雷電よ、魚群となれ
「突入っ!!」
その掛け声と共に、同心チーフに率いられた足軽ガードマン達が突入してきた。先程の破戒僧とは打って変わり、規律の取れた動きを見せている。
「目標、見当たりません!」
足軽ガードマンの一人が同心チーフに報告している。おいどんは壁の通気ダクトに身を潜め、カバーの隙間から連中の様子を窺った。
「天然力士を探せ!」
「ちゃんこの匂いが残っている まだ近くにいるはずだ」
「姿が見当たらないぞ。まさか……光学迷彩力士か!? 総員警戒せよ!」
明後日の方向を探し始めた敵に、思わず笑みがこぼれる。今のうちにダクトを通って脱出すれば、万事解決。
の、はずだった。
「……!?」
通気ダクトを登り、壁から天井へと進んだところで身動きが取れなくなってしまう。どうやらおいどんは、ダクトに詰まってしまったらしい。
体をよじるが、動かない。進めないし、下がれない。これはマズイことになった。
焦りからか、ダクトに密着しているせいか、体が熱くなるのを感じる。同時に正面からやって来る埃っぽい風が、おいどんを嘲笑うようであった。
「……かくなるうえは!」
発見される覚悟を決め、おいどんは手足をバタつかせた。釣り上げられたごま鯖のように。
ビチッ! ビチッ! ビチビチビチッ!!
釣り上げられた鯖のごとくビチビチと跳ね、ダクトを押し通る。鮪でも、鰤でもない。おいどんは今、新鮮なごま鯖だ!
そしてその音は、ダクトを通じ、倉庫中に響き渡る。
「な、なんだこの音は! 出どころを探せ!」
「ダメです! 反響して場所が分かりません!」
「魚群探知機を持ってこい!」
魚群探知機!? それはマズイ。このままでは新鮮な魚として水揚げされてしまう。おいどんは跳ねる速度を加速させ、ダクトを押し進んだ。
「気をつけろ! あちこちからネジが落ちてくるぞ」
「振動で外れたんだ!」
敵は気を取られている。これはチャンスだ。そう思い通気口の出口へと真っ直ぐ進んだ。しかし、おいどんの体は宙に浮くことになった。
「ごわす!?」
「ダクトが落ちてくるぞ!」
あちこちでダクトのネジが外れた結果、倉庫の天井に連なるダクトというダクトが落下し始めたのだ。おいどんはダクトに挟まったまま、ダクトごと地面へと落ちている。
「どすこいぃぃぃっ!」
「うわぁぁぁっ!?」
勢いを活かすべし! ダクトごと転がるおいどんは、混乱する足軽ガードマン達を突破し、搬入口を突き破る。そして、建物から飛び出すこととなった。
◇◇◇
「雷電さん!?」
「無事でよかった〜」
シャルズの建物の外。少し離れた道路の物陰に隠れていた小雪達が駆け寄って来た。
「雷電さん、抜けられそうですか?」
小雪に言われ体をよじるが、やはり抜け出せない。
「無理でごわす」
「ん〜、転がして帰ろっか」
結局、小春に転がされながら廃相撲部屋へと向かうのだった。
おいどんはバターにならないよう、意識を保つのに必死だった。




