのだから、最初から尋ねれば良かったのだ。

 説明の際に、モルトの街周辺の地図をアリスに見せて貰ったので、およその位置関係は把握出来たつもりだ。


 ただし、《マップ》で表示させることの出来る地図についてはモルトの街で入手することは出来ないそうで、アリスの話によるとモルトの街の南に広がるセプテール平原を超えた更に南に位置する王都『ベル=フレッタ』まで行く必要があるとのことだ。そして余談だが、今オレたちプレイヤーが活動しているこの国は『ベル=リアーナ王国』というらしい。


 アリスの話によると別名『森林王国』とも呼ばれているそうだ。

 モルトの街周辺は北に位置するせいか平原が多いが、王都のある付近にいくとかなり木々が密集しているようだ。まぁ、お世話になるのはまだしばらく先の事だろう。


 イルグラードで夜が明けるのを待ち、オレは空がうっすら白みかける頃モルトの街を出た。目的地以外で余計な戦闘をしないためだ。方角を確認しながら西に向かってひたすら歩くこと二時間ほどすると、やっと前方に鬱蒼(うっそう)とした森が見えてきた。疲れは特に感じないが、それなりに結構広いマップのようだ。


 ちなみに魔物との戦闘は出来るだけ避けるつもりで歩いていたのだが、見通しのよい平原であるためかゴブリンの他、野生の獣系の魔物に何度か襲われた。ただ、見通しが良いのは魔物側からだけではなく、こちらからも一緒である。

 しかも《虫の知らせ》のお陰で不意打ちを喰らうことなく、むしろ遠方からのクロスボウ先制攻撃から戦闘開始出来ることは、大きなアドバンテージだった。おかげさまで目立って大きなダメージを受けることなくここまで来ることが出来たと言っていい。


 ついでに道中の戦闘でLVが一つ上がって4となったのも嬉しいニュースである。

 もちろん、視界に入ったアイテムを拾い歩くことも忘れない。拾ったアイテムの中には何の役に立つのかもわからないアイテムも含まれているが、今後レシピが増えたときにわざわざ探しに行かなくてもいい……といいな。と考えているだけだ。


 歩いて、視て、拾って、アイテムボックスへ。この一連の流れは既に癖になりつつある。まあそんな事をしながらの徒歩であったので、本来かかる時間より余計に掛かっているだろうとは思う。


 オレは《あやかしの森》に近づくと、周囲の警戒を行う。驚いたのは《あやかしの森》を形成する木々の巨大さだ。幹一本で何人かの人が身を隠せそうなほどと言えばその大きさが伝わるだろうか。ただし別の捉え方をするなら、どの木の陰から魔物が飛び出してきてもおかしくないという意味でもある。警戒は微塵も怠れない。


 もっと言えば、(キラービー)を狩るなら《虫の知らせ》アラートが鳴ってからでは遅い(・・)と思っている。出来ればこちらから能動的に索敵出来るといいのだが……無いものねだりをしても仕方ない。敵意を持った相手の接近がわかるだけでも恵まれていると思わなくては。

 その上、警戒すべきは(キラービー)だけではない。どんな凶悪な魔物が配備されているかという情報を何も持っていないことは、不利である。


 そして、何より自分の弱さを忘れてはならない。


 プレイヤー推奨LV7、クリエラ推奨LV5に対して、オレのLVは4成り立てである。

 少しでも経験値を稼ぐべく、集めてきた材料を使って回復薬小とウッドボルトを量産した。『調合士』の場合『戦闘行為より《調合》を行った方がLV上げに向いている』というオレの勘を信じて……。


 そうして出来たウッドボルトをリロードしたクロスボウに装填すると、身を隠した入り口の幹から顔を出して先を覗いてみる。

 だが、森の中は視界がかなり悪い。


(探索者が必須と言われるのはこの辺が理由かもな……恐らく探索者にはこういった事態を打開するスキルがあるに違いない)


 そう思ったところでオレはソロなので何か出来るわけでもない。まずは足を踏み入れてみようと一歩前に出たそのときである。

 耳で捉えたかすかな羽音。《虫の知らせ》は未発動……つまり気づかれてはいない。オレはすぐに全ての動きを止める。蜂の魔物が現実の蜂と同じ行動パターンを模しているのであれば、動きに対して敏感に反応するはずだからだ。もちろんそれだけでキラービーの対処が出来たとは思えないが、闇雲に動き回るよりはいいはずだ。


 オレは羽音のした背後をゆっくりと確認する。よく観察していると、まだ姿は確認出来ていないが羽音以外に金属音らしき音も聞こえているのに気づいた。


(誰かが戦闘中か……)


 オレはチャンスだと考えた。第一に(キラービー)の戦闘パターンを視ることが出来る。あとは、(ガドル)の時を思い出せば、パーティを組んでいなくても交戦中の敵への妨害行為は可能だ。それによって討伐報酬……いわゆる経験値的なものへどう反映されているのかはわからないが、プレイヤーである以上死亡退場だけはとにかく避けたい筈である。 援護が上手くいったならば、ドロップ品の蜂蜜くらい分けてもらえるかもしれない。


 さらに身体を乗り出して様子を確認する……が、次の瞬間ダメだと確信して首を引っ込める。

 そこで戦っていたのは、LV上げパーティ集めで最初に声を掛けたあの探索者風の男とその仲間達だった。野良で集めたメンバーか、固定メンバーを含んでいるのかはわからないが、既に崩壊しているのが見て明らかだ。


 確認出来たのはその探索者風の男ともう一人戦士らしき男の二人。

 そして二人に襲いかかっていたのは確認出来るだけで10匹以上のキラービーの群れ。オレが飛び出したところで一緒に始末されるだけだ。勝負にならない。申し訳ないと思いつつも、オレは木の幹で姿を隠しつつ敵が去るのを待つことにした。というか、今はそれ以外に出来ることなどなさそうだ。


 そしてそこには集団のキラービーによって惨殺された探索者風の男のパーティの残骸……装備品が残された。オレはしばらく警戒を続けていたが、キラービーの残党の気配がないことを確認して彼らがいた場所へ駆け寄る。

 既にプレイヤーたちは死亡退場済であり、そこには彼らが着用していたと思われる装備品一式が恨めしそうに残されている。パーティの同行こそ断られたが、知らない仲じゃない……とオレは思ってるので、この装備品は一式回収して後で返してやろうと思い立った。


 すぐその場で確認出来たのは探索者風の男の装備品と戦士の男の装備品。恐らく戦いながらここまで後退してきたようだから、少し奥には仲間の装備品も落ちていることだろう。ただ、あまり内部に入り込むのはオレの危険と直結する。どこまで回収しに入るかは難しい判断だ。オレは周囲を見回す。キラービーはおろか、他の魔物やプレイヤーの気配すらない。


 少しくらいは大丈夫だろうとオレは彼らが出てきた森の中へと足を踏み入れた。

 予想通り、内部は巨大な木々の生い茂った葉に光を遮られた闇の世界と化していた。時折風が吹いた際に少し光が漏れ差してくるのは、非常に神秘的な光景だ。きっと魔物の心配がなければその造形の美しさにしばらく見惚れてしまいそうなほどである。


(あれはっ!)


 《あやかしの森》に踏み入れたオレが見つけたのは、探索者風の男のパーティの装備品……ではなく、地面に落ちている『蜂蜜』であった。どうやら探索者風の男は何匹かキラービーを倒せていたようだ。だが、結局群れに襲われて倒しきれず後退しているうちに一人、また一人と仲間が倒れ、最後の瞬間をオレが見つけた。ということらしい。


 オレは探索者風の男に感謝しつつ、蜂蜜に関してはありがたく頂いておくことにする。4つ程発見することが出来たので、ブーストLV2は2つ《調合》出来る計算だ。

 早速アイテムボックスから必要数の回復薬小を取り出すと、指パッチンで《調合》をする。そこには小さな瓶詰めの輝く液体が出来上がっていた。


(おぉ!これがブーストLV2かっ!)


 と、そのときファンファーレと共にウィンドウが立ち上がる。オレの調合士LVが5に上がったのだ。(さっき4に上がったばかりだろうに?)と、これには流石にオレも驚く。と同時にオレの予想が正しかったことの裏付けにもなった。つまり……


 『調合士にとってのLV上げとは、自分のLVと比較して高レベル品のアイテムを調合すること』に間違いない。


 そして今、調合している『ブーストLV2』というアイテムは、蜂蜜の本来の(・・・)入手難易度から考えてかなり高めに設定されているはずだ。


(こりゃあLVが上がりにくくなるまで、たくさん調合しないとな……)


 まだその辺に落ちていないか……と、むくむくと欲が出始める。

 オレは《アイテム鑑定:調合士》スキルを全開にし、目を皿のようにして地面を探していく。あぁ……もちろん『スキル全開』ってのはオレの気持ちの問題なだけで効果に影響は全くない。


 すると目的の蜂蜜は全く見当たらなかったが、代わりに探索者風の男と同行していたと思われる後衛の装備品が見つかった。これでおよそ四名分だ。全員かどうかわからないが、これ以上森を探し回るのは危険な気がする。


 オレは落ちているかもしれない蜂蜜探しもやめ、一旦《あやかしの森》から出ることにして立ち上がった。とその瞬間、ピピピピっ!と嫌な音が頭の中で鳴り響くっ!


(しまった!!)


 遅いかもしれない。だが、オレは周囲を警戒して動きをとめる。辺りは暗いがキラービー(向こうさん)からは見えているようだ。

 そう……オレは全く気づいていなかったのだ。先ほどのキラービー中の一匹が、この周辺に残ってウロウロしていたことに。


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名前:ファクト

性別:男

種族:ドワーフ

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職業:調合士

LV: 5

腕力:14+ 6(STR+50%)

活力:17+13(VIT+70%)

敏捷:14+ 5(AGL70%)

器用:30+ 1(DEX+50%)

魔力: 5

運 : 7

--------------------

武器:ハンティングダガー(STR+12):即死効果50%

盾 :

サブ:クロスボウ(STR+10):命中精度80%UP:調合士装備時

弾 :ウッドボルト(STR+5)

頭 :レザーヘッドギア(VIT+2)

手 :レザーグラブ(DEX+2)

胴 :ハードレザージャケット(VIT+12):毒無効

下肢:レザートラウザ(VIT+4)

足 :ハードレザーブーツ(AGL+10):移動速度20%UP

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所持金:

 490G

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固有スキル

 調合

 アイテム鑑定:調合士

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修練スキル

 虫の知らせ

--------------------

レシピ

 回復薬小

 ウッドボルト

 ブーストLV2

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受注クエスト

 回復薬小の納品(束)

 新作武器の材料調達

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