とある召術士の冒険 完結
これにて完結です!
その後は、忠村に勧められた宿【兎銀亭】で宿を取ってから、旅に必要なアイテムを買い集めた。
最初に俺たちは武器屋に行って主装備を買い換えた。ちなみにこれが、俺の主装備だ。
召喚士の杖
DEX+3 INT+3
最初のほうの武器なので大したものではないが、それでも初期装備はINT+2だったから、少し強くなったといえるだろう(その代わり、忠村を除く全員の所持金が吹き飛んだ)。
そして、ステータス画面を見ているときにいくつかのことに気がついた。
フルの節約のために女子部屋と男子部屋と、二人でひとつの部屋を使っていた俺達も、あわてて男子部屋に集まった。
(すぐに出ていくつもりだったので、一時間だけ借りることにした)
「まずは、普通のスキルの熟練度の上限が10000になっていると」
「おそらく、これからのアップデートごとに行うつもりだった分を一気に増やしたんだと思います」
「俺もそう思う」
いくつかの事を話し込んだ俺たちは、兎銀亭を出て、直忠に案内された。
美少女たちがたくさんいるパーティーが兎銀亭を入れ替わりで入っていったが、βテスターなのだろうか、装備がやたらと充実していた。
特に一人の少女からは力を感じたが、それが何なのかは分からなかった。
「こんにちは。あなたがリョクドウさんですね?私は美鈴です」
「ああ、よろしくな」
「それから、左端の女性がサヤ、真ん中の男の人がリュウです」
「よろしくおねがいしまーす!!」
「よろしく」
俺たちが【兎銀亭】に泊まった翌日、忠村の頼みで俺たちは【冒険者ギルト】にきていた。
「忠村。お前がいてくれると、少しはこっちも楽できるってモンなのによぉ」
「悪いな。だが、もう決めたことだしな。レンカさん。リョクドウをお願いしますね」
「分かっています。そちらこそ、どうかお元気で」
【冒険者ギルト】は、この【第一の町】のクエストを攻略することでできたプレイヤーの作るギルトだ。
ゲームシステム的な【冒険者ギルト】というものは存在するが、今俺たちがいる【冒険者ギルト】は、ベータのときの最大勢力だった戦闘系ギルト【W・A・B】と生産で生産でも戦闘でも一流の【シャイン・レジェント】が手を組んで結成された、いわばプレイヤーの代表機構といってもいいものだ。
目の前にいるのは【W・A・B】と【シャイン・レジェント】のそれぞれのギルトマスター、【轟槌】リョクドウと【冴剣】レンカだ。
彼らが俺たちのパーティーの代表である美鈴と話している間に、俺は忠村と小声で話をしていた。
「なあ、忠村。何でお前は何でこのギルトに入んなかったんだ?というか『どこのパーティーにも入れてくれなかったんだ』とか嘘だったんだな」
「うっ……。お前らと一緒にいたほうがこのゲームを楽しめると思ったんだよ」
そう、実は忠村は【W・A・B】の戦闘隊隊長だったりした。これを聞いたときには耳を疑ったが、リョクドウたちとのこれまでの会話で真実だということが判明した。
「そうか。とはいっても、話してくれればいいだろ」
「どうせこの町からはもう出るとこだったんだぞ。【W・A・B】の戦闘隊隊長とはいえ、自由にやらせてもらってたし、あいつらに恩はあるけど約束は守らなきゃな。道中にでも話してしまうつもりだったんだ」
「それにしても、ベータの最強ギルトの戦闘隊長って、普通にすごかったんだなお前」
「そうだぞ。見直したか?」
「ほんの極々わずかな雀の涙くらいな」
「扱いがひでぇ……」
『W・A・B』のギルトマスター、リョクドウ。パッと見ただけでは普通の中年親父だが、その目に宿る眼光はかなり鋭い。
できれば敵に回したくない。俺はそう思った。
「まぁ、お前は昔から義理堅かったからなぁ。気が向いたらまたよってくれ」
「おう、また今度な」
「忠村さん、これがあなたがリョクドウに頼んでいたものです」
そういいながら、レンカさんが布に巻かれた細長い何かをアイテムストレージから取り出し、忠村に渡した。
「おっ、とうとうできたか。あ、だが……」
「いいんだよ。お前がいたおかげで『W・A・B』はここまでこれたんだ。遠慮すんな」
「悪いな、何か用があったら呼んでくれ。またどこかで飲もう」
「おお!お前のおごりか!」
「そんなわけあるか!ギルマスなんだから元ギルメンにおごるくらいの度量を見せろ!」
その後情報の交換をし、俺たちは【第一の町】を出て【ルーナニ】へと向かった。
ここから、もう一人の主人公の話が始まる。
この話に出てきた美少女たちのパーティーは、もちろんエデンたちです。
裏設定として、召術士には微妙な野生の勘のようなものがあります。
なので、一番危険だった、ミョルニルを装備していたエデン(外見は美少女)に注意が行ったということです。