第204話 王都『ベル=フレッタ』
ミゲルがよくわからないほどのレア武器を手に入れてしまうというハプニングはあったが、とりあえずオレ達は無事に湖岸を行く西ルートを使って王都まで到着した。
選別?の魔物が強すぎる気はするが、西ルートの良さはその景観ではないかとオレは思う。少し王都への道をオレなりに観光案内するなら、こうだ。
まず湖岸を南下して見えてくるのは、巨大湖『セプテル』の湖面から天をつくような尖塔。塔の麓も先も霧のようなもやで霞んでいてよく見えないところがより幻想的な雰囲気を醸し出している。
そんな尖塔を右に見ながら湖岸沿いにやや東に折れると左には小高い丘陵地帯を見える。
丘陵地帯と湖の間を進むと今度は湖面に銀色に輝く立派なお城が見えてくるといったところだ。この頃には最初に見えていた尖塔がかなり後方に見えるため、尖塔が王都とは異なる場所にあることにオレ達は気づく。
あの尖塔もダンジョンなのだろうか?と考えるとワクワクが止まらない。尖塔からの景色は相当絶景に違いない。……窓があるのなら。
ちなみにここでオレはミゲルに尖塔について聞いたのだが、ミゲルの情報網にも特に情報はなかった。というよりオレと同じように王都の建造物の一つと思っていたようだ。未知のダンジョン……心が躍る。
湖岸沿いに東南方面に向かい巨大湖の小さな入り江を越えたところが、王都『ベル=フレッタ』の北だ。
この位置から王都までの間に森林地帯とまでは言えないが、やや木立が広がっているため王城は木々の奥にそびえ立つように見える。この景色も圧巻だ。
こうして様々にその姿を変化させながらオレ達冒険者を視覚的に楽しませつつ、王都はオレ達を迎え入れてくれたのだった。
「すっごい景色良かったよ!なんか王都に来ただけで満足感があるんだけど!」
エルナがいつになくハイテンションだ。
もちろんハイテンションなのはエルナだけではない。オレもワクワクが止まらないし、猫も目をいつも以上に潤ませている。
ミゲルはレア装備『炎神』を手に入れた直後からずっとハイテンションなので分かりづらい。そしてげいるもいつも通りなので分かりづらいのだが、スフィアさんだけは分かりやすく微笑んでいる。
「ねぇねぇ!少し買い物しない?ファクト行こうよ!」
「お、おぅ!うぉっ」
オレはテンション上がりまくったエルナにガシッと腕をつかまれ、街の奥へと引きずられていく。
これ、街の中でも身体能力値のSTR値とかもろ影響してんだろうな。この細腕のどこにこんな力が?と驚くほどのエルナの怪力は、図体だけはデカいオレのドワーフアバターを軽々と引っ張っていく。もはやオレには抗う術はない。
「……あとでな?合流地点は城前ってことで」
「積極的なことね」
ミゲルの呆れた声とスフィアの含みのある声に見送られてオレとエルナは王都の商店街区画へと消えていく。
「オラは……ギルドにいくだ」
「……(頷く)」
残された4名のうち猫とげいるはそれぞれの鍛冶ギルドと黒魔法使いギルドへと行くようだ。
猫は、ミゲルとスフィアに手を振りながら王都の職人街へと消えていく。げいるはいつの間にか居なくなっていた。神出鬼没だ。
「俺たちは……どうする?」
「……あなたは装備も一新したし、武器もなんかいいの貰っちゃったみたいだけど、私の装備は前のままよ?少し見てみたいわ……今いくとエルナたちとはち合わせしちゃうかもだけどね」
「……そんなん気にしてもしゃあねえだろ。じゃあスフィアの装備でも見に行くか」
ミゲルとスフィアの二人も、連れだって王都の中央へと向かったのだった。
……
「まずは武器よ!わたしは猫ちゃん製の刀もらっちゃったけど、ファクトの武器とか全く変わってないでしょ?そろそろ新調とかしてみない?」
エルナの発案で向かったのは武器屋だ。
といっても、ちゃんとした武器が欲しければ猫に打ってもらったらいいじゃないか?と思うのだが『それはそれとしてどんな武器があるか?を見たりとか、予備の分とか持ってても損はないでしょ?』というエルナの勢いに負けて、王都の武器販売店へと入った。
見るべきものがあるとしたら……クロスボウの後継くらいだろうか。
でもそんなもの売ってるんだろうか?それにオレのクロスボウには調合士装備時に特化した命中精度UPがついているので、それがないクロスボウを手に入れたところでむしろ戦力がダウンしてしまうんじゃないか……そんな風にも思う。
そこでオレはアレッと思う。
クロスボウが鷲の魔物に回避されまくったのってもしかしてそれが原因か?と思ってしまったのだ。
そう言えばクロスボウの特殊効果には『命中精度80%UP:調合士装備時』としか記載がない。そしてオレは調合士から魔導技師に昇格してしまっている。つまり、クロスボウ自体の特殊効果が効かなくなってしまっていたんでは……。
それが事実なら昇格に浮かれていたオレも悪いのだが、今持っているクロスボウを使い続けるメリットはあまりない。というか、もっと性能の良い遠隔武器に切り替える必要があることになる。
ただ、オレは修練スキルとして《必中》を手に入れているので、鷲の魔物が回避したのは純粋に鷲の魔物側の能力な気もするが。もし不安材料があるのであれば払拭しておきたいというのは素直な気持ちだ。
「さあさあ着いたよ!」
エルナに強引に手を引かれるという格好のまま、オレは王都の武器取り扱い専門店へと入った。
『らっしゃ~い!何でもあるよ!欲しい武器なんでも買ってっちゃって!』
オレ達が店内に入るとAI店員の威勢のいいかけ声が出迎えてくれる。
他にも冒険者と思われる客が数人いたが、思ったより少ない。みんな鍛冶ギルドの生産品などで賄うのだろうか。
入って最初に設置されていたのは、花形とも言える近接用武器のコーナーだ。
両手用の派手な大剣に始まり、西洋の近衛騎士が装備していそうな両刃の片手剣や槍、そして『炎神』に持ち替える前のミゲルが愛用していたようなバトルメイスも陳列されていた上、なんとエルナの持っているような和風の刀まで数多くの武器が所狭しと置かれている。
猫を連れてきていたらいろいろ分かったのだろうけど、鑑定を使ったところでオレには武器の名前しか見えないので、商品として置かれている武器の本当の実力は装備してみないと分からない。
ただ……どちらにしてもオレには近接武器は不要だと思う。
随分前に雑魚の盗賊から奪った短剣『ハンティングダガー』が、未だにオレの現役の近接用武器である。しかし、エルナと組んでいるせいかこのダガーの出番は一切ない。
基本的にオレは遠隔攻撃しかしてないので、ずっと腰に差したままお蔵入り状態なのだ。
確かダメージが入ったら即死させるという追加効果が50%もあるので本来は非常に強力な武器なはずである。しかしエルナの通常攻撃の方がよっぽど強力だろうと思ってしまうほどに、今はその効果に必要性を感じていない。
それに即死状態効果なんて耐性を持った敵がわんさか出てくるんじゃないか?これから。
大体RPGの即死効果攻撃だなんて、雑魚にしか効かないことで有名じゃないか。某ドラ○ンク○ストのとある神官のように、即死魔法ばかり唱える使えないAIキャラ……のようにはなりたくない。非力なオレの職業にとって序盤は強い味方だったが、この先は恐らく頼れないと考えて間違いないだろう。
そんなことを考えながら、オレは最も興味のある『遠隔武器』コーナーに向かった。エルナもニコニコしながらオレのあとを着いてくる。
オレにとってその後の主力となった遠隔武器との出会いは、こんな感じだった。




