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イルグラード(VR)  作者: だる8
第五章 イルグラードの夜明け
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第194話 白虎

 鍛冶に集中したいからと工房を追い出されたエルナたちは、エルナの薦めで戦士ギルドの施設である『道場』へ行くことにした。

 ガドルの作業にどのくらい待つのかは分からないが、空き時間を有効(あそび)に使える上に完成連絡が来た時に工房へすぐ戻る事が出来るというのが、エルナのオススメの最大の理由だ。


 ただ『道場』は戦士ギルドの施設であるため、原則として戦士ギルド所属……つまり戦士系列の職業でないと利用できない。だが、これには例外がある。

 戦士ギルドは調合士などとは違い、上位職資格取得のために複数の基本職クエストをクリアする必要があることが多いため、上位職への『クラスチェンジ資格』条件をクリアする目的であれば系列職業以外でも利用出来ることになっている。


 それを戦士ギルドのスタッフ説明で知ったミゲルとスフィア二人に火がついた。時間を潰せるお遊びとして誘ったエルナであったが、エルナにとっては予想外の展開である。

 そして……二人が昇格資格として選択したのは『騎士』と『聖騎士』……当然ミゲルが防御特化の『騎士』である。


 元々魔法職への希望が強かったスフィアは少し悩んでいたのだが、どちらにしても『聖騎士』になるためにはここ戦士ギルドの条件だけでは昇格出来ないことを知り、取り合えず条件の一つをクリアしておくだけなら……という名目で、道場に向かうことにしたというわけである。なお、本当に『聖騎士』になりたい場合は白魔法使いギルドでも条件をクリアする必要がある。


 早速、道場のムキムキスタッフと遊び始めようとしたエルナであったが、ムキムキスタッフにそれを制止される。ミゲルやスフィアのように資格取得クエストの冒険者(プレイヤー)がいる場合は、どうやらそちらが優先されるようだ。


「えぇ!じゃあわたしは折角来ても遊べないの?」


 と、あからさまに不満そうな声を上げるエルナだったが、ムキムキスタッフ以外の道場キャラがこのメンテナンスで実装されていたようで、そちらで遊べると聞いたエルナは分かりやすく機嫌を直した。


そなた(エルナ)との対戦は(たぎ)るが、仕事もしなくてはならんのでな』


 という、ムキムキスタッフの言葉に奮起したミゲルは、なんと3回のチャレンジで見事に『騎士』への資格を得ることが出来たのだった。


 もちろん『騎士』資格は特定スキルを得るというエルナの『剣士』とは異なる。

 『騎士』資格は、LV30ムキムキスタッフによる攻撃を試験用の貸与(レンタル)盾で一定時間ノーミスでいなし続けることが出来るかどうか?というクリア条件であった。

 そのため、盾術を得意とするミゲルには好都合な条件であったのもクリアが早かった要因でもある。


 そして……ミゲルは見事に『騎士』への資格を得て、この短期間で昇格(クラスチェンジ)を果たしたのだった。


「ミゲル、凄いじゃん!これわたしじゃ絶対にクリア出来なかったよ……」


 エルナの脳裏には、自分の目の前でさっさと『騎士』カードを除外した戦士ギルドマスターのアテナの姿を思い出していた。アテナ(マスター)の分析に誤りは無く、エルナは『剣士』で良かったようである。


 そしてスフィア。


 白魔法を使う戦士ということで『聖騎士』しか選択が出来なかったのだが、白魔法使いが『聖騎士』を取得するために道場(ここ)で必要な技能は『LV20の平均的な戦士として充分な白兵戦がこなせる』ことであった。


 普通は、白魔法使いとして後衛を続けてきた冒険者(プレイヤー)にとって非常にハードルが高い条件である。

 しかも剣や棍棒などの武器を扱ったことのない者も多く、スフィアもそれに該当する。


『剣や棍棒などの武器を使わなきゃいけないわけじゃない。一定レベルの白兵戦が出来れば良いのだ』


 というムキムキスタッフの話を聞いたスフィアは、ホッとした顔を見せてLV20のAI戦士を相手に戦闘に挑んだ。武器は使わずとも格闘術を奥の手として持っていたスフィアにとって、並レベルのAI戦士を相手にソロで戦うことはそれほど難易度の高いことではなかった。


『おぉ!格闘か。もともと何かやっていたのか?』


 俄然、やる気を見せたムキムキスタッフは、スフィアに『LV30での格闘をしないか?』とラブコールを送った。が、「資格取得が終わったらわたしが遊ぶ約束でしょ?!」というエルナの声に阻まれてしまうことになり、ちょっと残念そうではあった。

 それでもエルナとの対戦(おあそび)が始まると気分が乗ってきたようで、二人の戦いは二度、三度、四度と繰り返す度に激しさを増していった。


「あんな戦いは私には出来ないわ。AIスタッフの誘いに乗らず、止めといてよかったわ」というのは、スフィアの談である。


 エルナが調子に乗って剣で遊んでいる間に、ミゲルはギルドの施設で昇格(クラスチェンジ)を済ませてきた。

 そして再び道場に戻ってきたところで、ガドルから装備完成連絡がきた。


 イルグラード時間でおよそ三時間経過した頃のことである。


 連絡を受け、ムキムキスタッフとの遊戯もそこそこにガドルの鍛冶工房に戻ってきたエルナ達。

 三人の姿を見てガドルがニコリと猫の笑顔を見せる。今にもニャーと鳴き出しそうな雰囲気ではあるが、ガドルの口から発せられたのは普通に冒険者(プレイヤー)としての声だった。


「いろいろつくったど。まずはエルナさんの装備を見てほしいだよ」


 と言って、ガドルは工房に設置されている鍛冶用の設置型アイテムボックスから装備品を取り出すと、エルナの前に並べていった。


 まず目立つのは二振りの刀。

 そして、脇に明らかに和装を意識した装備品が置かれていく。


「これ、これがわたしの?」

「んだ。こっちの長い方……打刀は今まで使ってたのを強化して打ち直しただ。銘も入れただど。で、こっちの脇差は新しく打ち直しただで時間掛かっただが、お陰で良いのが出来ただよ」


 エルナは目の前に並べられた二振りの刀を手に取る。

 銘が入っているとガドルが言ったのを思いだし、刀身を見るとそこには『白虎』という文字が彫り込まれていた。


「白虎?」

「んだ。オラは虎だど。だから虎に(ゆかり)のあって歴史ある銘にしただ。正宗とか村正、兼定のような普通の名刀と同じじゃ面白くないだ」


 と、猫顔のガドルがドヤ顔?のような表情をしてみせる。どう見ても虎というよりは猫で間違いないのだが。

 あとで聞いた話だが、銘は鍛冶のシルバーマイスターの頃から設定出来たらしいのだが、一度決めると変えられないので納得いく名前をつけるためにしばらく悩んでいたらしい。


「んだ。白虎印の刀、二本とも特殊効果がついてるだよ。前の脇差についていた《無心》はつかなかっただが、充分使えると思うだ。純粋に武器としても強化されているだよ」

「ありがとう!今度こそ大事に使うよ!」

「壊れたらまた打つだ。普通に使ってくれていいだよ。あと防具も出来るだけ強化出来るように造ってみただ。で、あとは……盾だ」

「おぅ!」


 ガドルから装備品一式を受けとったエルナと入れ替わりにミゲルが前に出る。


「最初に消耗品になるカイトシールドだ。材料があればいつでも造れるだが、三枚ほど渡しとくだ」


 そう言って、例のアイテムボックスから鋼鉄製のカイトシールドを取り出してミゲルに渡していく。特に何の変哲も無いカイトシールドではあるが、AI武器店で売っているカイトシ-ルドより良さそうに見える。「同じだ」とガドルは言っていたが。


「で、これがミゲルさん用の盾だ」


 そう言ってガドルが取り出したその大盾は、表面が鏡のように磨き上げられて反射する美しい盾であった。盾を見て驚いたのはミゲルである。


「ミ、ミラーシールド??」

「?……そんな盾はないだよ?これは聖銀(ミスリル)で造った大盾だ。オラの分もあるだよ」


 そう言ってもう一つガドルは聖銀(ミスリル)シールドを取り出して見せた。


「お揃いだ。盾についてるスキルは違うだども」


 ガドルは自慢気に胸を張って見せた。


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