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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
キシミア編
96/318

牢獄と報酬2


 

「酷い目にあった……」

「お勤めご苦労様です! はいお水ですよー」

「ありがとうございます……」


 漸く戻って来た治癒神友の会仮拠点の診療台で伸びあがる。ここに戻って来るのは数日振りだ。

 空はもうすっかりと暮れていたが、街の人々の動きは活発である。何せ東部地区の三分の一がカルミエの光魔法で吹き飛んでいるのだから、復旧には全力でも数年を要するだろう。しかし流石に働き詰めではやる気も削げるというもの、無事であった第一商店街の裏手へと消えて行く労働者の姿は多い。


「一時はどうなるかと! 我が神なんて動揺しちゃって『誰を殴ると解決するの?』とか言い出す始末で!」

「我が神、脳筋すぎません?」

「だって、急に連れて行く、とか言い出して、意味わかんないから」

「まあ解決しました。今は神エーヴが、しっかり教育しているところでしょう」


 どうやら、元帥閣下は神エーヴの遠いご親戚であったようだ。キシミアにも何度か足を運んでいたという。元帥閣下は『神エーヴが気に入ったものなら立派に違いない』として、早速所有権を主張、出し抜くつもりでいたらしい。


 なお、尻叩きは一〇〇回に及んだ。イナンナーの女帝学は苛烈である。


「毎度ですが、グリジアヌは……たぶん手伝いですよね」

「はい! 材木の切り出しに出かけて行きました。本当に精力的な神様ですねえ」

「ヒナは上ですね」

「大事無いよ。足も治した。あとは生命力が、ちょべっと減ってるから、食べて寝て回復」

「良かった」


 大偉業を成し遂げた彼女が無事である事が、何より安堵出来る報告だ。色々話さなければいけない事はあるが……今は寝かせておくべきだろう。


「今後、キシミアはどうなるのでしょう?」


「一先ず、派遣軍の手を借りて復旧作業でしょう。キシミア守備隊が……その、消失しましたので、キシミアの警備も派遣軍頼みですね」


 そして、キシミアは今後、新しい脅威に直面するかもしれない。


 この土地は特殊であった。しかし埋没樹が大人しくなり、木炭化石がほぼ無力化したとなれば、それを嫌っていた大帝国が動き出すかもしれない。竜精が竜支卿以下にどう伝えるかは不明だが……今まで以上に不安定になる事は間違いないだろう。


 そんな話をしていると、リーアの目が泳ぎ始める。


「我が神、どうされましたか」

「え、う、うん。なんでもない」

「ふむ? エオ嬢、我が神は何か、悪いものでも食べましたか?」

「はて? 守備兵さんに貰ったお供え物ぐらいですかね?」

「守備兵? どこの?」

「あ!! いや!! じょ、城壁の守備兵さんです!!」


 これは、怪しい。ジッとリーアを見つめる。暫くにらめっことなったが、リーアは気まずそうに顔を背けた。


 まさか、いや、まさか……。


「う、嘘でしょう、我が神。やらかしたのですか」

「うっ……」

「死んだ兵隊は三〇〇人ですよ……? な、何人生き返したのですか!?」


「光魔法で犠牲になったヒト、黒竜に踏み潰されたヒト、詰め所で爆死した兵隊さん、発狂して頭がおかしくなって脳が弾けたヒト、小黒竜化してたヒト、小黒竜に食べられたヒト、で、たぶん、六一二人」


「……――――――…………」


「よ、よーちゃん?」


「……――あ? ……が……え、ええ――……?」


 脳が混乱し、絶句してしまう。

 つまり、今回の事件での死者は……ほぼゼロ、となる。


 これだけの事が起こり、街が一部消し飛ばされ、兵隊も消え、北城壁街の黒竜散乱の被害があって……それが、ほぼ、無くなってしまった事になる。


 そんな大規模な『大奇跡』マズすぎる。ヤバすぎる。言い繕えない。ヒトの口は塞げない。


「ド、竜精ドラゴンメイドが観ていたら!! どうするつもりなのですか!?」

「よ、ヨージさん落ち着いて」

「落ち着けるものですか。というか、エオ嬢、蘇生の奇跡、知っていたのですか」


「あ、うー……。その、我が神が、ふらふらーっと歩き出して、何するのかなーって見ていたら、死体がむくりと起き上がって!」


「た、大量の兵隊は?」


「そのままふわふわーっと街の中に入っていったなーと思ったら、両手をあげて。『えいー』って。そしたら、何もない所からポコポコと」


「えいーって……えいーって……」


 そう、それが不味い。肉体があったのならば『凄い治癒の力でしょう!!』で押し通せたかもしれない。だが、肉体の消失した兵隊達まで蘇らせている。そも、あの時残っていたのは魂だけだ。その魂とて、カルミエによって根幹魔力帯パルスラインの掌握の為の生贄に捧げられた筈である。


 ほぼ無から、ニンゲンを作り上げたという意味だ。

 そんなもの、神をとっくに超越している。


「……――あの時、竜精が僕へ挨拶に来ました。フィアレス・ドラグニール・マークファスの妹、ミーティム・ドラグニール・フィスルフィアです。姉は黙っていた様子ですが、魔力感知の得意なミーティムに悟られたそうです。つまり、僕と我が神の異常性についての認知は、既に竜精一匹に留まってはいません」


「あの、蘇生って不味いですか?」

「ま、不味いなんてものじゃあありません。そんな事が出来るのは竜ぐらいなのですよ」

「えー! じゃあ我が神、竜だったんですか!?」

「そ、それは違うでしょう。違います……たぶん……しかし……本格的に、我が神の出自が……」

「……――ごめんなさい」


 シュプリーアという神の出自。これは、既に触れて良い領域の話ではないのかもしれない。


 間違いなく、ただの神などではない。どこか尊い血族の子だ。

 竜ではない、としたいが……竜精か……竜本体の落とし種……という線も見えて来る。


 何のリスクも背負わず、大量死したニンゲンを一から蘇らせるなど、それこそ十全皇ですらしない。いや――出来ない。


 十全皇は蘇生にしても媒体を必要とした。思い出したくない事柄だが、時鷹を戯れに蘇らせた時は、彼の髪を使っていた。


 だというのに、シュプリーアは……恐らく残った情報……厳密に言えば、ニンゲンには察知しようのない、極小の固有魔力と、それに付随する個人の魂の色だけで、蘇生させたのだ。


 更に言えば、今キシミアを根幹魔力帯パルスラインが通っていない。一番近い根幹魔力帯パルスラインであるキシミア帯から魔力を引き上げたのでないとするなら……一体どこからその膨大な力を持って来たのか? 風に乗って流れて来る外在魔力マナでは不可能も過ぎる。


 もはや因果を無理やり捻じ曲げている、だけでは済まされない。

 不思議でも不自然でもない、不条理、理不尽の類だ。


「……みんな、みんな、喜んでくれたの。よーちゃんが来るまで、ここ、兵隊さんと、その家族さんでごった返してて……みんな嬉しそうで……だから、悪い事じゃないんじゃないかって……調子に乗って……」


 部屋の脇に堆く積まれたお供え物の山を見る。食べ物、飲み物から、高価な宝飾品まで、さまざまだ。治癒の対価にしては多すぎる気はしていた。


「僕との約束は、守ってくれないのですね――いや、僕も守っていないか」

「あ、う……」

「少し出ます。疲れているでしょうから、早く休んでください」


 失望は無い。悲しみも無い。約束を破られたからと、嘆く事も無い。


 ただ、ひたすらに心配なのだ。別に、有象無象が死のうが生きようがどうでも良い。蘇生などという結果に齎される大きな流れに、彼女が巻き込まれてしまうのではないかという、不安だけがある。


 自身の出会う女性というのは、誰も彼も只者ではなかった。富豪から貴族から王族、果ては神から竜精から……龍まで。一体何がそうさせるのだろうか。既に自身の縁が自身によって決められてはいないのではないか、という疑問はあったが、今回の事で更に自覚した。


 何かがある。自分は、何かに向かわされているのでは、ないか。


「む、盛況だな」


 ふらりと外へと出て、商店街裏の娼館街に顔を覗かせる。表通りが皆吹き飛んだ所為か、裏手にある鯨の髭亭はいつになく活気あふれていた。中を見ると、その喧騒が兵隊によって作られたものだと分かる。


「おお、大英雄殿!! 皆、見ろ! キシミアの刃がご来店だッッ!!」

「その二つ名いやだなあ……」


 扉を潜った瞬間、女性兵士に腕を引っ掴まれる。誰かと思えば、城壁外で検問をしていた女性だ。城壁に居た時は随分と睨まれたものだが、今は厳めしい顔も無く笑顔である。


「キシミアの刃よ! よくぞよくぞ!」


「あの黒竜の大群をバラッバラにしていったのをお前等は見たか? アタシは見た! ありゃあもうニンゲン技じゃあない!」


「俺ぁ見たぜ。この方がでっかい黒竜をぶっ倒すところを! あんなもん、神話かおとぎ話かと思ってたが、いやあ、本当に居るんだよ、ココによッ」


「まさしく、悪徳ファブニール・強欲マレフィクスを退治した英雄そのものだ!」


「あ、あはは。皆さんご壮健で何より……ま、ま、呑んでください」

「キシミアの英雄に!」

悪竜殺し(シグルド)の再来に!」

『乾杯!!』


 ガハハ、ゴホホ、と物凄い勢いで皆が酒をあおり始める。明日の朝には酒臭い屍の山が出来上がっているに違いなかった。ヨージは愛想を振りまきながらなんとかカウンターに辿り着く。


「衣笠さん! 収監されていたって聞いたけど、釈放されたのね?」

「アリナ氏。いやあ、何か情報の行き違いがあったようで。ええ、この通り無罪放免です」

「全く、本国の女って怖いわね! いい男と見たら直ぐひっとらえるんだから!」


「あ、隠す必要もないカンジなのですね……まあそうです。元帥閣下は、どこぞのお嬢様だったようで、世の中を知らなかったみたいで」


「そうでしょうねえ。日々何でも言う事を聞く良い男に囲まれて暮らしているそうだから! ま、呑んで呑んで! あ、当然お金は要らないわ! 英雄からお金は取れないものッ」


「では遠慮なく、キツイのを一杯。おつまみは、乾燥豆で良いです」

「謙虚ねえ。衣笠さんの百分の一でも兄貴に見習わせたいわ?」

「ボーグマン氏は?」


「外でお墓をみてるの。身体はバラバラで判別し難かったけど、持っていたものが知り合いのものだったんですって。あ、はいこれ。ウィスキー。だけど、加水してないから、度数が七〇を超えるわ?」


「え、エグイの出すなあ……」

「酔ったイケメンも見てみたいし?」

「さ、左様で……」

「酔っぱらって眠くなったら、上の部屋を使って良いから。左奥ね?」

「おいアリナちゃん。それアンタの部屋だろ」

「あ、バレたかしら。キャハハッ」

「て、テンションが高い……」


 皆の街の一部と財産は吹き飛んだが……そう、あの規模の災害にして死者が片手で足りる可能性がある。故に弔う必要はほぼ無く、ただ復旧に従事する活力だけが有れば良い。


 リーアの行いは、直ぐに広まるだろう。どうにか、言い訳を付けなければいけない。となると、やはり頼る先は神エーヴとなる。幸い、兵士達がどのように死んだのか、細かな説明はまだされていない。ならばギリギリ誤魔化せるか。そもそもあのような大量蘇生、信じろと言ったところで誰も現実には受け止めないだろう。


 神エーヴとの協力あって初めて齎される、キシミアの奇跡……いや、そもそも兵隊達は死んでなど居らず、カルミエによって空間隔離されて、神隠しにあっていたのだ。我が神がそれを解除、兵士がポコポコ湧いてきた、という理屈でも付けた方がいいか……。


(もはや考えるのも馬鹿らしいくらいの大奇跡だ)


 ……解っていた筈だ。彼女はヒトを癒す事を止めない。彼女の痛みを取り払うには、癒すしかないのだろう。一体どのような力で、どうして宿してしまったのか……疑問は尽きない。尽きないが、疲れた身体に思考は辛い。


「うっ、きっつ……はあ。もう一杯」

「まあ、いけるクチ。はいどーぞ!」

「僕もお参りしてきます。ボーグマン氏は裏手ですかね」

「ええ!」


 受け取ったコップを手に、カウンターから捌けて店の裏口から外へと出る。小さな裏庭のような場所に、デカイ図体のボーグマンが腰かけて、一人で酒をやっていた。


「ボーグマン氏」

「あ、おお。ヨージか。いや、話は聞いたぜ。ほんと、只者じゃなかったんだなぁ」

「はい。望んだものではありませんがね」

「……エルフってのは、大変でやがるな」

「ご友人のお墓だとか」

「ああ。神グリジアヌが、小黒竜の掃除してただろ。そん中から出て来た」

「良く友人本人だと分かりましたね」

「頭だった。ちょっと融けてたがよ、イヤリング、これ、アリナが作ってプレゼントした奴だ」


 穴を掘り、土を盛り、墓標を立てただけのものだ。

 そう、死者はほぼ居ない。だが、黒竜の素材となってしまったものは、その限りではないのだろう。


 これは……ディアラトの墓だ。


「隣失礼しても」

「おう」

「アリナ氏には、黙っているのですね」


「あんまり、辛い目には合わせたくねえんだ。ディアラトのバカは、今もどっかで生きてるって思ってれば、それは少なくとも、アイツにとって死じゃねえ。都合良く、手前が、アイツは先に逃げたって言ったろ。それ信じてりゃ良いんだ」


「……それが良いでしょう」

「……――顔は溶けてたがな、頭に、傷があったんだ」

「……」

「あれは相当鋭利だ。扶桑人の使うもんだな」

「流石元軍人。分かりますか」


「話してくれるか。アンタを責めるつもりなんてこれっぽっちもねえ。だが……だがよ、幼馴染が、どうやって死んだかぐらいは、知っておきてえんだ」


「この度の事件の秘密に関わります。黙っていられますか?」

「黙る」

「そうですか」


 ヨージは自分の視た事、した事、最期にどのような話をしたのかについて、語る。

 ほんの数十分の出会いと、別れだ。語る事は多くない。


「まさかそこまでバカだったとはよ。驚きだぜ。迷惑かけたな」


「彼は自身のプライドに殉じました。男らしいといえば、確かに男らしい。それに、彼が黒竜化しなくとも、他の誰かがなったでしょう。全てが彼の所為ではない」


「良いんだ。アイツは、昔っから、馬鹿でよぉ。抑えの利かねえ奴だから、俺とアリナが殴りつけて止めたり、してたなあ。いたずらも、喧嘩も、万引きもした。どうしようもねえクソガキだったぜ、俺とアイツは……」


「スラムの子ですからね、そこはどこも変わりませんよ」


「環境が悪かったと言っちまえば、それまでだが……ああ、俺とアリナな、兄妹とは言ってるが、育ての親が同じだけで、本当の親は知らねえ。お互い娼婦と客の間に出来たガキだ。そういう意味じゃ、ちゃんと家があって親が分かるアイツが、羨ましかったってのは、あるかなあ……――って、なんで手前に思い出話してんだ、俺は」


「良いじゃないですか。これも弔いですよ」

「……そんなもんかい」

「軍隊に入って、どうするか、そういう展望はあったのですか」


「若かったってのもある。イナンナーのクソ常識を知らなかったってのも、ある。ただ、アイツと背中を預けて戦ってる間は、生きてる気がしたんだよ。どんなクソッタレの産まれでも、魔法と銃弾飛び交う中じゃあ平等に動く肉の塊でやがる。敵本陣吹っ飛ばして笑い、味方本陣のクソ女が吹っ飛んで笑う、そんなクソのクソみたいな、楽しい楽しい場所だったぜ」


「後悔は」


「戦争については、何もねえ。ただ、戦後アイツを引き留められなかったってのは、多少な。結果これじゃあ、笑うに笑えねえや。バカだよぉ手前は本当に……」


 数少ない、価値を共有した友を失ったのだ。悲しくない訳が無い。例え薄汚れた人生だったとしても、輝いて見える過去は誰にでもあるものだ。ほんの少し、ほんの少しだけでも、別の道を歩んでいたのならば、彼がココに眠る事は無かっただろう。


 一番の間違い。致命的な失敗。あの女、カルミエというバケモノに目を付けられた事だ。

 計画を破綻に追い込まれ、さぞ悲しい事だろが、アイツは生きている。ヨージが殺したのは、数多と居るであろう人造生命体ホムンクルスでしかない。


 是非責任を取らせてやりたいが、もう二度と関わりたくない相手である事は確かである。


「もし、彼を蘇らせる事が出来たならば、貴方はしますか」

「ああ、手前の神様の話か。死んだ守備兵が蘇ったとか」

「結構広まってますね」


「有り得ねえ。手前の言うカルミエとかいう女がどっかに隠してて、神さんが治癒してる最中に出て来たんだろ。で、大盛り上がりって訳だ。ああ、本当に復活出来るとしても、そんなもん、やっちゃいけねえと俺は思うよ」


「馬鹿な話をしました。これ、ディアラトに」

「あ、この酒、俺のじゃねえか。アリナの奴……」

「僕は失礼します。人生辛い事は色々ありますが、頑張って生きましょう」

「手前に比べりゃ、大体の事が小さそうだけどな」

「ディアラトは」

「あん?」

「最期まで、アナタ達兄妹を心配していました。二人だけは、逃がしてくれと」

「――……そうかよ」


 すすり泣く声がきこえる。ヨージは後ろ手に手を振り、鯨の髭亭を後にした。


 ヒトは産まれ、ヒトは生き、その間に紡がれる小さな歴史が積みあがって、世界は成る。終着点がどのような非業の死だろうとも、それは世界を作る一要素なのだ。蘇生など、復活など、本来行われるべきものではない。


 有象無象が死のうが生きようが、それは良い。だが、非常識が常識を上回るような出来事が繰り返されて行けば、自分達ではきっと手に負えない状況に陥ってしまう。


 どうにか自分が治癒神友の会を去るまでの間に、シュプリーアという神、らしき何かをしっかりと教育しなければいけないだろう。


 ……いや、もし、それこそが傲慢であった場合は……?


 頭を振る。ボーグマンが言うように、世界はクソッタレかもしれないが。それでも、今の世界はきっと悪くないのだ。今更、世界を神話に戻す必要など、有りはしない。


 シュプリーア。彼女は、いったい何なのか、誰なのか。

 主依代の探索は……もしかすれば、不可避かもしれない。


 例え主依代を見つけた結果に、ヨージの手に負えないものがあったとしても、何も知らないままでは、本当に、どうしようもなくなるかもしれない。知れるならば、知るべきだ。


「はぁいヨージー」

「……」

「なんだ、むくれっ面で。美少女女神様が声掛けてんだろ嬉しがれ」

「酔ってますよね」

「ったり前だろぉ? 今日酒呑まなくていつ呑む?」

「で、何故腕を絡めるのか。そして、引っ張るのか」

「いいトコロ連れてくんだよ。はい、ゴー!」

「イダダダッッ!! 力! 力強すぎ!!」


 真面目な事を考えていた筈なのだが……酔っ払いには、敵いそうにない。



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