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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第3章《呪われし奴隷編》
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第33話『はい。紛うことなく化け物です』

今回から第3章スタートです。

 フェイルムを出発して3日後。

 特にこれといった出来事もトラブルも無く、順調にサーバ帝国へ向かっていた。

 そんな俺達が今、何をしているかと言うと――。


「レイちゃん、お塩取ってくれる?」

「はい、ユキ様」


 昼飯が出来るのを待っていた。


 本来馬車で移動をする場合、必要な食料を予め持って行くのだが、アイテムボックスがある俺達は、食材と調理器具を持ち、出先で調理をするという方法を取った。

 別に予め調理した物を持って行っても良かったのだが、只でさえ座っている時間の多い馬車での移動だったので、多少は変化があった方が良いだろうと思ったからだ。


 因みに、馬は今休ませており、御者のおっちゃんにも料理が出来るのを待ってもらっている。


 何も無い場所から調理器具一式を取り出す俺達を見て、初日こそ驚いていたおっちゃんだが、3日目にもなると慣れてきた様で、今では何の違和感も無く食事に参加している。


「それにしても、旦那もそうですが、お二人も美人さんですねぇ」

「そうですね。本当に」


 なんて話をしながら食事が出来るのを待っている。

 俺の出番は食事の後、後片付けの時だ。


「ところで、サーバ帝国には後どれぐらいで?」

「後3、4時間ってところですかね。順調に行けば日が暮れる前には着きますぜ」

「そうですか」


 と、そんな話をしているとユキとレイミアが料理をテーブル――魔法で作り出した物――に並べ始める。


「さて、行きましょうか」



 ◇◇◇◇◇



 昼食を食べ、馬車を出してから2時間程経った頃。


「ん……」


 する事も無かったので、馬車の揺れに身を任せて睡眠を取っていた時、突然《気配察知》に何者かが引っかかる。

 馬車での移動中、《気配察知》と《空間把握》の効果範囲を自分を中心とした半径5キロの円にしていた為、これまでも近くの村や動物、時には魔物などが引っかかる事もあったのだが、今回感じたものはそのどれとも違っていた。


(待ち伏せしてる……?)


 引っかかった人数は全部で8人。

 皆一様に武装している。

 それだけでは冒険者と区別が付かないが、明らかに冒険者と違う点が一つ。

 全員が茂みに隠れるようにして伏せていた。

 勿論、待ち伏せをして魔物を狩る冒険者の可能性が無い訳では無いが、全員の視線の先にあるのは森ではなく、馬車などが通る為に平らに馴らされた道路。

 その者達の周囲には魔物などの影が見えない事からも、狙いは道路を通る何かだと考えられる。


(まあ、俺達を狙って待ち伏せしている訳では無いだろうが……一応警戒しておくか)


 この進むスピードであれば、待ち伏せポイントに着くのはまだ1時間程先になるだろう。


(ユキ達に伝えるのは……後で良いか……)


 再び襲って来た眠気に抗う事無く、俺の意識は闇へと沈んでいった。



 ◇◇◇◇◇



「……人様、ご主人様」

「……ん? どうした?」

「お休み中すいません。実は――」

「待ち伏せしてる奴らの事か?」

「え? あ、はい。お気付きになっていたんですね」

「ああ、ちょっと前にな」

「……なんの話……?」


 そこでユキも目覚める。

 ユキが完全に覚醒するのを待ってから、話を進める。


「それで、どうするの?」

「スルーしてくれるならこっちも無視するけど、出てきた時は……その時考えよう」


 待ち伏せポイントまで約1キロ。

 後10分と言ったところか。


「おっちゃん」

「はい? どうしたんです旦那?」

「ここから1キロ先ぐらいに誰かが待ち伏せしてる。何かして来ても俺達が対処するから、おっちゃんは馬が暴れないようにして欲しい」

「りょ、了解した」


 さて、何をしてくるのかね。



 ◇◇◇◇◇



「さて、そろそろだな」


 待ち伏せポイントまで約300メートル。

 何者かが隠れているであろう茂みが目視で確認出来る。

 未だ相手に動きは見られないが、此方から見えている以上、相手も此方の存在には気付いている筈だ。


 ゆっくりではあるが、確実に近付いて行く。

 といっても俺達に大した緊張感は無く、あるのは、そんな場所で何時間も何を待っているのか、というちょっとした興味だけだ。

 尤も、御者のおっちゃんはそうも行かないだろうが。


 馬車が盗賊や山賊に襲われるなんてのは良くある話だ。

 その為、馬車に乗る時は大抵冒険者などの護衛を付ける。

 低位の冒険者が馬車を使う際には、ギルドに高位の冒険者を護衛に付けてもらえるように依頼出すなんて話も聞く。

 それ程までに山賊や盗賊といった類の者達は実力がある。


 そんな奴らがこの先に居ますよ。と予告されているのだ。

 俺達がSランクの冒険者という事を知らない御者のおっちゃんからすれば、如何にかすると言われても不安は残るだろう。


 まあ、俺達がSランク冒険者だと教えてあげれば良いだけなのだが、そういった事を面倒がってしないのは、俺の悪い所なのかも知れない。

 何故なら、所詮御者のおっちゃんは“他人”なのだから。

 他人に優しさを分けてやる程、俺は優しくなれないから。


「いつからこうなったんだっけな……」

「……リウス?」

「ん? なんでもないよ。そろそろだから、一応警戒しておいてくれ」

「……うん。分かった」


 気付けば、待ち伏せポイントまで残り50メートル程になっていた。

 すると、その瞬間。


「そこの馬車! 止まれ!」


 バサッと茂みから飛び出して来た、8人の武装した男達。

 視界に映った瞬間《敵情報解析》を発動させ、全員のステータスを確認する。


(平均レベルは50ぐらいか。一番最初に飛び出してきた奴だけ58だな。あいつがリーダー格かな)


 ま、《気配察知》から伝わって来る気配で、全員大した強さではない事は分かっていたのだが。


「旦那! どうしやす⁉︎」

「そうだな……レイミア」

「はい」

「最初に出てきた奴は捕縛してくれ。他は殺しても構わない」

「畏まりました」


 レイミアが馬車から出ようとすると、男達も馬車の方へ近付いてきた。


「安心しろ。抵抗しなきゃ命は取らねえよ」


 口を開くのは、レベルの一番高いリーダー格の男。


「お前ら! 馬車ん中調べろ! 女は傷付けんなよ!」


 狙いは女か。となると目的は人身売買かね。

 俺がそんな事を考えている間に、レイミアは馬車から降りていた。


「お? これはこれは、今回は当たりじゃねえか」


 男達がニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべるが、そんなもの見えていないかの様にレイミアは男達に向き直り、自ら近付いて行く。


「レイちゃん、大丈夫かな?」

「あんな奴らじゃ指一本触れられないよ」


 レイミアが近づいて行くのに合わせ、男達も近づいて来る。

 リーダー格の男は後ろに下がったままだ。

 リーダー格とは別の男の前までレイミアが向かった所で――。


「自ら来るとは良い心掛けだなぁ。お前は俺達が――」


 ――ドスッ。


 レイミアの手が、男の心臓を貫いた。


「……は?」


 ドサリと男が崩れ落ちる。

 体から引き抜かれたレイミアの手には、一滴の血も付いていなかった。


「なっ……。――お前ら、あの女は始末だ! 全員で掛かれ!」


 リーダー格の男の声で、その場にいた全員がレイミアへ飛び掛る。

 思いの外切り替えが早いなぁ、などと考えている内に戦闘は終わっていた。

 いや、あれは戦闘と言える物でも無かったが。


 1人目は最初の奴と同じく心臓を貫かれて。

 2人目は首を落とされて。

 3人目は腹部に拳を叩き込まれて。

 4人目は腹を引き裂かれて。

 5人目は蹴りを頭に打ち込まれて。

 それらを見て逃げようとした6人目は、後頭部に指を刺し込まれ死亡した。

 残るはリーダー格の男のみ。


「な……お前……バケモノか!」

「はい。紛うことなく化け物です」

「ふざける――」


 そこまで言いかけて、高速で接近し後ろに回り込んだレイミアに、手刀を首に打ち込まれ、男は呆気なく気絶した。

 というか俺初めて見たな。首トン。

 アレって実際に出来るもんなのか。

 いや、レベル200越えの筋力が有ればこその芸当か。

 たしかアレって脳震盪起こすから危険とか……って、7人殺した後に言う事でもないな。


 俺とユキも馬車から降り、レイミアの元へ向かう。

 普通に人が死んでいるので、ユキに見せない方が良いかも、なんて思ったのだが、ユキ曰く、もう耐性は出来たとの事。

 考えてもみれば、何百という魔物魔獣を殺しているのだから、嫌でも耐性は付くというものだ。

 因みに、御者のおっちゃんは話し掛けても反応が無いので放置する。

 レイミアは既に倒れた盗賊と思われる者達の所持品の調査をしていた。


「何か見つかったか?」


 “何か”とは勿論この男達の正体が分かるような何かだ。


「武器以外は特に何も。ですが――」


 そう言って差し出してくるレイミアの手には、真っ黒なカードが乗っていた。

 レイミアからそれを受け取る。

 見た目は俺の持つSランク冒険者のギルドカードと酷似しているが、冒険者ギルドのマークである剣の刻印が無い。

 触った感触から、何らかの鉱石で出来ているのが分かる。

 唯見ていても何も分からないので《全アイテム鑑定》を発動させる。


『ギルドカード』

 ・ギルドに所属する者の証。

 ・所有者:マクス・ダーボ


「ギルド、カード?」


 もしかして、これも冒険者ギルドのギルドカードなのだろうか。

 確認の為、自分のギルドカードも取り出しスキルで確認する。


『ギルドカード/Sランク』

 ・冒険者ギルドに所属するSランク冒険者の証。

 ・所有者:リウス


 表示された情報は盗賊が持っていた物と少し違っていた。

 ランクが書かれておらず、俺のギルドカードには『冒険者ギルドに所属する』と書かれているが、盗賊の物には『ギルドに所属する』としか書かれていない。

 些細な違いだが、違いであることに変わりは無い。


「まあ、分からない事は聞いてみよう。その為に1人生かしておいたんだし」


 気絶しているリーダー格の男の元へ行く。


「でも、聞くって言ってもどうやって聞くの?」

「普通に聞いても答えてくれるか分からないからな。そこはレイミアに手伝って貰う」

「《意思操作》ですね」

「ああ、それで行けるか?」

「以前もその様に使っていましたので大丈夫です」

「なら、頼む」


 俯せに倒れるリーダー格の男を仰向けにし、顔を叩いて起こす。


「ぐ……」


 目を覚ました男の顔をレイミアが両手で掴み、目を覗き込む。


 《意思操作》


 スキルが発動すると同時に、男の体がグッタリとし、目から光が失われて行く。


「質問しても大丈夫です」

「分かった。――まず、お前達は誰だ。何故あんな場所で待ち伏せをしていた」

「俺はリキ・ラシル。ギルドの者だ。あそこには女を攫う為にいた」

「何故そんな事を」

「ギルドからの依頼だったからだ」

「ギルド?」


 人攫いをギルドが依頼として出すか?


「ギルドっていうのは冒険者ギルドの事か?」

「ギルドはギルドだ。冒険者ギルドとは違う」


 何だそれ……冒険者ギルドとは違う組織って事か……?


「じゃあ、ギルドカードは持ってるか?」


 ポケットからリキと名乗る男がカードを取り出し、魔力を流して文字を浮かび上がらせる。

 《全アイテム鑑定》を使い確認するが、やはり冒険者ギルドのギルドカードとは少し違う物だった。


「お前の言うギルドには、冒険者の様にランクは存在しないのか?」

「存在しない。依頼は全てギルド側が提示し、俺たちは選択肢の中から選ぶだけだ」

「そのギルドは何処にある」

「ギルドに拠点はない。接触はいつもギルドからだ。本拠地があるという噂もあるが、俺は知らない」

「……」


 そんな組織があるのかと思ってしまうが、今正に目の前にその組織に所属すると言っている人物がいる以上、信じない訳にはいかない。


「自分が受けた依頼が誰からの物か分かるか?」

「全てはギルドが仲介している。俺たちは依頼を受けて報酬を受け取るだけだ」


 聞けば聞くほど、本当にそんな組織が存在するのかと思ってしまう。

 人攫いを依頼として出すぐらいなのだから、それぐらいの警戒が必要なのかも知れないが。


「これ以上聞いても分かることは無さそうだな」

「冒険者ギルドとは違うギルド……レイちゃんは聞いたことある?」

「いえ、聞いたことありません」

「……まあ、分からないなら仕方ない」


 もう聞く事は無いと判断し、男を気絶させる。

 尤も、俺には首トンなどという器用な事は出来ないので、魔法を使ってだが。


「どうするの?」

「取り敢えず、冒険者ギルドに引き渡しかな」


 男を担いで馬車に戻ると、御者のおっちゃんが唖然としてこちらを見ていた。


「どうしたんです……?」

「いや……嬢ちゃんも強いんだな……」

「え、ええ、まあ」


 そりゃ、14〜15歳の少女が6人の男を続けざまに屠っているのだから驚くのも無理はない。


 眠っている男を馬の背に乗せ――魔法により眠っているので振動程度ではまず起きない――俺達も馬車に乗り込む。


「それじゃ、お願いします」

「お、おう」


 若干困惑気味のおっちゃんを他所に、俺達は先程盗賊に襲われた事などもう忘れたかの様な、警戒心の欠片もない雰囲気を纏って、帝国に着くまでの間再び眠りにつく事にした。

今回の第3章は主人公『リウス』という人間がどんな人物なのかを書けたらいいなぁ、と。

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