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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第3章《呪われし奴隷編》
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第35話『この奴隷、俺に売ってくれないか?』

新キャラ登場です。

と言っても今回は殆ど喋りませんが。

 翌日。朝食を食べた後、早速昨日の奴隷商人の元へ行こうと支度をしていた。


「奴隷ってどれぐらいの値段なんだろうな」

「大体5万〜100万ガルンと言われています。競りで売買されますので、値段は一定しないみたいです」

「なるほどな」

「お金、足りる?」

「いやもう余裕で足ります」


 何言ってるんですかユキさん。俺達って実は億万長者なんですよ?

 それこそ店の物“ここからここまで全部”とか言って買えるぐらいあるんですよ?


 とまあ、そんな会話をしながらも準備が整った。


「よし。じゃあ行くか」



 ◇◇◇◇◇



 スキル《追跡》を頼りに道を進んで行く。

 《空間把握》と《追跡》を照らし合わせながら進んで行くと、奴隷商人は昨日と同じ場所にいる事が分かった。

 宿を出てから数十分。俺達は奴隷商人のいる場所に到着した。

 大通りから脇道に逸れ、薄暗い道に入って行く。

 奴隷商の男は直ぐに俺達に気付いたようだった。


「すいません」

「あ? ああ、奴隷を買いに来たのか」


 檻の片付けでもしていたのか、道の端には檻が積み重なっていた。

 その手を止め此方(こちら)に歩いてくる。

 その後、男が発した言葉は俺の予想に反したものだった。


「悪いがもう奴隷は全部売れちまったんだ。他所を当たってくれ」


 その言葉には何処か苛立たし気なニュアンスが含まれていた。


「売れた? そこにいるのは売り物じゃないのか?」

「だから、そいつが売れたんだ。奴隷が欲しいなら他を当たってくれ」

「どういう事だ? まだそこにいるじゃないか」


 そう。奴隷は売れたと言っておきながら、そこには確かに昨日見た奴隷がいた。

 俺が少し強めにそう聞くと、男は嫌なの事でも思い出した様な表情と声で語り始めた。


 なんでも、この売られていた奴隷は今朝早く売れてしまったとの事だった。

 では何故売れた奴隷がまだここに居るのか。それはこの奴隷少女に理由があった。


「こいつ、呪いを持ってんだ」

「呪い?」

「ああ。触れたもんを何でも腐らせる呪いだよ。食いモンだろうと生き物だろうと鉱物だろうと、自分の体以外はそれが何であれ腐らせてダメにする。だから手を縛って袋を被せてんだ。今あいつがここに居るのは、買ったやつが準備があるとか何とかで一回帰ったからなんだよ」

「つまり予約をして帰って行ったと?」

「ああ、そういう事だ」


 だが、奴隷商の男の顔は不機嫌なままだ。


「売れたって言うのに随分浮かない顔だな」

「ああ、それはな――なあ、少し愚痴ってもいいか?」

「え? ああ、まあ良いけど」


 本来なら、もうここに用事はない。奴隷は売れてしまっていたのだから。

 なのでこの男の愚痴を聞く理由も無ければ、そんな仲でも無い。

 聞く事にしたのは単なる気まぐれだ。

 だがその話を聞いて、俺はこの場を黙って離れる訳には行かなくなってしまった。


「あの奴隷を買った奴がここの領主なんだけどよ、そいつがクソみたいな趣味を持っててな」

「というと?」

「拷問だよ拷問。買った奴隷なんかを拷問して犯して殺すんだ。噂じゃ街から攫ってるなんて話もある」

「確かにそれはアレな趣味だが……」


 奴隷商がそれを言うか? というのが俺の率直な意見である。

 奴隷を扱っている奴が何を今更。


「でも売れたんなら良かったじゃないか。それに必ずそうされるとも限らないだろ」

「おい兄ちゃん忘れたのか? この奴隷は呪い持ちなんだよ。それも高位の神官ですら解除できないほどのな。そんな奴隷を嗜虐趣味を持つやつが買うって言ってんだぞ? 速攻で腕切り落すに決まってんだろ」


 言いたい事は分かる。

 もし呪いが手に触れた物だけに作用するなら、腕を切り落とせば済むだろう。

 嗜虐趣味を持つ奴ならそうするかも知れない事も十分想像出来る。

 だがそれをこの男が気にする理由が分からない。


「でも、お前の仕事は奴隷を売る事だろ? 売れたなら良いじゃないか」


 そんな俺の質問に、奴隷商の男はあからさまに溜息を吐いて言葉を続ける。


「兄ちゃんは知らないかもしれないが、奴隷ってのは売るまでにも手間が掛かるんだ。競り落とした後、売れるまで食事を用意して、檻の掃除もしなきゃならない。そんな手間暇かけて用意した奴隷を相手は“壊す為”に買いに来るんだぞ? 腹立たねえか?」

「……なるほど」


 この言葉で理解が出来た。

 詰まる所この男が言いたいのはこういう事だ。

 例えば俺が料理人だったとする。

 そこに客が来て料理を注文する。

 だがその客は、食べる為に料理を注文するのではなく、床にぶち撒ける為に注文すると言う。

 そんな奴に料理を出したいと思うだろうか。

 否、思わない。

 例え金を払われてもお断りだろう。

 恐らくこの男も似たような事を言っているのではないかと思う。

 奴隷のちゃんとした用途などは知らないが、少なくとも殺す為に奴隷が存在しているのではないだろう。


「ん……?」


 そんな事を考えていると、何かに服が引っ張られるような感じがした。

 隣に目を向けると、服を引っ張っていたのはユキだった。

 それも、少し悲しそうな顔で俯いて。


 ――そうだった。俺はこの少女を助ける為に、この少女に手を差し伸べる為に来たのだ。

 売れたという言葉を聞いてそれをすっかり忘れていた。


 ユキが助けたいと言ったのだ。

 俺はそれを是が非でも叶えなければならない。


「あ……」


 ユキの頭に手を乗せ、念話で、


『任せとけ』


 と答える。


 ――さて、どうするかね。

 取り敢えずは……。


「おっさん。ちょっと聞きたい事があるんだが」

「ん? ……まあ、愚痴も聞いてくれたからな。なんだ?」

「あの奴隷を買った領主ってのは、奴隷を幾らで買ったんだ?」

「は? そんな事か? ――3万ガルンだよ。あの奴隷の値段は3万だ」

「……3万? 随分安くないか?」

「ああ、それはな――」


 そこで男は言葉を区切り、奴隷少女の檻の元へ歩いて行く。

 男に手招きされ、俺達もその檻に近づく。


「おい。こっちを向け」


 男がそう言うと、奴隷少女がゆっくりとこちらを向く。


「これは……」


 長い間檻の中に入れられていたからか、顔は汚れており、無表情で顔からは感情というものが読み取れない。

 肩上ぐらいの長さの髪は当然ながらボサボサだ。

 そして、こちらを見つめる2つの瞳は――左右の色が違っていた。

 右目はこの世界では珍しくない翡翠色だが、左目は炎のように赤い色だった。

 明るい場所で見ればさぞ綺麗に見えるだろうが、この場が薄暗い事に加え、少女の目には光というものが無く、今はくすんだ赤色にしか見えない。


「左右の目が違うって事は、分かるだろ?」


 え、そこで俺に振りますか。

 この世界じゃ虹彩異色症って何か特別な意味があったりするんだろうか。


『魔物との混血です。ご主人様』

「……魔物との混血って事か」

「ああ、そういう事。所謂忌み子ってやつだ」


 レイミアのナイスアシストで何とかで答える事が出来た。

 というか、魔物との混血ってあり得るのか?


『稀に人型の魔物と人間の間に産まれた子供や、アンデット系の魔物に憑依された人間との間に生まれた子供が魔物との混血になります。そして、そういった子供は決まって左右の目の色が違い、災いを呼び込むとして忌み嫌われます。恐らく、この少女が奴隷になったのもそういう理由ではないかと』

『なるほど。ありがとうレイミア』


 レイミアの口振りからして、これはこの世界の常識みたいだな。

 やはりこういう常識が抜けているのが問題だな。近い内にまた調べた方が良さそうだ。


「つまり、これが安い理由か?」

「その通り。――もう良いか? 俺にもやらなきゃいけない事があるんだ」

「いや、最後にもう一つだけ良いか?」


 顎をしゃくって先を促す男。


「――この奴隷、俺に売ってくれないか?」

「……は? おい兄ちゃん、最初に俺が言った事忘れたのか? この奴隷は――」

「分かってる。もう売れたんだろ? 3万ガルンで。――って言っても、まだ奴隷がここにいるから前金しか貰ってないだろうが」

「……何が言いたい」

「俺はそれよりも高い金額を出す。だから俺に売ってくれないか?」

「……幾らだ」


 勝った。男の答えを聞いてそう思った。

 俺が一番懸念していたのは、もう既に売れたからと取り合ってすらくれない事。

 だが男が金額を聞いてきた以上、こちらに譲ってくれる可能性が出てきた。

 だからこそ、俺はどれだけ金を積んでも、この男の首を縦に振らせなければならない。

 それには、男の予想を遥かに超える金額を提示する必要がある。


「……300万」

「…………は?」

「売値の100倍、300万出す。だから俺に譲ってくれ」

「なっ……」


 驚いている男に追い打ちをかける為、アイテムボックスから袋を3つ取り出す。

 一つの袋にはそれぞれ100万――金貨100枚――ずつ入っている。

 そのうち一つを男に手渡す。


「確認してみろ」

「……マジかよ」


 中身を確認した男が呟く。


「残りの2つにも100万ずつ入ってる。おっさんがその奴隷を俺に売るって言えば、これは全部おっさんの物だ」

「……」


 少しの間の沈黙。

 数分経過した頃、男がゆっくりと口を開く。


「……1つ、聞かせてくれ。兄ちゃん一体何者だ」

「ただの冒険者だよ」


 “魔力を流していない”ギルドカードを取り出してそう答える。隣にいるユキとレイミアも同様に。


「……なるほど。じゃあこの金は本物みたいだな」

「じゃあ、俺に売ってくれるか?」

「俺としては売っても構わない。だが、俺はもうあの領主に売るって言っちまったんだ。あいつが戻ってきた時俺はなんて言い訳すれば良い?」

「それだけあれば暫くは働かなくても暮らして行けるだろ。俺に売った後は全部置いて此処から逃げればいい」

「……ハッ、そうだな。そうさせてもらう」


 そう言って男は奴隷の入っている檻に向かう。

 そして、ズボンのポケットから取り出した鍵で扉を開け、中の少女に声を掛ける。


「お前の飼い主が決まった」


 少女の体がピクッと跳ね、ゆっくりと檻から出てくる。

 立ち上がった少女の身長は150cmぐらいだろうか。181cmの俺とは頭一つ分ぐらい違う背丈だ。

 よく見ると首には金属で出来た首輪が付いていた。


「そんじゃ、これから従属の紋を刻む。この首輪に魔力を流してくれ」


 男に促され首輪に魔力を流す。

 その瞬間。


「うっ……ぁ……」


 目の前の少女が苦しそうな声を洩らすと共に、ジュッという何かが焼けるような音が耳に届く。

 それから直ぐ、ガキンと首輪から音が聞こえ、首輪が外れる。

 首輪が外れた少女の首には、鎖骨と鎖骨の間、頚窩(けいか)の辺りに小さな魔法陣の様な跡が付いていた。


「それが従属の紋だ。これがある限り奴隷は主人の命令に逆らえない」


 どうやらあの首輪はこの紋を付ける為の魔導具か何かだったようだ。


「まあ、Sランク冒険者に言う事でも無いと思うが、くれぐれも呪いには気を付けてくれ。責任は負えないからな」

「問題無い。おっさん“も”領主に見つからないようにな」

「もちろんだ」


 そう話していた所、両手を縛られ袋を被せられた少女が恐る恐るといった様子で近付いてくる。


「あ……あの……」

「取り敢えず、俺達の宿に行こうか。自己紹介はその後で」

「え……」


 少女の腕を優しく引く。

 ここで自己紹介する事を避けたのは、目の前の男に名前を知られるのを避ける為だ。

 万が一奴隷商の男が領主などに捕まってしまった際、俺達の名前を喋らないとも限らないからだ。

 Sランク冒険者だということはバレてしまっているが、領主もSランク冒険者に喧嘩を売ろうとは思わないだろう。


「それじゃあな。おっさん」


 奴隷商の男に残りの200万が入った袋を全て渡し、俺、ユキ、レイミア、奴隷少女を魔法効果範囲に入れ、魔法を発動する。


 〈領域転移/エリア・テレポーテーション〉


 瞬間、跡形も無く4人の姿が掻き消える。


「一体何者だ。あいつら……」


 3つの袋を渡された奴隷商のその声を聞いた者はいなかった。

実は左右の目の色が違うキャラって、キャラ付けが安易に見えてしまう気がして余り出したく無かったんですよね。

設定を変えようかなど考えたんですが、取り敢えずこのまま行きます。

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