第22話 パーティ募集
オレは再び戦士ギルドの門を開ける。
相変わらずの盛況ぶりだ。ここはプレイヤーの姿がなくなることはないのだろうかと、思うくらいだ。
(そういうとこってあるよな。どのMMORPGにも……サーバ次第だったりするが。あ、そうだ。この世界にはサーバ概念はどのくらいあるんだろうか?クローズドβレベルではないかな?正式サービス開始したら流石にあるだろうけど……)
なんてことを考えながら《あやかしの森》に向かいそうなパーティ募集がかかるのを待つ。
最悪、パーティメンバーとして迎えいれられなくてもいい。同行させてくれさえすれば……なんてことも考えるが、まだイルグラードの野良パーティ事情が分かっていないので、なんとも言えない。
まずは話してみないとな……。
「《あやかしの森》へレベル上げに行きますっ!前衛後衛どちらでも結構なので、誰か行きませんかっ?!」
きたっ!
わりと緩めのパーティ募集。これなら生産職にもチャンスはありそうだ。
オレは急いで声の主を捜す……と、すぐに声の主を見つかった。テーブル二つ向かいにいる探索者っぽい男だ。何度も連呼しているのでわかりやすい。オレはすぐに近寄ると募集をかけていた男に声を掛ける。
「すみません。《あやかしの森》に行きたいのですが、仲間に入れてもらえますか?」
すると男はオレの方を向いた。種族は人間。職業は恐らく探索者だ。
「構いませんが、職業とレベルを教えて下さい」
「LV3の調合士だ」
オレが男の質問に答えると、男の表情が険しくなる。
「……向かうのは《あやかしの森》ですよ?分かってますか?……戦闘職でも最低LV7は欲しいと噂なのに、生産職でそのLVでは流石に足手まといです。申し訳ないですが、今の話はなかったことにさせて下さい」
探索者風のその男は、オレからの声かけを無かったことにして再びパーティ募集を始めた。
残念ながら、このパーティに参加することは出来ないだろう。
断られた理由も『調合士だからダメ』といった理不尽なものではなかっただけに、参加出来なかったことは非常に残念だ。
しばらくするとメンバーが集まったのか、数名のプレイヤーと共に探索者風の男は戦士ギルドから出て行った。
(……それにしてもだ。《あやかしの森》の推奨最低LVが7だと?)
オレは浮かんだ疑問点を想定と可能性で整理してみる。
まずはクリエラが適当な事を教えたのか?もしくは本当は正しいのか?という真偽についてだ。と、言ってもクリエラ情報がいいかげんな場合は論外なので、一旦想定から外す。
クリエラによればキラービーについて『討伐推奨LVは5~』であったはずである。《あやかしの森》でエンカウントする魔物のうち、魔物の性質上キラービーという蜂の魔物が、危険度上位の魔物ではと勝手に考えていた。が、仮にクリエラの情報も探索者風の男も正しいとした場合、そうしたオレの想定がそもそもの誤りであった可能性が高い。
つまり、キラービーなど《あやかしの森》では小物扱いであり、通常はもっと危険性の高い魔物が普通に徘徊しているということだ。
そしてもう一つはクリエラの情報とオレの認識もそう外れていないが、プレイヤー達が勝手に推奨レベル基準を高めに設定し、安全方向に倒している可能性だ。
いや、待てよ……そこまで考えてオレは少し思考を止める。
本来は推奨レベルなんて情報はギルドマスターが答えるべき内容ではない……つまりいつもの『クリエラうっかり』発動で、その情報を話してしまったために本来は伝わるべきでない正しい推奨レベルが、オレに漏れてしまっているだけなのかもしれない。
もしそうだとしたら、探索者風の男の情報はプレイヤー間での現在の認識だということだ。であるなら、クリエラ情報がゲーム設定上は正しいのだとしても、男の認識を軽視すべきではない。
とはいえどちらにしても問題なのは、今オレがパーティを組めずにいるという事実だ。
ここで普段MMORPGをやるうえでオレ自身がポリシーとしている信条と改めて向き合う。
今やりたいことを後回しにして、低LV向けのレベリングパーティを組んだ上でプレイヤーに勝手に浸透しつつある『推奨レベル』に従ってゲームを進めるべきだろうか?
否。
そんな一遍通りのプレイをしていても何も面白くない。
リスクを負うことの出来るゲームだからこそ、今考え得る『やりたいこと』を最優先して進めなくては意味が無い……いや、もったいない。
そうやってこれまでもプレイしてきた。結果としてMMORPGのトッププレイヤーに名を連ねてきたが、そんなことはただの副産物である。
考えを整理する。
今はとにかく『ブーストLV2』を調合してみたい。
そのためには、蜂蜜が必要。
蜂蜜を入手するには蜂系魔物を倒す必要がある。
蜂系魔物は、《あやかしの森》にいる。
よって、今はとにかくどんな手段をとってでも《あやかしの森》に行きたいのである。
その信条に従って、オレはその後もパーティ募集が掛かる度にオレは諦めずに応募をし続けた。が、結果は惨敗。
結論から言えば、最初の探索者風の男に断られた理由は真っ当な方である。
つまり、猫に言われた断りの理由で参加出来ないことが圧倒的に多かったのだ。
「ウチはいま前衛を募集しているんだ。前衛を出来ないプレイヤーは募集していない」
「君は後衛を担当してくれるのかい?え?遊撃?探索者でもない調合士の君にそんなことが出来るわけがない。さあここに居られると邪魔だ。あっち行ってくれ」
「調合士?そんな職業あったんだ。生産職なんだ……戦えるの?ふーん。その割にLV3ね。足手まといは要らないなぁ」
「お呼びじゃないな。戦士、白魔法使い、黒魔法使い以外はお断りだ」
「そもそも戦闘経験値って、均等折半だろ?使えないヤツが入って、そいつに俺達と同じだけ経験値取られるのってムカつくんだけど?……え?役に立つ?いい加減なこと言うのも大概にしろ」
「戦闘職でギリギリの戦いをする予定だから、生産職の入る余裕はないな。すまないね」
「そもそも調合士って何が出来るのさ?回復薬を作れる?そんなん手持ちで大量に持ってるし、白魔がいるから要らないしょ。遠隔攻撃が出来る?オレ探索者だから同じ事二人もいて、オレの方が強いんじゃ入れる意味ないしょ。君はウチのパーティには要らない」
直接的な断りもあれば、間接的な断りもある。ただ変わらないのは『パーティを組めていない』という事実だけだ。
(……クソ。これじゃ猫の言う通りじゃないか)
いろいろな断られ方をした……直接的か間接的かの違いはあれど、結局のところオレが『調合士』という生産職であるからという理由に行き着いてしまうのが悔しい。
調合士であるから、戦闘職よりLVが低くてはパーティが組めない。調合士は生産職で足手まといだからパーティには要らない。こういった理由で組めないのは本当に悔しかった。猫もパーティを必死で組もうとして、同じ気持ちを味わっていたのだろう。
(結局……オレの基本となるのはソロプレイか)
そう思ったオレは戦士ギルドを出ることにした。
戦闘に関しては、少しずつ進めば勝手にLVは上がるだろうし、こないだのようなゴブリンハプニングがなければソロでもそれなりに進めるはずだ。
ただ、それでもオレには避けて通れない大きな問題があった。
《あやかしの森》がどこにあるか分からない。
もっと正確に言うならば《モルトの街》以外、どこに何があるのかを知る地図情報がないということである。
こないだは《モルトの街》が視界から外れない範囲で歩き回っていたので、ゴブリンが襲ってきたこと以外の問題はなかったのだが、目的地があってモルトの街を離れるとなれば地図は必須だ。少なくとも地形情報が無くてはお話にならない。
(今のところ、地図屋なんて見てないし……な)
戦士ギルドを出て広場でオレは立ち止まり、ため息を一つ。
自分でマッピングをしながら進めるしかないか……と思ったそのときである。
「おい!そこのドワーフの兄ちゃん。LV3で《あやかしの森》に行きたいんだってな?笑っちまう話だが、条件次第で連れていってやってもいい。どうする?」
オレに声を掛ける粗野な声が、背後から聞こえた。虫の知らせ……は鳴っていない。
期待をしすぎてはいけない……だが、オレは一縷の望みをかけてゆっくりと振り向いた。
昨夜、アップロードしたはずのお話がアップされてませんでした。これ、たまにやってしまうのはもう直らないですね(汗)
ということで、改めてアップします。
⇒昨日アップするハズだった文章を改稿してますが、んなわからないこたどうでもいいですよね……




