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君だけの勇者様  作者: ama
10/10

第10話 ナーチス村

“ドラゴンには勝てないよ”

そうカイトに言われたことを思い出す。

昨日、スライムを倒して、次の日トリプルAランクの魔物ドラゴンの討伐に行くやつなんてどう考えてもおかしい。

ランを説得してドラゴン討伐をやめさせるべきだと。そうすることが正しいことだとわかっているのに。

ランにドラゴンは倒せないと言うことを躊躇ってしまう自分がいる。

なんだ。

そんなもんかと。

結局どこにでもいる普通のつまらないやつだと失望されてることが怖くて。

朝から元気にドラゴン討伐の準備をするラン。

早く。

話さないと…。

 

「ラン。ドラゴン討伐は無理だよ。」

「どうして?」

「まだまだ俺達は弱いから…。」

「戦ってみたことないじゃない。」

「昨日スライム討伐して、いきなりドラゴン討伐する勇者一行なんておかしいと思わないか?」

「思わないけど?」

ダメだ。薄々気付いていたけれど、ランは普通の感覚がない。

ランが強いからかもしれないけれど…。

情けないけれど俺は強くない。

それを理解してもらわないと…。

「カイトにも言われたんだよ。俺にはドラゴンは倒せないって」

「カイトだってドラゴン倒したことないくせに。強さもわからないくせになーに言ってだか。ドラゴン討伐エアプだよ!エアプ!」

「誰もまだドラゴン討伐は出来てないからね…。」

「ハーデス村から出てない田舎者の戯言なんて無意味!」

「カイトは騎士の実力者だよ。誰よりも強いね…。カイトがそう言ってるんだ。俺には倒せないよ。」

「私よりカイトの言ってることを信じるんだ。」

その言葉に俺の全身が震える。

幻滅しただろうか。

腑抜け野郎だと思われてるだろうか…。

俺が言葉を発することが怖くて俯き目線を逸らすと、ランは俯いた俺の下に潜り込んでしゃがみ込み無理やり視線を合わせてきた。

「…やめてくれよ。こんな臆病でカッコ悪い顔を見せたくないんだ…。…幻滅しただろう?」

「んー?」

ランはにっこりと微笑んで答える。

「今日も私を助けたくて仕方がないって顔してる。」

「え?」

「そうでしょう?」

「…うん。」

「じゃあやっぱりクーデルは私の最強の勇者様だよ。」

涙が溢れるのを堪える。

いつも救われて、助けられてるのは俺の方だと。

ランは気づいているのだろうか。

どうしてだろうか。

ランの為ならなんでも出来るような気がしてしまうんだ。

「ホームシックは治った?じゃあドラゴン倒しに行こうか。」

「あぁ…。」

ランの言葉に騙されて俺までバカになってしまった。それでも構わない。

ランの前だけでは最強の勇者でありたいから。

ギルドへ行き、ナーチス村の奥にいるドラゴン討伐の依頼を受ける。

本当に二人で行くのか?死の危険があるぞと言われたが引き受けた。

「本当に行くんだな。」

タクトが話しかけてきた。

「うん。」

「お子様の夢物語でドラゴンは倒せる相手じゃないぞ?王国の騎士団2000人で討伐に行ったが、死者30名以上が出た相手だぞ?わかってて行くつもりなのか?」

「うん。」

「意地張って死ぬつもりか?」

「まさか。倒すんだよ。俺達が。」

「本当に勝てると思ってるのか!?」

「当たり前だろ。じゃないとドラゴン討伐なんて行かないよ。」

「昨日のお前の実力見たけれど、一般的な戦士と変わらない強さじゃねぇか!若いからまだまだこれから強くなれるってのに!!」

「俺達は魔王を倒すパーティだ。ドラゴンぐらいすぐに倒せないと。」

「死ぬぞ!?」

「本当に無理そうならちゃんと帰還するよ。」

「お前らは世間知らずすぎんだよ!!行くなよ!俺はお前らに死んで欲しくねぇんだよ!」

「世間知らずのバカはどっちかはドラゴン討伐したら教えてあげるわ。」

ランが答える。

「心配ご無用!私達は最強の勇者パーティですから!」

「昨日スライム一匹も倒せなかったくせに…。」

「うるさいわね!スライムが小さすぎたのよ!ドラゴン相手なら私の大鎌がドラゴンの心臓を抉り取ってやるんだから。」

「………絶対帰ってこいよ。」

「勇者パーティを讃えるパーティでも準備して待っておくといいわ。」

俺達はタクトと別れを告げて、ドラゴン討伐をしにナーチス村へと出発した。

ここから汽車で一時間程移動した場所だった。

ナーチス村から一番近い駅へ降りると、土地は枯れ果て砂漠のようになっていた。

とても暑く熱気が凄い。

暑さに耐えながらナーチス村へと向かう。

しばらく歩くとナーチス村に到着した。

ナーチス村は草木が枯れ果て廃村寸前のような場所だった。

とても人が住めるような暑さではないのに多くの人々がここで暮らしていた。

「ようこそ。ナーチス村へ。お待ちしておりました。勇者一行。」

そう声を掛けてきたのは70歳ぐらいの初老のお爺さんだった。

「私はナーチス村の村長ハバロンと申します。遠路遥々ありがとうございます。」

「クーデルです。どうぞよろしくお願いします。」

「ランよ。」

「この村には資源が少なく、お茶をお出しすることもできませんが…私の家に案内します。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

村長に案内をされて俺達は家に入る。

「この村の奥のナーチス山に炎のドラゴンがいます。魔王が復活し、ドラゴンが出現した瞬間に私達の自然豊かな村は枯れ果ててしまい今はこの様な有様です。」

「そうでしたか。」

「あの炎のドラゴンは実はこの村に住んでいた一人の男でした。」

「え…。」

「マグタットという男でした。とても心の優しい50代の男でした。彼はこの村で時計の修理をする仕事をして仕事熱心のそれはそれはいい男だったのです。」

「どうしてドラゴンなんかに…。」

「わかりません。でも、彼には弟子がいました。ミランという若い青年です。ちょうど貴方方と同じぐらいの年でした。その青年は真面目な子でしたが、気が弱くてよくこの村の女の子達にいじめられていたのです。それをマグタットは知って目撃してしまった。それで…彼は怒りドラゴンになったのではないかと…。」

「怒りで人間がドラゴンに?」

「本当の真相はわかりません。あくまでも噂の話です。」

「その弟子は?今はどうしてるの?」

ランが質問をする。

自分の師匠が魔物化するのはランにとってデリケートな話だ。

だって。

ランのお婆さんも魔物になったのだから。

「実は弟子のミランも魔物になってしまったのです。」

「え!?」

「ただ…ミランの方は人型を保っており、ドラゴンにはなっていません。夜中に時々この村の様子を確認してはナーチス山へ逃げて行くのです。」

「人型の魔物なのですか?」

「はい。おそらく記憶もしっかり残っていて理性もある状態だと思います。」

「何故魔物だと?」

「角が生え、羽が生えていますから。」

「話したことは?」

「ないです。こちらから声を掛けるとすぐに逃げていきますから。」

「そうですか…。」

「ドラゴン討伐に2000人もの騎士達が戦ってくれました。しかし、炎のドラゴンはとても強く、ドラゴンの周りにはマグマがあり、近づくことさえ出来なかったようです。結局死者を出しただけで、成果は得られなかった。その後ナーチス村山へドラゴン討伐なんて誰も…。この村も日々枯れ果て水分補給することさえ難しくなりました。」

「そうですか…。」

「お願いします…。ドラゴン討伐して下さい。このナーチス村を助けて下さい。」

そう言って村長は頭を下げる。

「はい。必ず。」

俺達は村長の家から出る。

村長は今日は疲れただろうからと俺達が泊まる宿を手配してくれた。

俺達は村長に案内された宿へと向かい今日は宿で寝て明日ドラゴン討伐に行くことになった。

「弟子の子。魔物になったんだって。」

「そうだな。」

「ドラゴンになった男の人も魔物になった弟子も何も悪くないのにね。どうして倒されなくちゃいけないのかな。」

「ドラゴンになる前はね。今はもう人類の敵になったんだ。村は廃村寸前。騎士団も30人以上死んでる。」

「私とおばあちゃんもそうなってたかもしれないね。」

「情が移った?ドラゴン討伐は可哀想?」

「正直複雑な気持ちはあるよ。魔物はみんな元人間だもん。これぐらいの話は予想できてるよ。私はおばあちゃんを助けるの為に魔王を倒すんだからこんなところで躊躇って逃げたりはしないよ。」

「マグマだらけで近づくことも出来ないらしいけど。」

「それなら大丈夫。私の氷魔法で歩けるように出来るから。」

「昨日みたいに魔法が効かないかもよ?」

「そうしたら諦めて帰るわよ。」

「え?」

「は?近づけないのに何しに行くのよ。」

「そ、そうだな…。」

猪突猛進するしか脳がないと思っていた。

マグマの上を燃え尽きるまで走るわよ!とか言われそうだと思っていたが意外と現実的な返答で拍子抜けすると同時にランは本気でドラゴン討伐で勝つつもりでいるんだと思った。

「魔法が尽きたら俺は焼け死ぬから守ってくれよ?」

「そんなことになる前に仕留めるわよ。」

そして俺達はベッドが2つあるのに1つのベッドに一緒に入り寝た。

2人で寝ると余計暑くなるから嫌だとランに言われたが、俺が手を握って寝たら明日勝てる気がすると言って一緒に寝て貰った。

 

 

 

 

 

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