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佳苗の蛮行

 マシュの額から血が流れる。彼女自身も、己が身の異変を把握するのに時間がかかった。やがて理解できたのは、佳苗が差し向ける銃口から煙が立ち上っていたということである。

「な、なにしてんスか、佳苗」

 意外にも、真っ先に声を張り上げたのは六花だった。獰猛な獣のごとく、佳苗は肩で息をしている。


「次は心臓を貫くわよ。いくら再生力が優れていても、心臓をやられてはひとたまりもないでしょ」

「いやいや、自分が何をやってるか分かってるッスか」

「邪魔するつもり、六花」

 慌てふためく六花に、佳苗はあっさりと答える。刹那としても、この蛮行は予想外だった。仮にライフル銃を持っていたとしても、発射していたかどうか。


「お上から通達されてるッスよね。触手の魔法少女マシュは保護観察対象だって。下手に攻撃することは許されないッスよ」

「そんなの詭弁じゃない。近いうちに、所詮は魔法少女だから野放しにはできない。即刻排除すべしって結論になるわよ。ならば、ここで倒したところで問題はない」

「いや、だからって」

「フフフ。魔法少女マシュ、本当にいいタイミングで来てくれたわ。あんたを単独撃破できたとなれば、上層部は私の実力を認めざるを得なくなる。そうすれば、私のA班昇格は確実。ようやく、永藤隊長と一緒に戦うことができるのよ」

 大言壮語を告げられ、刹那たちは反論できずにいた。これまで、奇々怪々な能力を持つ魔法少女と対峙してきたが、基本的に恐怖心を抱くということはなかった。そんな刹那が身震いをしている。無論、他の隊員たちも誰一人として介入できる者はいなかった。


 一方で、銃撃されたマシュは額をぬぐった手のひらを眺めていた。傷自体は魔法少女の自然治癒能力で完治している。それでも、こびりついた血痕はすぐさま消せるものではない。手のひらを握ったり開いたりしながら、悲哀に満ちた顔で佳苗を見据えた。

「うーん、いきなりヘッドショットをかます子とは友達になれない、かな」

「ふざけないで! あんたと友達になるわけないでしょ」

 続けざまに佳苗は銃弾を発射する。闇雲な軌道を描く弾丸は、避けようと思えば避けることができた。だが、マシュは甘んじて受け止めた。


 右肩と左の脇腹に命中したが、すぐさま治癒してしまう。舌打ちをした佳苗はすぐさま次の一発を放とうとする。

 しかし、乾いた音が鳴るばかりで、肝心の凶弾は発射されない。弾切れだと気づいた時にはもう遅かった。


「危ない!」

 いち早くマシュの挙動を察したのは刹那だった。その声により、ようやく自らに危機が迫っていると認知する佳苗。当然のごとく、そこから反応していては対処できるはずはない。

 うねる触手に両腕をからめとられ、磔にされているかのごとく上空へと持ち上げられる。もがいて脱出しようとするが、絶叫マシンの安全バーのごとく、そんじょそこらの力では振りほどけそうにない。


 さすがに、仲間が攻撃されているところを見捨てるわけにはいかない。しかし、触手を通じて佳苗と繋がっていては、下手に手出しはできなかった。仮に空中を高速移動して回避された場合、急に振りほどかれた佳苗が命の危機に晒されることになる。それに、マシュの性格からして可能性は低いが、佳苗を盾にされることだってありうる。


 加えて、マシュが訴えかけているような気がしたのだ。「こいつに手出しはするな」と。もちろん、従ってやる義理はないのだが、なぜだか振り上げていた腕をおとなしく下してしまっていた。


 空中で捕縛された佳苗は、懸命に体をよじる。脱出できたところで、ビルの三階ほどの高さから墜落することとなる。現状、自力で生還できる道は限りなくゼロに近いのだが、そんな思慮に至る余裕はなかった。

「こんの、放しなさい」

「放したら死ぬのに」

「うっさい、ボケ! カス!」

 女性としてあるまじき暴言をぶつけ、あらん限りの力で暴れ続ける。マシュはため息をつくと、佳苗を更に高く持ち上げた。

「悪い子にはおしおきしないとね」

 まさか。最悪の事態が脳裏をかすめ、刹那はマシュの真下へと駆け出していた。激痛により足をとられるのがもどかしい。本来なら大風呂敷でも用意したいところだが、直接地面に激突するよりかはマシだろう。


 刹那の意図を察したのか、六花たちも行動に出る。クッション代わりになるものはないかと探し回るが、そんな都合のいい物が町中に落ちているわけはない。二次被害が出るのを覚悟で、おしくらまんじゅうによる人海戦術で受け止めるか。取りたくはない選択肢ではあるが、それしか方法は無さそうだった。


 しかし、刹那たちは重大な勘違いをしていた。彼女たちが想定しているお仕置きと、マシュが実行しようとしているお仕置きはそもそもとして大きく乖離していることに。

 嗜虐的に口角を上げると、マシュは触手を緩める。ニュートンが発見した法則により、佳苗の体は地上へと自由落下する。隊員たちから上がる悲鳴。六花は直視できず、顔を手で覆った。

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