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魔法少女バスターズ&フレンジャーズ  作者: 橋比呂コー
File.5 死神の魔法少女
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予想外の隊員

 央間市におけるデッドリーパー出現事件は瞬く間に重大ニュースとして全国を駆け巡った。まずは、単純にデッドリーパーを初めて退散に追い込んだという事実が大きい。

 世論として、デッドリーパーを仕留めきれなかったことを非難する声があったのは確かである。絶命寸前まで追い詰めながら逃走を許してしまったのだ。あれから捜査が続行されたのだが、未だ発見できずにいる。マシュ曰く「本気で逃げたのなら新幹線を使わないと追いつけないよ」だそうだ。央間市外へ逃れた可能性が濃厚であり、捜査は振り出しに戻ったというところだろう。


 その点に関してはMSBの失点ではあるが、それ以上に「デッドリーパーを瀕死に追い込んだ」ことを歓喜する声が大多数であった。これまで、戦っても絶対に勝てない相手というのが一般認識だったのだ。それが倒せる相手に変わったのである。もちろん、一筋縄ではいかないものの、デッドリーパーの脅威に怯えなくていい日が来るという希望的観測は人々の士気を高めるに十分だった。


 そして、今回の事件で二つの大きな想定外が発生したわけだが、そのうちの一つはMSB内部での極秘情報として隠匿されることとなった。刹那が魔法少女化した件である。

 刹那へと尋問が行われたが、当人は「まったく記憶がない」の一点張りだ。六花から問題の映像を見せてもらっても「悪質なコラージュ映像」という感想しか抱かなかった。それどころか、あまりにも刹那に似すぎている魔法少女の姿を目の当たりにし、後にトイレで嘔吐したぐらいである。


 ただ、公にしなかったのは刹那に自覚がなかったからという理由ではない。「人間が魔法少女に変身した」という事実を流布したくなかったからだ。

 ただでさえ、魔法少女という未知の存在の脅威に晒されているのに、自らがその存在に変身するかもしれないと聞かされたらどうなるか。どのように変身するか等不確定情報が多すぎることもあり、余計な混乱を招きかねない。上層部が刹那が変貌した映像を消し去るよう指示したのは、このことを予見してのことだろう。


 しかし、もう一つの事実については公表せざるを得なかった。なぜなら、にわかには信じがたい決定を上層部が下したからである。


 デッドリーパーとの激戦の翌日。重大な話があるとのことで、刹那たち隊員全員は指令室に集められていた。包帯でぐるぐる巻きにされた腕をさすりながら、刹那はじっと前を見据える。その横にすりよる六花に、佳苗は嫉妬の視線を送っていた。


 例の事件について談話する声も聞こえたのだが、西代長官が入室するやピタリと沈黙し敬礼する。長官も敬礼すると抱えていた資料を机の上に広げた。

「まずは、先のデッドリーパー掃討戦についてねぎらおう。予定が大幅に狂ったわけだが」

 そう言って非難を向けた先が刹那であることは指摘するまでもない。当人はどこ吹く風ではあるが。明確に糾弾したところで「結果的に深手を負わせることができたからいいでしょう」と開き直られるだけだ。


「完全に討伐できなかったとはいえ、奴に深手を負わせたのは躍進だ。片腕を失っており、心臓を損傷している。いくら魔法少女とはいえ、その状態から回復するには時間がかかるというのが現状の見解である。仮に回復されたとしても、こちらには対抗馬があるのも心強い」

 そこで一呼吸置いて指を鳴らす。合図を受けた隊員が扉を開ける。そうして現れた存在に少女たちは息をのんだ。


「諸君らに紹介しよう。今日から央間支部の新しい隊員となったマシュ君だ」

「やっほ、マシュだよ。よろしくね~」

 親しげに手を振るマシュ。だが、応じる者は皆無だった。


「どういうことですか、長官! 魔法少女を隊員にするなんて正気の沙汰じゃないわよ」

 声を荒げたのは刹那である。触手は引っ込めてあり、ふんわりとした長髪もショートボブへと変化している。けれども、柔和そうな顔立ちといい、隊服では隠しきれていない双丘といい、まぎれもなく触手の魔法少女マシュだ。


「私も最初は自分の耳を疑ったよ。だが、上は正式にマシュ君を隊員とすることを決定した。理由は色々とあるが、まずは神崎隊員、君と共闘したことが公になったことが一番だろうな」

 デッドリーパー掃討戦が報道されるにあたり、殊更に強調されたのは「刹那とマシュが共闘した」という部分だった。元々、マシュは人間に対して友好的であるという触れ込みが為されていた。それでも、懐疑的な声は拭い去れない。

 今回、デッドリーパーという難攻不落の敵を魔法少女と協力して退散させたというのは絶大なインパクトを残すこととなった。世論として、マシュは人間の味方ではないのかという声が圧倒的である。


 MSBとしては、引き続き保護観察を続けるつもりでいた。だが、単に野放しにするのは惜しいという意見があったのも事実だ。協議の結果、「比較的人間に対し友好的である」という点が重視され、今回の決定に至ったわけだ。

「これまで通り野放しにするよりは、MSBの監視下に置いておいた方が、万が一の事態でも即座に対処できるという理由もあるな。それに、彼女の戦闘能力は今後の魔法少女との戦闘において大きな力となってくれるはずだ。デッドリーパーは完全に倒したわけではないし、奴以上の敵が出てこないとも限らないからな」

 そこまで明確な根拠があっては、感情論だけで反対することはできない。それに、デッドリーパー以上の敵が出るという予測には刹那も同意だった。奴は仇敵ではあるが、大元の魔法少女騒動の黒幕かと言われると違うように思える。マシュというイレギュラーが現れたことからしても、もっと闇深い何かが潜んでいる気がしてならないのだ。

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