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魔法少女バスターズ&フレンジャーズ  作者: 橋比呂コー
File.5 死神の魔法少女
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共闘

「本当にせっちゃんは素直じゃないんだから。私はいつでもウェルカムだったんだけどな」

「勘違いしないでよ。奴を倒すのに最適な方法があんたの力を借りることだったんだから。これは、その、戦略的に利用するだけよ。そう、利用よ、利用」

「うーん、その言い方は傷つくかな。初めての共同作業なのに」

「あんた、意味分かって言ってる?」

 などという冗談は鎌が断ち切った。デッドリーパーとしては、悠長に打ち合わせの時間を設けてやる義理はない。まとまって行動してくれるのなら、一網打尽にするだけだ。


「こそこそ話なんかしやがって、うぜぇやろうだなぁ」

 愚痴をこぼしながらも、鎌による斬撃を繰り出してくる。刹那はマシュと目配せすると、一旦デッドリーパーと距離をとった。刹那を注視していたなら退避したと映っただろう。そうでないことは、直後のマシュの行動が示した。


 残された腕に触手が巻き付く。がんじがらめになっているうえに、そもそも片腕だけの状態だ。容易には振りほどけまい。

 まとわりついてくるなら利用するだけだ。強引に腕を曲げ、マシュを手繰り寄せようとする。


 もちろん、マシュとてバカの一つ覚えで似たような攻撃を繰り出しているわけではない。デッドリーパーの注意が逸れている今が好機だ。

 素早く接近した刹那が、デッドリーパーの胸へ倶利伽羅丸を突き刺そうとする。決まったか。


 表情を綻ばせる刹那だったが、手ごたえを感じなかったことで唖然とする。躱された、だと。

「マシュ、しっかり押さえてなさい」

「やってるよ。せっちゃんのタイミングが悪いんじゃないの」

 喧嘩しているうちに、デッドリーパーは触手を振りほどく。片腕でもなお、二人を同時に相手できるなど、やはり化け物じみている。それでも、呼吸を荒げている。体力の消耗が抑えられないとしたら勝機はある。


 さずがにデッドリーパーも思惑に感づいたようだ。マシュの触手を最優先で防ごうと立ち回る。刹那としては、デッドリーパーがマシュにかかりきりになってくれれば都合がいい。執拗に胸を狙うが、巧みに逸らされてしまう。


 三人の異次元の戦いを観戦していた六花と佳苗は圧倒されるばかりだった。加勢したいところだが、彼女らの実力では足手まといにしかならないだろう。それに、とある事実に打ちひしがれるばかりだった。

「どういうこと? 刹那が魔法少女と共闘してるなんて」

「魔法少女は敵じゃないんスか」

 意思疎通ができず、ひたすら破壊行動を繰り返す未知の生命体。それが魔法少女だったはずだ。だが、よもや人間と共に戦うとは。しかも、相手はMSBで誰よりも魔法少女を毛嫌いしていた刹那である。


 三者三葉で息切れを起こす。長時間に及ぶ戦闘で体力の限界も近かった。おそらく、次の一撃で勝負が決まる。戦闘の勘とでも言うべきものがそう告げていた。

 互いに頷き合った刹那とマシュは同時に駆け出した。マシュは飛び上がりつつ、触手をデッドリーパーに迫らせる。

「ワンパターンなんだよぉ」

 詰るものの対応が遅れる。気合を入れたマシュは腕を絡めたまま、デッドリーパーをビル壁に叩きつける。その様は磔の処刑台に晒されているようであった。


 そして、死刑の執行人は刹那である。ここまでのお膳立てをされて外すわけにはいかない。

「これで終わりよ!」

 気合を入れながら全力疾走する。脇目も振らず、デッドリーパーの胸へと倶利伽羅丸を突き刺す。


 決まった。両手に伝わる確かな感触。勢いよく引き抜くと、デッドリーパーの胸からとめどなく鮮血が流れ出してくる。奴の手から鎌が力なく落ちる。そして、ゆっくりと地面へと倒れ伏した。


 歓喜の声は沸いてこなかった。終わった。ずっと追い求めていた仇敵の末を魂が抜けたように眺めているだけだった。

「グッジョブ、せっちゃん」

 マシュが拳を突き出してくる。破顔した刹那は同じく拳をぶつけて応える。雲間から差し込んだ陽光が二人を優しく照らしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言]  一言、「ここまで読んできて良かった」と言いたいです。本当に橋比呂様の描く戦闘描写の緊迫感は凄まじく、絶望からの刹那の変化、そして共闘と燃える怒涛の展開の連続でした。その面白さはこれまで積み…
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