『時をかける交差点 〜未来へ架かるオレンジの道〜』第6話:繋がれた二つの世界(最終話)
『時をかける交差点 〜未来へ架かるオレンジの道〜』
第6話:繋がれた二つの世界(最終話)
「いくよ、未来の私! 私たちの明日を、地球を、このエルドラドを、私たちの手で絶対に救い出すのよ!」
16歳のルミナス令嬢が、夕日色の瞳を激しく燃え上がらせて叫んだ。
「ええ、いきましょう、ルミナスのアサヒ! 私たちの新しい未来へ!」
31歳の私も、手の中の懐中時計を強く握りしめ、彼女の隣へと並んだ。
ゴォォォ……!!
異世界『エルドラド』の時計塔の広場に、世界のすべてを噛み砕こうとする真っ黒い時空の歪みの嵐が、まるで巨大な黒い龍のような姿となって、咆哮を上げながら襲いかかってきた。
「みんな、いくよ! 僕たちの未来の光を合わせて!」
「過去の後悔も、ぜんぶ綺麗なアメジストに変えてみせるわ!」
黄金色の光を放つ朝日くんと、茜色の光をまとった夕日ちゃんが、宙を舞いながら叫ぶ。
5歳のユウヒは、私たちが生み出すアメジスト色の光の障壁に優しく守られながら、小さな両手で朝焼けの時計をギュッと掲げ、一生懸命に「がんばれーっ!」と応援の声を響かせていた。
二人のアサヒの戦いを、我が子のピュアな愛のエネルギーが後ろから120%で支えている。
「はあああぁぁぁっ!!」
ルミナス令嬢が地面を強く蹴り、ドレスの裾を翻しながら、黒い嵐の核心へと向かって真っ直ぐに跳躍した。
その手にある魔法の剣は、アサヒたちの放つ「今を大切に生きる温かい愛」のエネルギーを吸い込んで、眩しい朝焼けのオレンジ色とアメジスト色の光を激しく放ち、巨大な光の刃へと膨れ上がっている。
ズバァァァン!!!
魔法の剣が、空間を切り裂くような凄まじい音を立てて、押し寄せる闇の嵐を一刀両断に叩き切った!黒い龍のような歪みが悲鳴を上げて引き裂かれ、シュワシュワと音を立てながら、綺麗にアメジスト色の眩しい結晶の粒子へと浄化されて消滅していく。
しかし、歪みの根源はまだ消えていなかった。
レールの破断を告げる黒い亀裂が、今度は私と令嬢の足元を狙ってバリバリと走り抜ける。
「時計のネジを、もう一度だけ、私たちの心で巻くのよ!」
私は叫ぶと同時に、ルミナス令嬢の手をぎゅっと強く握りしめた。
31歳の大人の手と、16歳の令嬢の手。
二人の「アサヒ」の手が重なり合った瞬間、二つの懐中時計がこれまでで一番強烈な、世界すべてを昼のように照らし出す朝焼けの光を放った。
チクタク! チクタク! カチリ!!!
異世界の時計塔の巨大な歯車が、そして現実世界の地球の時間のネジが、凄まじい音を立てて完全に噛み合った。
メビウスの輪の表(未来)と裏(過去)で引き裂かれかけていた二つの世界線が、二人のアサヒの強い絆によって、今、絶対に切れない1本の強固な美しいゴールドのレールへと新しく生まれ変わったのだ。
「あ……、歪みが、消えていく……」
ルミナス令嬢が、剣を収めながら、涙の浮かんだ美しい目で周囲を見回した。
バリバリと鳴り響いていた黒い亀裂は一滴残らず消え去り、エルドラドの夜空には、元の穏やかで美しい二つの月がぽっかりと浮かび上がっていた。
精霊たちの光も、まるでお祝いをするかのように、私たちの周りで嬉しそうにキラキラと舞い踊っている。
地球の秋祭りの時間も、これで完璧に救われたはずだ。
「ありがとう、地球の私。そして、可愛いユウヒちゃん」
ルミナス令嬢は、すべてを救い終えた最高の笑顔を浮かべると、私の手、そしてトコトコと駆け寄ってきたユウヒの小さな体を、優しくぎゅっと抱きしめてくれた。
「私ね、このエルドラドの世界で、あなたたちの分まで、今日を大切に一生懸命楽しく生きるわ。いつかまた、メビウスの輪がぐるりと1周して、あなたたちの元へ新しい朝の光として還る、その日まで」
「ええ……。私も地球で、あなたから貰った愛を胸に、毎日を最高に楽しんで生きるよ。……またね、ルミナスのアサヒ」
私は涙を流しながらも、最高の笑顔を彼女に返した。
手の中の懐中時計が、別れの時を告げるように優しくアメジスト色にまたたく。
朝日くんと夕日ちゃんが
「さあ、お家に帰ろう!」
と手を振る。
ルミナス令嬢の、そしてエルドラドの美しい景色が、眩しい朝焼けのオレンジ色の光の中にゆっくりと溶けていき、私たちは私たちの待つ「大好きな現在」へと帰還していった。
ハッと気がつくと、私とユウヒ、そして朝日くんと夕日ちゃんは、あの賑やかな地球の秋祭りの、大きな御神木の前にしっかりと手を繋いだまま立っていた。
風が優しく吹き抜け、露店の煙が上り、人間たちの楽しそうな笑い声が境内に心地よく響き渡っている。
時間は午後6時20分を指し、未来へ向かってカチコチと正確に動き出していた。
「お母さん! やったね、みんなで世界を守れたんだね!」
ユウヒが私のエプロンを引っ張りながら、満面の笑顔で叫んだ。
「うん、やったね、ユウヒ! 朝日くんも夕日ちゃんも、本当にありがとう!」
私の言葉に、5歳の姿の二人の神様は
「こちらこそ!」
「地上のご飯、またお腹いっぱい食べさせてね!」
と、顔を見合わせてキャハハと無邪気に笑い合った。
窓という四角いスケッチブックに描かれたあの朝焼けの光は、いま、地球(現実)とエルドラド(異世界)という二つの世界を完璧な一つの輪に繋ぎながら、私たちの進むべき「明日」をどこまでも眩しく照らし続けていた。
「ただいま、私たちの新しい明日! ――これからもみんなで、ずっと一緒に生きようね!」
私はユウヒたちをきつく抱きしめ、どこまでも輝く光の道の向こう側へ向かって、新しい一歩を力強く踏み出したのだった。
(『時をかける交差点 〜未来へ架かるオレンジの道〜』・堂々完結)




