深緑を往く7
翌日。主依代探索が開始された。期間はおよそ二週間ほどを目途としている。エイルーンの雇用期間の限度だからだ。別にそれ以上探しても構わないのだが、森の案内役と主依代の神当人が二週間も歩き回って見つからないとなると、『無い』と判断するしかない。
人手は多い方が良い。だが案内役は一人しかいないので、ローテーションを組んでの探索となる。
初回は下見も兼ねてリーア、ヨージ、エイルーンの三名となった。
「まず手荷物の確認を。そちらの小袋に分けてあるものが、クサムラワシの糞が主成分の狼煙です。火をつけると大量の白煙が上がるので、目印となります。そちらの葉で包まれたものは臭玉です。四つ足がとても嫌うので、緊急時には開封して投げつけてください。嫌でないならば、自分の服に塗ると良いでしょう。臭いですけど。そして別の大袋に入っているものは樹石結晶ですが、とても小さく砕いてあります。またわたしの魔法を込めてあるので、撒きながら歩けば道しるべとして機能するでしょう。そちらの白い棒は謂わばチョークです。木に印をつけると発光するのでとても目立ちます。あとは儀礼用の素材ですが……使い方は説明書を同封したので、ご覧ください」
エイルーンがずらずらと説明する。森の中で一人になってしまった場合、何を使い、どうするべきかについてだ。驚くべき知識量と経験則に基づいた語りは、まさしく一流である。
「とはいえ、お二人はエルフと神様ですから、森の中でも平気でしょう」
「貴女の導きがあってこそです。確かに僕達の命は無事かもしれませんが、森から出られる保証がありませんね。我が神も、はぐれないようにお願いします」
「んー」
森の入口として機能している小屋で入場手続きを済ませる。東端入口部分は観光地化しているが、ここから先は首都で許可を貰わなければ侵入出来ない場所だ。そして手続きを済ませる事によって、予定通り戻らない場合、捜索隊が組まれるようになっている。
「エイルーン。このヒト等が総合統括庁からの?」
「はい」
「若い神と、東国エルフねえ。なんだってここに。特に東国エルフがどうして我等の森に……」
「ストップ。カガナラ、ストップ」
「なんだよ」
「貴方の首をまだ繋げていたいのなら、余計な事は言わないでください、本当に、お願いします」
「――そ、そんなオエライなのかい」
「竜精公の知人です。死にたくないなら黙って」
「ヒッ……ッ! しし、失礼致しました……ど、どうかご無礼をお許しください……」
小屋の管理人、見事に飛ぶように跳ね上がり、頭を地面に突っ伏した。そう、そのぐらい竜精公というのは、彼等大樹を尊ぶ者にとって強烈な存在なのだ。普段から変なヤベー奴等、としてしか接していないヨージからすると、なかなか新鮮な光景である。
「よーちゃん、ユーちゃんとフィアちゃんの、友達って事になってるの?」
「友達……友とは呼べないでしょうけど……積極的に迫られているのは事実ですね」
「ゆ、ゆーちゃん? フィアちゃん? ど、どちらさまで?」
「ユーヴィル竜精公と、フィアレス竜精公です」
「あ、あ、あ、あ……お、お目通りしたとか、そんな話では……ない?」
「今度フィアレス竜精公とデートする予定なんですよ、ハハッ」
小屋の管理人は理解が及ばなくなったのか、目をグルグル回しながらぐったりと地面に伏した。
あの怪物達も、やはり場所によってはこのような扱いなのだろう。是非彼女達が、一般市民にふんぞり返って偉そうにしているところを見てみたい。
「お兄さん、大丈夫、大丈夫ー」
「あ、なんか暖かい……暖かい……」
「エイルーン女史、行きましょう」
「その……昨日も思ったのですが、シュプリーア様の奇跡はまさか……」
「治癒です。治癒神友の会という名前でしょう?」
「ち、治癒……い、イルミンスル様の、ご近縁ですか……?」
「どうやら違ったようです。ここに来る前は首都でひと悶着有りまして……まあ道すがらお話しましょう」
その説明は主依代探索の話にも繋がるだろう。
もし、この世にも稀で強大な能力を保有する神の依代が存在するとなれば、そんじょそこらの依代ではない。数万年前から讃えられる大磐座、樹齢が計測出来ないほど長生きな神木、もしくは、森林地の土地の一部そのものが主依代、という事も考えられる。
グリジアヌは元は浜辺を主依代とした神だ。一地域の一部分の支配者であれだけの力を有するのであるから、シュプリーアクラスとなれば、どれほどなるか、想像もつかない。
「探索の目安となるものはありますか」
「そうですね。この土地で崇められる大木や磐座、土地そのものが神聖である、とされるような場所を目指して貰えますか」
「幾つか心当たりがあります。下見という事ですから、距離的には磐座が一番近いかと」
「お願いします」
「では、ご案内します。お二人は身軽でしょうから、少し足を速めますね」
そういってエイルーンが道なき道を飛ぶように歩き始めたので、ヨージもそれに従う。我が神はそもそも浮いているので高低差は関係なかった。
緑の深い匂いが辺りに立ち込めている。足の踏み場もない程木と蔦と草と苔が埋め尽くした大地だ。道らしきものが見える場合、大体が大型生物の通り道であり、危険極まる為、避けるのが基本となる。
古鷹佐京に師事をあおいでいた頃、ヨージは着の身着のままで森に放置された事がある。どんな強者であろうと、生きる手段を持たないものは自然の餌食だ。石を割って枝に括り斧を作り、木と草で雨風を凌げる拠点を作り、食料を得る為に槍を作り、弓を作り、火を起こす為の材料をかき集め、糧を得る為に四苦八苦する。これでまず最低限だ。
文明の恩恵に与る現人類には、あまりにも厳しい。雨に濡れれば体温を奪われ、体温を奪われれば体力と免疫力が減り、小さい傷から感染症を引き起こす。そうならない為に拠点を編まねばならないが、刀を振って鍛錬した筈の手は、斧で木をこるという作業ですり減り、血マメが弾けて流血、腕も筋肉疲労で上がらなくなる。
そんな腕に掛かってくれる獲物はおらず、上がらない手では木々や草花を摘み取る事すら困難となる。更に糧を得る為には歩かねばならない。靴に慣れた足は地面に擦れて悲鳴を上げ、歩く度に激痛が走る。雑草に足を取られてすっ転び、また余計な傷をつくる。
古鷹佐京が迎えに来たのは、二週間もたった頃であった。
『――魔法は力である。力であるが、己そのものとは言えん。心身すり減り、魔力も無くなった時、最後にどう足掻けるか。それが死活を分かつ。間違いなく、今の貴様は雑草以下だ。保護されねば生きる事すら敵わぬか。貴様はなんだ。観葉植物か』
『……――くたばれ、クソ爺……』
『呵々ッ。いやいや。殺すつもりでおったのだがな。生きているならば重畳』
思い出すと腹が立つ。立つが、確かにヨージは魔法無しでいれば、本当に平均程度のニンゲンなのかもしれない。
武魔一体の剣術において、片寄りとは忌むべきものだ。それを教える為に、あのような事をした。とはいえ、度が過ぎたのか、あの後古鷹佐京は十全皇に怒られたという。
当時はざまあみろ、とも思ったが……あの男が十全皇のお気に入りを死ぬような訓練につかせてどうなるかという事を、考えない訳もない。例え自身の命を失おうとも、弟子にはすべてを教えるのだと、そう考えたのだろう。
あれは扶桑最高の武人だ。剣術だけならば、まず勝てる気がしない相手である。
また用兵にも優れた指揮官だ。軍人としての能力の違いは、火を見るよりも明らかと言えよう。
「よーちゃん、どしたの」
「昔の事を思い出していました。僕の師匠の事です。森の中で襲ってきた、アイツの師でもある」
「強いの?」
「化物ですよ。陰険ですけど、偉大な人物だ」
「そのヒトが、あの、ソーヨー? を送り付けたの?」
「さて、アレの腹の中など、龍同様分かりません。出会ったら殺し合いになるのは間違いありませんが、僕は嫌いじゃあありませんよ」
「難しい感情」
「そんなものですよ、武人なんて」
「あの、ヨージさん」
「はい」
「ヨージさんは、軍人だったのですよね。何故、宗教者に?」
「全部嫌になって逃げて来たのです。そしてこの方に拾われた。治癒神シュプリーア。大奇跡を抱く、本物の治癒神です。そんな方の主依代ですから、恐らく大きなモノであろう、というのが予想なのですよ。我が神、何か懐かしい気配や神気などは感じられますか?」
「ううん。全然」
「もう少しで大磐座です。依る神もないものですが、古代守人の時代から、拝まれていたものですね」
神がどのように発現、顕現するかという法則は分かっていない。神様達の言葉を借りるならば『気分』だという。この世に漂う自然元素が魔力と融合、その中で意思らしきものを芽生えさせ、安定化を図る為にまず、現世の物体に依る。それが最初の依代、主依代となる。
そこからは様々だ。主依代を身体とする者、主依代を現世の楔として置き自由に彷徨う者、魔力を編んで肉を生み現世に受肉体として生まれる者、この三種が主要な神の在り方だ。
大量の自然と大量の魔力が漂うこの森林地は、出生する神も多いと聞いていた。その中の一柱がリーアであろう、という事である。
当然、高等な依代には、高等な御霊しか依れない。故に神格が大きければ大きい程、依代もニンゲンが想像も出来ないような、果てしないものとなる。
「これはその……いち、守人としての意見なのですが……主依代を覚えていない、という事が、有り得るのでしょうか。主依代とは神の本体そのもの。これを忘れるという事は、身体を失っているに等しい筈です。この森に主依代があると、どうして思うのでしょう」
「それは私もわかんないー」
「まあ第一神官長様の記憶と憶測によるものですから、確実とは言えません。けれども、第一神官長に出会うまでの記憶が殆どない、となると、産まれて間もなく、思考する暇もなかったのではないか、と考えられます。そして治癒などという大奇跡を持ちえるならば、依代も相当大きなものとなる。結果導き出されるのは、第一神官長と初遭遇した場所からそう遠くない、この皇帝直轄森林地、という事になるでしょう」
「そう……ですか。見えました、あれが磐座『大神籬』です」
「崖かと思った」
「うわ、本当に岩石ですね。山でも崖でもない」
少し開けた場所に出る。ここはその磐座を中心として円形に拡がっており、木々は避けるようにして生えている。縦に聳える岩塊には様々な文字が掘られており、小さな祭壇なども見受けられる。お供え物は、新しい。ここまでやって来て供えている者がいるのだろう。
「――げ、ルーン文字ですね、これ」
「え……よ、よくご存じですね。そうです、ルーン文字です。古代魔術の叡智。ここには、神を寿ぐ言葉が書き記されていると言われています……竜精と懇意というのは、本当なのですね……普通のヒトは文字の名前なんて知りませんし……」
「懇意かどうかはさておき。具体的な神はどちら様でしょう」
「数多、としか。この神籬は一時的な神の依代として機能して来たと言われています。なので、複数の神が、人々に言葉と奇跡を授ける為に、ここに降り立ったという訳です」
「浪漫溢れる話ですね。文字が古すぎるので、たぶん、文明世界が違うでしょうけれど」
「この森は、殆どが原初の時代から手付かずです。考古学調査も殆ど入っていませんから、もしかすれば、我々が形成されるよりも前の文明遺跡があるかもしれません。ただ、この辺りは比較的、学者も来ていました」
七度滅びた世界の残滓が眠る場所、などと言われると、わくわくしてしまう。ただし、過去に竜達がこの森を焼いていない、とも限らないので、そんなに昔のものがあるとも限らない。
「我が神、何か感じるものは?」
「赤いね」
「はて。どのような意味でしょう」
「赤い。これは赤い石」
「僕には視えません。エイルーン女史は?」
「いえ、色などは視えません。魔力色素の事でしょうか」
神の色。これは大別で二種、赤か青だ。どのような違うがあるかはわかっていないが、神はどちらかの色を纏って産まれるとされる。
ちなみに……リーアがサウザの役所で判別した時は『紫』と言われていた。
中間色。聞いた事もないが、あるものは仕方が無い。元の意味が不明なのだから、色を追及したところで、深い理由など分かりもしないだろう。
「ちなみに、グリジアヌは何色でしょう」
「青……?」
「神エーヴは?」
「青」
「……神ミュアニスは?」
「赤」
「……神インガは」
「赤だよ」
判断材料は少ない。断定出来るものではない。だが赤というのは……火の神性を抱えた神を指すのだろうか。
「エイルーンは青。ナナリは青。エオちゃんは青。よーちゃんは……よくわかんない」
「ニンゲンにも色があるものなのですか。というか僕が分からないってなんでしょう」
「視えるだけだから、意味は分からないし、よーちゃんは、なんか……なんだろ……白?」
酷く不安になる事いう神である。しかしニンゲンにも色があるという。
魔力色、というのならば赤も青も紫もあるが、彼女が視ているものは、また別だろう。
「この岩は、赤い神様を降ろす用の岩だよ」
「なるほど、これは大別される神の色の、赤の神を降ろすものだと」
「うん。たぶん、対になる青もある」
「そ、そうです。この先に、もう一つ、同じような磐座があります」
「ではそちらも見てみましょうか」
「ん」
さほど歩く事もなく、次の磐座に辿り着く。やはり対となっているのか、形が殆ど同じだ。違うものといえば、ルーン文字の形だろう。どちらも短い数の文字数が、ある一定毎に区切ってある。文章というよりは、固有名詞。
恐らくは、降りた神や降ろしたい神の名が書かれているのだろう。
「具体的にいつから祭祀が始まったか、という事は分からないのですか」
「はい。守人も数度、文字を持つ文明が滅んでいるので、断絶があります。口伝ばかりですね。なので、年数は定かではありません」
ユグドラーシルが伐採され、ユグドラーシルから散った枝や実を保護する為に、守人も各地へと散って行った。ユグドラーシル伐採が第何文明世界での事件なのかは分からないが、数十万年単位で世界には断絶があるらしい。
「グラム」
『あい、あい』
「十全皇がユグドラーシルを切り倒したのは、いつの話ですか」
『百六十万年前。第三文明世界の事ですねー。あ、喋っちゃったイッケネー! てへっ!』
「やっぱり三十万歳って嘘ですね、彼女」
『相当鯖読んでますよありゃあ。そもそも私が出来たのが四十万年前ぐらいですしね』
「貴女、どのくらい、過去の事を知っていますか」
『刀に必要なのはモノを斬る機能っすよ。ざっくばらんにしかわっかりませーん』
これ以上は龍の尾を踏みそうである。聞けば答えるかもしれないが、その話が事実であるとも限らない。そもそも十全皇謹製品であるから、刀そのものがふざけている可能性の方が高いだろう。
「ふうむ。しかし我が神の主依代については何も関係有りませんね。で、グラム。我が神の主依代の気配などはありますか」
『サッパリっす。この神様の気配は超特殊なんで、寝てたってすぐ気が付くレベル』
「我が神も」
「何も感じないー」
「いわば、汎用の依代ですからね……今日はこの辺りにしましょうか」
「ちょっとまって」
今日は下見だ。本格的に探索は明日からで良い。早々に引き上げよう、とエイルーンが言い出したところで、我が神が制止する。
「もう一つある」
「もう一つ、ですか? いえ、磐座はこれで全部です」
「ううん。もう一つ。『紫用』がある」
「ええ?」
リーアが指を指し示す。方角は、丁度赤と青の磐座の間だ。
「それは、我が神の視界に映っている、という意味ですか」
「うん。視える」
「そんな。東部はご存じの通り開けています。西部よりは、調査されている筈なのですけど」
「ともかく、行ってみましょう」
リーアを先頭として一行が進む。青と赤はニンゲンの手によって間伐されたと思しき開けた土地にあるのに対して、リーアが示す場所は雑木林のようになっている。確かに、これだけ木々があれば目立たないかもしれないが、良く注視すると、紫があるという場所だけ、木々が小さい。それに、ここだけやけに窪地になっている。
それは何を意味しているのか。
「これ」
「――磐座……の、残骸、とでもいうべきでしょうかね。確かに、元は巨石だったのでしょうが……粉々と言わざるを得ない」
「シュプリーア様のお話が、正しいと?」
「辺りを見てください。ここだけ木の背が低い。しかし他の巨木と品種は同じだ」
「――……確かに。そうです。この一帯だけ、生育が遅いのでしょうか。ここは土砂災害も、火事も、あったという報告はありません。しかしどうみても、新しい森、ですね」
「この岩塊、そしてココが窪地になっているのが、答えでしょう。周囲一帯を……吹き飛ばされたと考えるべきだ」
ヨージは太い枝を拾い、岩を一つひっくり返してみる。
すると、そこには微かだが、青と赤同様、ルーン文字の痕跡が見て取れた。
「ほ、本当です……! ではこの散らばった岩は、元は磐座……――れ、歴史的発見では?」
「その歴史が曖昧ですからなんとも。しかし、どうやら古代の民は、青と赤の神の他に、紫の神も祭祀していた、という事実があった事は、確かでしょう。現在は青と赤の神しか居ないとされている。大樹教もそれを神籍登録というシステムに組み込んでいる。が、紫の神……つまり、我が神の持つ色を、他の神も持っていた時代がある、のでしょうか」
「私珍しい?」
「そのようです。そして古いようです」
「私若いよ。ピチピチ」
「我が神はお美しくお優しく慈悲深く神過ぎる神なので年齢はどうでも良いでしょう」
「いえい」
しかし、ここで疑問が産まれる。
この紫の磐座が、大樹教によって粉砕されたとするならば……むしろ、破壊すべきは赤の磐座ではないだろうか。赤……火の神性を持つ神を殺して回った大樹教であるのだから、祭祀の対象となり得る赤の磐座こそを真っ先に叩き壊すはずだ。
だが、破壊されているのは、紫。
……そもそも、長い長い大樹教の歴史で、何故、千年前などという『最近』になり、火の神を粛正し始めたのか。赤と青。その大別の意味するところが、間違っているのか。
判断材料が少ない。
だが、これは、神シュプリーアという存在を知る上で、重要である気がした。
(十全皇が我が神を異形、と罵るのも気になる。ユーヴィルも、相当疑念を抱いていた)
主依代探索というのは……一種祈るような気持ちでもある。
我が神が『真っ当な神である』ことを、証明したいのだ。
彼女達が懸念するような存在ではなく、例え特殊であろうと、他の神と出生自体は大差ない、ちょっと特異な神である……――そのような証明が出来れば、言い訳をする材料になる。
十全皇やユーヴィルが『これこそは排除するべき敵』『活かしておく理由なし』と判断すれば、もはや抗う手立てがない。
ヨージは……リーアを護る為に、盾になるしかないだろう。
そうなれば人生はそこでおしまいだ。
「古い祭祀跡、というものは他にも有るのですか」
「はい。守人や、森に入り込んだ元里人が集落を形成していた跡などもあります。とても二週間程度で周りきれる数ではありません」
「では、その中でも大きいものに絞りましょう。我が神が、過去の人々によって祀られていた可能性が視野に入りましたから」
「分かりました。では、戻って探索計画を立てましょう」
「お願いします」
下見にしては随分と大きな成果を得ただろう。この調子で、リーアの起源に辿り着ければ良いのだが……果たしてどうなるか。ヨージ達はもはや竜すらも覚えてはいないであろう、歴史の闇の中に、足を踏み込んだのかもしれない。




