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君だけの勇者様  作者: ama
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第1話 田舎の平凡な少年

俺の名前はクーデル。十四歳。

この田舎村ハーデスに生まれ育った平々凡々な男だ。剣術も普通。勉強も普通。性格も普通。何も面白味もない男。それが俺だ。

「よぉ!クーデル!」

「カイト…。」

こいつはカイト。俺より一歳年上で、何でも出来るやつだ。

剣術も勉強も性格も何もかも才能に恵まれた完璧無敵な勇者様。

こんな田舎町だからよく面倒を見てくれる兄のような存在。

小さな頃から剣術も勉強も何もかも教えてくれた。

一歳しか違わないのに雲の上のような存在だった。

カイトに教えて貰えなければ俺は落ちこぼれの劣等生だっただろう。

カイトのお陰で普通レベルになれたのだ。毎日努力して努力して平々凡々な普通のレベル。

カイトの足元にも及ばない。こんな出来損ないな俺の面倒もよく見てくれる素晴らしい性格も持ち合わせていて本当に完全無敵な存在。それがカイトだ。

田舎町のハーデスには学校は一つしかない。一つ上のカイトも同じクラスだ。

「クーデルはいつも同じ時間に登校して偉いなぁ。」

「別に…こんなの普通だよ。」

「普通のことを当たり前に毎日継続することが凄いことなんだよ。」

「俺のことをそんなに褒めてくれるのはカイトだけだよ…。」

「俺以外にもいるじゃねぇか。お前のことを毎日褒めたくるマリナが。」

マリナは俺と同い年の十四歳の女の子だ。

マリナはとても愛らしくとても可愛くて優しい女の子だ。

カイトとマリナと俺は幼馴染で、小さな時からずっと一緒だった。マリナも俺達と同じクラスの生徒だ。

それとあと一人…

ガラッ

来た。俺達のクラスの最後の生徒。ラン。俺より一つ下の女の子。

ランも凄く可愛い女の子だけど無口であまり喋らない。

ランは村の外れの丘で魔法使いのお婆さんと暮らしているから学校でしか接点がない。

学校でも無口だからあまり話したことがない。挨拶ぐらいだ。

「ラン。おはよう。」

カイトが声を掛ける。

「…おはよう。」

ランは無愛想だけれど、無視したりはしない。

俺達と仲良くするつもりはなさそうだけれど、嫌ったりもしていない。

せっかく同じ村の同年代の子供だからもっと仲良くなりたいと俺は思っているけれど、学校が終わってからはいつも家に真っ直ぐ帰り魔法の練習を毎日しているらしい。

ガラッ

「はぁはぁはぁギリギリセーフ…。」

「マリナはいつもギリギリすぎるぞ。クーデルを見習え。」

「うるさいなぁ。間に合ってるんだからセーフなの!」

マリナも教室に着き、いつもの日常が開始する。

俺達四人クラスで先生は一人。田舎町あるあるだ。

俺達四人はこの田舎から出たことがない。

汽車は一応通っているけれど、田舎町だが、生活に困ったこともないし、ハーデスの村の人々はみんな助け合い、優しい人達ばかりだ。

この村で快適に過ごすことが出来るのにわざわざ外に出たいと思ったことはなかった。

いつも通り学校の授業が終わり、下校する。ランは一人すぐに家に帰るが、俺達三人はいつも一緒に下校する。

「もうすぐ魔王が復活するらしいぞ。」

「えっ!本当なの?」

「クーデルお前勇者になりたいって言ってたじゃねぇか。魔王が復活したら冒険の旅に出るのか?」

「そんな昔の話しないでよ。俺の剣術の腕前を知っているだろう?俺が冒険に出ても雑魚相手にボコボコに負けて終わるに決まってる。」

「いや?お前は雑魚相手には勝てるんじゃないか?ドラゴンとかは無理そうだが。」

「現実的にマジレスしなくていいから…。とにかく俺は冒険なんかしないよ。冒険に出るならカイトの方だろう?カイトなら魔王を倒す勇者になれるよ。」

「俺は勇者に興味ねぇからなぁ。この田舎町でマリナと一緒に過ごせたらそれで幸せさ。」

「えっ。ちょっと。恥ずかしいこと言わないでよ…。」

始まった。この二人はいつもこうやってイチャイチャしている。

かっこいいカイトと可愛いマリナ。それはそれはもうお似合いのカップルです。

俺だってマリナが好きだが、カイトに勝てるわけもなく。ただの当て馬の存在。

せめて俺がいなくなってから二人きりの時にイチャついてほしい。俺の劣等感だけが増して惨めな気持ちになるから。

「じゃあ俺はお邪魔みたいだから。また明日学校でね。」

「お邪魔だなんてそんなことないよ!」

「はいはい。ありがとうマリナ。じゃあね。」

俺は二人に別れを告げて家に帰る。カイトに勝てるわけがないんだから、戦う気にもなれはいよ。

平々凡々な俺に何の価値もないんだから。嫉妬とかそんな気持ちも湧かない。圧倒的に戦力に差があるんだ。

「ん?なんだこれ?」

畦道に鍵が落ちていたので拾い上げた。鍵を落とすなんて不用心だな。しょうがないから村長に届けに…

「それは私のだ。拾ってくれてありがとう。」

振り向くと魔法使いのお婆さんチャイナがいた。ランと一緒に暮らしている魔法使いだ。

「お礼にお茶でもどうだい?」

「いえ。拾っただけなので、お気になさらず。」

「そう言わず。飲んで行きな。」

「お礼に何かしてもらうほどのことはしていませんので…。」

「ばばあがお茶していけと言っているんだ。断る方が失礼だと思わんかね。」

「ありがとうございます…。是非お茶を頂きたいです。」

チャイナお婆さんってこんな高圧的な人だったけ…?笑顔で誘っているのにも関わらず、顔には緊張感が漂っていた。

そもそもチャイナお婆さんは家から殆ど出たことがなく、ハーデスの人々と一緒に話すことも少ない。

チャイナお婆さんとランは家に引き篭もって魔法の練習をしている。

だからこっちの道にいることが珍しい。

「あの。今日は珍しく外に出ていたんですね。」

「大事な鍵を探していたからね。」

それもそうか。鍵がないと家にも入れないからな。何でこんなところに鍵を落としたんだろう?いつも家にいるのに…。

チャイナお婆さんの家に到着する。先程の鍵で家を開けるのかと思ったが、違うらしい。家に着いたら鍵は既に開いており、ランが居た。

「ラン。お客様だよ。お茶を淹れてくれ。」

ランは俺の顔を見て驚いたけれど、すぐにお茶を淹れにキッチンへと向かった。

「お邪魔します…。」

十四年暮らしていたけれど、魔法使いの家に入るのは初めてだった。予想以上に魔法使いの家でびっくりしている。

禍々しい鍋や怪しい魔法書がたくさんあり、誰が見ても魔法使いの家だ。

「鍵を見つけてくれてありがとう。」

「それはもういいですから…。」

「この鍵は大事なものなんだ。お前が持っといてくれるか?」

「え?大事なものなら自分で持っていた方がいいのでは…。」

「年寄りの頼みは素直に聞くもんだろ?」

「でも…。」

「この鍵はもうお前のもんだ。」

「でもこの鍵の使い方も知らないですし…。」

「そのうちわかるから。」

「はぁ…。」

よくわからないが鍵を押し付けられた。

「もう一つ頼みがあるんじゃが。」

「何でしょうか。」

「私を殺してくれないか?」

チャイナお婆さんがそう言ったと同時に

ガシャーーーン

と音がした。ランがティーセットを割りそうになっていた。

そしてこっちをみて睨みつけていた。

「くそばばあ。まだそんなこと言ってんのか。一人の未来ある若者を殺人鬼にするとか正気かよ。」

「私を殺した人は勇者だよ。だから殺して欲しいんだ。」

「そんな必要はない!クーデルはこの話は聞かなかったことにして帰れ!!」

「無理だよ。魔王はもうすぐ復活する。私にはもう時間がないんだ。」

なんのことかわからない。お婆さんを殺す?俺が?ランっていつも話さないから知らなかったけれど、結構口悪いんだ…。

混乱していると外から大きな音がした。地響きのように鳴って禍々しい雲が上がる。

雷が鳴り、大雨が降り始めた。

「ほら。魔王が復活しちまった。」

チャイナお婆さんは黒い羽、黒いツノが生えてくる。禍々しいオーラを発しながら。

「もう人ではいられなくなっちゃったね。早めに殺してくれるか。勇者様。」

 

 

 

 

 

 

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