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6月7日 3本目

 この本は、実に重い。ページをめくってもめくっても、なかなか終わりはこない。宝来もそんな気持ちでサッカーをしているのだろうか?俺は、受験予定の大学偏差値を眺めていた。


 ー6月5日ー

 

 ボールをセットした唐沢は、鋭い目つきで宝来を見つめた。ここから、3本目。そろそろミスがでてもおかしくないタイミングだろう。


 永谷「こういう時って、どんなメンタルなの?」

 沢田「ハハハハ。知らねぇよ。キッカーじゃないし」

 永谷「なんとなく、わかるだろ」

 沢田「こういうのってさ、見てる方が緊張するよな」


 俺たちは、宝来と唐沢の方に視線を向けながら話していた。


 沢田「そろそろ、宝来も動く時じゃないかな?」

 俺 「どういうこと?」


 疑問に思った俺は、つい聞いてしまった?


 沢田「1本目も2本目もその場所にいて、何もしなかったんだろ?だったら、そろそろ、なんかするんじゃない?」

 俺 「あぁ。そういうことね」

 

 宝来は、先ほどと同じく、右に寄っていた。中沢は、笛を鳴らした。2本目同様、斜め後ろからボールに向かって走り出した。おそらく、唐沢は、左を狙う。そんな気がした。予想通り、強烈なシュートがゴールポスト付近に飛んでいく。

 しかし、そこには、宝来がいた。"ヤバい"。心の声が漏れそうだった。宝来は、大きくダイブし、目一杯、手を伸ばした。今の彼は、何を思うのだろうか?あんなに、ちゃんとしたアイツは久しぶりに見た。宝来の本気に負けた様に、ボールがゴールに吸い込まれることはなかった。

 サッカー部から大きな声が聞こえた。攻守交代。今度は、宝来がキッカーに。ボールを外した唐沢は、どこか落ち込んだ様子だ。ボールをセットし、悠然と唐沢の方を見ていた。そして、落ち込んだ唐沢にとどめを刺すように、宝来は、声をかけた。


 宝来「大丈夫か?」

 唐沢「うるせぇ」


 中沢の笛と同時に、宝来はボールを蹴り出した。今回は、ほとんど助走はしなかった。しかし、ボールは、外れるか入るかの微妙なところへ飛んでいく。キーパーの唐沢は、横っ飛びになる。右手の指に当たったが、ボールはそのままネットへ吸い込まれていった。


 沢田「決まったね」

 永谷「あぁ。決まったな。次は、唐沢決めるかな?」

 沢田「いや、その決まったじゃない」

 永谷「どういうこと?」

 

 この後の、沢田は、まるで未来を知っているかの様に話し続けた。俺は、何を言っているか全くわからなかった。

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