↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイバーパンク相撲バトル ネオ両国シティー場所  作者: 秋松カブトムシ
第2幕 襲来! ドスコイトルーパー!
PR
5/21

襲撃者の正体

第2幕! 雷電のセーフハウスを襲っているのは何者なのか!?

 ネオ両国シティーの外れ、寂れた居住エリアの一角。その旧式素材《アスファルト》で舗装された道を、おいどんはすり足で駆け抜ける。


「たのもー!」


「たーのーもー!!」


 廃相撲部屋《セーフハウス》に近づくにつれ、その声は大きくなってきた。併せて、何かを叩きつけるような音も聞こえ始める。


「たー のー もーっ!!!」


 最後の角を曲がり、傾いた門をくぐった。すると、その正体が明らかになる。


バシンッ! バシンッ!


 2人のドスコイトルーパーが玄関に張り手をしていたのだ。この挨拶《ノック》のやり方、間違いない。力士に連なる者だ。


「ごっつぁんです。何か御用ですか?」


 おいどんの声に気がついた2人は、振り返ると手刀を切った。よく練られた所作だ。昨日今日で身につく滑らかさではない。


「「ごっつぁんです!」」


 なんと、2人とも女性か。その返事で確信できた。ヘルメットのせいで遠くからの声はくぐもって聞こえたし、全身を覆う装甲服《まわし》のせいで、シルエットも力士にしか見えなかったのだ。


「まぁ、上がっていくでごわす。用件は中で伺うでごわす」


 おいどんは、髷アンテナからの電波で玄関を解錠。ガラガラと引き戸を開け、2人を招き入れる。


「「お邪魔します」」


 2人はまるで双子のように、同じ動きで玄関をくぐった。



◇◇◇



「何もないところでごわすが、まぁ腰掛けるといいでごわす」


「「ありがとうございます」」


 寂れた廃相撲部屋《セーフハウス》の中、稽古部屋の脇にある一段上がった場所。畳の間においどん達は腰掛けた。


「わぁ〜これが本物の相撲部屋の光景なんですね!」


「こら、ジロジロ見ないの」


 呑気に見渡す片方を、もう片方が嗜める。しかし、ヘルメットの目線は2人とも相撲部屋を観察していた。興味津々な彼女達とは裏腹に、寂れた土俵は虚しく中央に鎮座する。もはや稽古をする者はいない。誰がための土俵なのか。


「ははは。好きなだけ見るといいでごわす。目くじらを立てるような奴も、もういないでごわす」


 むしろ、興味を持ってくれてありがたいくらいだ。兄弟子に弟弟子、そして親方。皆、去ってしまった。ここに残るは、雷電《おいどん》ただ独りなのだから。


「それで、お二人は何者でごわすか?」


 虚しいことを考えても仕方ない。膝を叩いて意識を切り替え、畳の上で正座する2人に向かい合う。


「自己紹介がまだでしたね。失礼しました」


 しっかりしている方のドスコイトルーパーがそう言うと、ようやく2人はヘルメットを脱いだ。暑かったのだろう。ふはぁ! と息を吐き、湿気った髪があらわになった。


「小雪《こゆき》と申します。階級は三段目《サンダー》です」


 そう名乗った少女は、暗い茶髪に青いメッシュカラーの入ったショートヘアをしている。


「私は小春《こはる》です。階級は序二段《ジョニー》。よろしくです!」


 少し砕けた雰囲気の少女。桃色の髪をポニーテールでまとめている。どうせなら力士らしく髷を結って欲しいものだが、階級が階級だ。きっと許されないのだろう。


「若いでごわすな。とはいえ、番付《ID》が付与されるとは……優秀でごわす」


 三段目《サンダー》に序二段《ジョニー》。どちらもドスコイトルーパー式の正式な階級だ。


「いえ、そんな……私たちは跳ねっ返りです」


 おいどんがそう言うと、小雪は焦ったように手を振って否定する。その反応は、謙虚さの表れ……にしては含むところが感じられた。


「と、言うと?」


「管轄だ、手続きだーって。軍警察は動きが遅いんです。それで、我慢できなくて……」


 今度は小春が身を乗り出して訴えてきた。その気持ちはよく分かる。管轄だの根回しだの、組織にはしがらみが多すぎるのだ。特に、政治が絡むとなると……


「それで除隊を考えていたのですが、私達を見かねた大関《オズ》ボーンからあなたを紹介されたのです」


「おぉ、そうでごわしたか」


 小雪の口から出た名前に、思わず笑みがこぼれる。大関《オズ》ボーン。ブラック・鯖寿司《サバス》で名高い男。ネオ武家屋敷で指揮をしていた、大銀杏アンテナの彼である。


「はい! こちら、大関《オズ》ボーンからのお手紙です」


 小春が封筒を取りだし、こちらに差し出してきた。髷アンテナで一言言ってくれればいいものを。しかし、手紙とは古風な。いかにもあいつ(ボーン)らしい。


「少し読ませてもらうでごわす」


 封を切り、便箋を取り出す。内容に軽く目を通していくと、事情はもっと複雑なようだった。彼女達はこれを知っているのだろうか?


 しかし、それを確かめることはできなかった。


「ぬっ!」


「ひゃ!?」


「何ですかこの音!?」


 外からバキバキと木材がへし折れる音、続いて何かの地響きがしてきたのだ。


「おいどんが見てくるでごわす!」


「私も行きます!」


「待って私も〜!」


 急ぎ立ち上がると、2人も後に続いた。



◇◇◇



 玄関をくぐると、先程まであったはずの寂れた門が崩れている。木製とはいえ、相撲部屋らしく重厚な造りだったのに、それを壊すとは……


「これはいったい……」


 小雪も驚いた様子だ。


「あれが、原因でごわすな」


「ゴワッ!?ゴワ〜、ゴワ〜ス!!!」


 おいどんの目線の先には、門を壊したであろう、力士と呼び難い贅肉の塊が起き上がれずにもがいていた。

贅肉の塊……いったい何力士なのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。