33章 嵐の予兆
「結局、反教会派は攻撃してこなかったな。」
「そりゃ、これだけ注目されてる所を攻撃するのは難しいわな。」
明日は教会の完成式典がある、この国最大規模の教会のお披露目だ。国王まで出席する大規模式典なのだ、いまやエルドラドは町から街に格が上がった。獣人2000名と教会関係者3000名それに周辺住民を合わせると1万人近い人口になった。結局金が集まる所に人も集まるのだった。
「そう言えば次は、学校作るんだったな。」
「何でも国中から生徒を集めるらしい。優秀な子供は無料だそうだ。」
「まあ、その代り貴族や金持ちからふんだくるんだけどな。」
「やっぱり旦那が噛んでたのか?」
「ああ、教科書作ったの俺だしな。」
「じゃあ、俺が戦闘教官するのも旦那の差し金か?」
「嫌か?」
「嫌いじゃないが、何だか面倒くさいな。」
「可愛い子に教えるとモテるぞ!」
「マジかよ。」
「教師と生徒のロマンスはラノベの基本だぞ!」
「旦那ありがとうな、俺旦那に一生仕えるから。」
教会の盛大な完成式典も終わり、その場で国王自らが学校の建設を宣言した。つまりこのエルドラドは教会と学校教育の中心地となるのだ。この国の頭脳と道徳はここから発信される事になる。
「なあ、女神。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」
「何の事じゃ?」
「俺を召喚したのは世界を救う為だっただろ。今まで世界の危機何か見てないんだが。」
「やっぱり覚えておったか。」
「そりゃあ自分が召喚された理由位は覚えてるさ。」
「そうか。」
「この国の敵はいつ来るんだ?」
「あと半年位じゃの。」
「強いのか?」
「人間は負けるじゃろうの」
「俺が居ても負けるか?」
「勇者が居なければ確実に負ける、」
敵が魔族なのは薄々気が付いていた。この世界の人間を滅ぼしそうな敵が見当たらないのだ。隕石の落下とか天変地異なら俺の出番ははなからなかったはずだしな。
「魔王とか言うのが攻めて来るのか?」
「そうじゃ。」
「今その魔王を殺してもダメか?」
「倒しても次の魔王が出て来るだけじゃな、歴史の必然と言うやつでワシにもどうにもならんのじゃ。」
「魔族が攻めて来る理由を聞いて良いか?」
魔族が攻めて来る理由は簡単だった、食料難だ。度重なる魔族同士の争いで土地が枯れて生存の危機なのだそうだ。だから、こちらの国の食料や土地を欲しがっているらしい。贅沢が目的で起こす戦争なら回避の仕様もあるが、民族存亡がかかっていると回避は無理だった。
「食料支援を条件に、戦争回避は無理かな?」
「魔族が人間のいう事を聞くとは思えんのう」
「あやつらは、力こそ正義なのじゃ。自分より弱い者の意見などきかんじゃろう。」
「やはり一回相手を叩く必要が有るのか。」
「よし、それじゃあ遠慮なく召喚するか!」
「それは出来んよ。」
「はあ、出来ない?」
「歴史の理を知ってしまたから、もう異世界からの召喚は使えなくなった。」
「そんじゃ、ノジャの力で何とか・・」
「わしも、この件では力が封印された様じゃ、勇者同様無力じゃな。」
「じゃあ、これからは実力勝負って訳か。」
「そうじゃ、生き残りをかけた勝負じゃ。」
ハッキリ言って非常に困った、何が来ても平気だったのは召喚が使えるからだ。いざとなれば核兵器でも化学兵器でも召喚して勝つつもりだったのだ。こんなことなら国を奪って国庫を空にしてでも兵器を有りっ丈出しとくべきだったかもしれない。内乱になって魔族にほぼされる前に自滅するかもしれないが。
後悔してもしょうがないので、俺は女神の神託として、教会を通して国に情報を流した。それから王国は臨戦態勢に移行した。国家総動員である。
魔族軍20万に対して、王国の軍団は平時は1万人しかいないのだが、予備役等をかき集めて10万人にまで増強する計画になっていた。軍団を補助する人間がこれに20万人程ついて、補給・食事・治療・輸送などに当たる。これ以上は国家が崩壊するという限界までの準備が進められた。
教会も、聖騎士100人を300人まで増強し、これに一般兵士3000人を付け補助のヒーラーや魔導士を動員し1万5千程の軍団を形成した。
俺は獣人、亜人1万人の混成部隊を結成した。中心舞台は俺が自ら育てた孤児院部隊300名だ。全員に64小銃とガバメントを渡してある。
数の上では魔族20万体王国軍12万5千と何とかなりそうな感じになった。しかし、魔族の方が単体としては強く、魔獣が加わると王国が劣勢なのは明らかだった。
「どうじゃ、勇者勝てそうか?」
「普通の防衛線なら、何とか防衛出来るだろうが。今回は難しいな。」
「なぜじゃ?」
「普通の戦争は、相手の戦力が3割減ったらそこで大体終わりだ。だが今回は相手がとことんやる気だからな。負けたら飢え死にが待ってるからな。」
「では、どうする?」
「相手のやる気が無くなる戦いが必要だろうな。」
「なんじゃ、やる気が無いのウ。」
「相手の事情が分かってるからな、こっちの食料支援が有れば彼らは戦う必要が無いんだ。」
「それが、種族の違いってヤツなのじゃろうな。お互い分かり合えないんじゃな。」
「愚かだな。」
「人魚達とも仲良くなれる勇者には分からんじゃろうな。」
「ああ、俺には金とか地位とか名誉なんかがさっぱり分からんからな。」
そして、魔族と人族連合軍の戦いの日が刻々と近づいてくる。




