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使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~  作者: チョコ大福


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33/53

第33話:地下の隠れ家と、重なり合う光

登場人物

レイン・アークライト

主人公。アークライト家を出奔し、ミニドラゴンのファル、ウルフのフェリル、小型ゴーストのポルカ、召喚師の少女シルビア、白銀の狐ルナ、グリフォンのギルと共に旅を続ける心優しき召喚師。

ファル

レインの相棒である手のひらサイズのミニドラゴン。地下の暗がりに少し警戒しつつも、みんなを守ろうとお兄ちゃんとして頼もしく振る舞う。

フェリル

レインの相棒である小さなウルフ。優れた嗅覚と感覚で、地下水路の巡回兵の気配や安全な抜け道を正確に嗅ぎ分ける。

ポルカ

小型ゴーストのマスコット。暗く湿った地下水路を歩く仲間たちのために、淡く温かい燐光を放って足元を優しく照らす。

シルビア・ローゼンベルク

実家の本拠地「ローゼニア」で、虐げられた人々を救うために立ち上がったエリート召喚師。かつて自分を指導してくれた恩師との再会を果たす。

ルナ

シルビアの相棒である気高く美しい白銀の狐。隠れ家に漂う魔獣たちの深い悲哀を察知し、静かに寄り添う。

ギル

誇り高い魔獣「グリフォン」の幼体。狭い地下水路でも器用に翼をたたみ、足音を忍ばせてレインたちを護衛する。

ライル

レインたちに救われた見習い召喚師の少年。仲間たちが身を寄せる地下の隠れ家へ一行を案内する。

ヴァルター

【新キャラクター】かつてローゼンベルク家でシルビアの教育係を務めていた初老の元上級召喚師。当主の冷酷なやり方に反発して出奔し、地下の隠れ家で虐げられた者たちを束ねている。

前書き

『使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~』第33話をお届けします!

前回、見習い少年のライルを救い出し、ローゼンベルク家の裏で苦しむ人々が身を寄せる「地下の隠れ家」の存在を知ったレインたち。第32話では、地下水路の奥深くに隠された採掘場跡へと足を踏み入れ、そこで虐げられてきた多くの召喚師や魔獣たち、そしてシルビアの元恩師であるヴァルターとの感動の再会を描きます。ぜひじっくりとお楽しみください!

白薔薇の都ローゼニアのきらびやかな大通りから遠く離れた、打ち捨てられた古い裏路地の奥。

朽ちかけた石造りの建物の陰に、地下水路へと続く重厚な鉄の格子扉がひっそりと隠されていた。

「……ここです。この格子扉の奥が、昔使われていた古い地下水路に繋がっているんです。ここからなら、本家の警備隊や巡回兵の目を完全にくぐり抜けて、僕たちの隠れ家へ行くことができます」

見習い少年のライルが周囲を警戒しながら、腰に提げた小さな真鍮の鍵を格子の鍵穴へと差し込んだ。カチリと鈍い金属音が響き、錆びついた扉が音を立ててゆっくりと開かれた。

扉の向こうからは、ひんやりとした湿った空気と、水滴がポタポタと岩肌を打つ規則正しい音が漂ってきた。

地下へと続く石段は薄暗く、一歩足を踏み外せば底の見えない暗闇へと滑り落ちてしまいそうな険しさだった。

「わあ……中はすごく暗いんだね。足元が滑りやすそうだよ」

ポルカがフワフワと宙に浮かび上がると、その小さな霊体をポッと優しく輝かせた。淡いエメラルドグリーンの光の粒子が周囲をふんわりと照らし出し、濡れた足場を安全に見通せるようにしてくれる。

「ありがとう、ポルカ。助かるよ」

レインが優しく微笑み、足元に気を配りながら階段を下りていく。

フェリルは低く身構え、優れた嗅覚を働かせて前方の空気の流れを丹念に確かめていた。

「ワンっ……」

短く鼻を鳴らして「危険な追手はいない」と主へ知らせると、フェリルはトコトコと軽やかな足取りで先頭を進み始めた。

肩の上のファルも、暗がりに目を凝らしながら『レイン、僕もいつでも青い炎を出せるからね! 何かあったらすぐ言って!』と、小さな翼をパタパタさせて頼もしく胸を張る。

ギルもまた、天井の低い通路に合わせて器用に黄金の翼を折りたたみ、「ボクだって暗いところはへっちゃらさ。足音を立てずに歩く特訓の成果を見せてやるぞ」と、音もなく静かに歩みを進めていた。

薄暗い地下水路の通路をしばらく歩いていくと、徐々に冷たい水音が遠ざかり、代わりに微かな温かい空気と、パチパチと薪が爆ぜるような微かな音が聞こえてきた。

「……見えてきました。あの崩れた岩壁の隙間の奥が、僕たちの隠れ家です!」

ライルが嬉しそうに小走りで駆け寄り、頑丈な木の板と鉄屑で補強された即席の防壁の前に立った。

ライルが壁の隙間をリズミカルに三回叩くと、内側からカチャリと重厚な掛け金が外される音がした。

ギィィ……と重い防壁が開かれた瞬間、レインたちの視界に飛び込んできたのは、想像をはるかに超える広大な空間だった。

そこは、かつてローゼニアの街が築かれる遥か昔に掘り進められたという、巨大な古代の地下採掘場跡だった。

高い岩の天井からは微かな自然光が差し込む通気口が幾重にも穿たれており、中央の広場にはいくつかの焚き火が焚かれていた。

しかし、その空間を満たしていたのは、穏やかな生活の気配だけではなかった。

広場のあちこちの岩陰や簡易的な毛布の上には、首元や四肢に痛々しい擦り傷を負い、怯えたように身を寄せ合う十数匹以上の魔獣たちの姿があった。彼らの首からは、かつて無理やり嵌められていたであろう「強制契約の首輪」が歪な形で引きちぎられた跡が残っていた。

そして、その魔獣たちの傍らには、粗末な布を纏い、疲れ果てた表情を浮かべた若い見習い召喚師や、一族の支配から逃れてきた街の若者たちが、不安そうに身を寄せ合っていたのだ。

「……これは……想像以上にひどい状況ね……」

シルビアは息を呑み、胸を締め付けられるような痛みにエメラルドグリーンの瞳を揺らした。

白銀の狐・ルナも、その美しい耳をピンと立て、悲哀に満ちた空気に心を痛めるように呟いた。

『……強制契約の首輪を無理やり外されたことで、魔力の循環を激しく乱された魔獣たちよ。肉体の傷だけでなく、魂そのものが深い恐怖に怯えているわ』

その時、隠れ家の奥から、一本の木製の杖を突きながら、がっしりとした体躯の初老の男が足早に歩み出てきた。

灰色の混じった短髪に、深い皺が刻まれた厳格そうな顔立ち。しかし、その瞳には仲間たちを守るための強い優しさと覚悟が宿っていた。

「ライル! 無事だったか! 訓練施設から戻らないので、もしや本家の警備隊に捕まったのではないかと心配していたのだぞ……! ……ん? そちらの方々は一体誰だ?」

男が警戒の色を強めて杖を構え直したその瞬間、シルビアの顔を真正面から捉え、その場に雷に打たれたかのように硬直した。

「……そ、そのお姿……まさか、シルビア様……!? シルビア・ローゼンベルク様なのですか……!?」

「……ヴァルター先生……?」

シルビアは目を見開き、信じられないというようにその初老の男を見つめ返した。

「ヴァルター先生……! 本当に、あなたなのね……! 数年前に一族の方針に反対して突然姿を消したと聞いていたけれど……まさか、こんな地下でみんなを守っていたなんて……!」

シルビアの目から思わず涙が溢れ出し、彼女は駆け寄ってその老人の手を取った。

ヴァルターと呼ばれた初老の男は、かつてローゼンベルク家においてシルビアの魔導の基礎と召喚術を教えていた元筆頭指南役だった。

当主が魔獣への暴力的な支配と強制契約の魔導具を本格導入しようとした際、ただ一人真っ向から異を唱え、一族を追放される形で姿を消していた恩師だったのだ。

「おお……シルビア様……! なんという奇跡だ……! ご無事で旅を続けられているという噂は風の便りに聞いておりましたが、よもやこのような姿で再会できるとは……!」

ヴァルターは震える手でシルビアの肩を抱きしめ、深い感動に声を詰まらせた。

しかし、周囲にいた隠れ家の召喚師たちや、警戒を解けない魔獣たちは、突然現れた「名門ローゼンベルクの令嬢」と見慣れない旅人たちに対し、まだどこか怯えと疑念の視線を向けたままでいた。

「ヴァルターさん……その人、本当に信じていいのかい? 本家の人間が、僕たちを捕まえに罠を張ってきたんじゃないのか……?」

一人の若い召喚師が、震える声でそう呟いた。

その不穏な空気を察したレインは、一歩前へと進み出た。

「皆さん、怖がらせてしまってごめんなさい。僕はレイン・アークライト。シルビアさんの仲間です。……僕たちは、誰かを捕まえに来たのでも、傷つけに来たのでもありません」

レインは穏やかにそう告げると、両手をゆっくりと広げ、足元に意識を集中させた。

――シュウゥッ……!

レインの足元から、眩いほどに澄み切った、美しく透き通るような青い魔方陣がふわりと広がった。

その光は、攻撃や威圧のためのものでは決してない。春の陽だまりのように温かく、そこにいるすべての命を優しく包み込む「絆と癒やしの波動」だった。

ファルが小さな翼を広げてその光に自らの純粋な熱量を重ね、フェリルが優しく一声吠えて魔力の循環を整え、ポルカが柔らかな燐光を散らし、ルナが神聖な月光の加護を注ぎ込む。

青い魔方陣の光の粒子が、地下採掘場の隅々まで満ちていき、傷ついて横たわっていた魔獣たちの体をふわりと包み込んだ。

「あ……っ……!?」

「魔獣たちの傷が……! 荒れていた呼吸が、みるみるうちに穏やかになっていく……!」

隠れ家の人々が驚嘆の声を上げる中、痛みに苦しんでいた魔獣たちが、次々と安らかな表情を取り戻し、ゆっくりと四本の足で立ち上がった。

首輪を引きちぎられた後遺症で濁っていた魔獣たちの瞳が、清らかな野生の輝きと、穏やかな知性を取り戻していく。

一匹の大きな角を持つ鹿型の魔獣が、おずおずとレインの足元へと歩み寄り、その温かい手のひらに自らの鼻先をそっとすり寄せた。

フェリルやファルもその魔獣の周りに寄り添い、お互いの体温を確かめ合うように優しく触れ合った。

「これが……力による支配ではない、本当の『絆』の魔力……。噂には聞いていたが、これほどまでに清らかで、奇跡のような力があるとは……」

ヴァルターは目を見張り、ポロポロと涙を流しながらその光景を見つめていた。

疑念を抱いていた隠れ家の召喚師たちも、自分たちの魔獣が心からの安らぎを得ている姿を見て、誰もが武器を下ろし、レインたちへ深い敬意と感謝の眼差しを向けた。

シルビアは毅然とした足取りで広場の中央へと歩み出ると、隠れ家の一人ひとりの顔をまっすぐに見据え、凛とした澄んだ声を響かせた。

「みんな、聞いてちょうだい。私はかつて、一族の冷酷なやり方から逃げ出した臆病者でした。でも、レインやこの仲間たちと旅をして、本当の強さとは何かを知りました。……魔獣を恐怖で縛り付けるローゼンベルク家の支配は、間違っています。私はもう二度と逃げません。この街のすべての人と魔獣が、対等に手を取り合って笑い合える世界を取り戻すために――私は、本家と戦います!」

シルビアのその力強い宣言と、揺るぎない覚悟の言葉は、絶望の底にいた地下の仲間たちの心に、消えることのない巨大な希望の炎を灯した。

「シルビア様……!」「俺たちも、ずっと悔しかったんだ……!」「一緒に戦わせてください!」

広場全体から、次々と立ち上がる召喚師たちの熱い声が湧き起こり、魔獣たちも呼応するように力強い咆哮をあげた。

レインは仲間たちの温かな熱気を感じ取り、シルビアと顔を見合わせて力強くうなずいた。

「ありがとう、みんな。力を合わせて、この街の不条理な支配を打ち破ろう!」

こうして、地下の隠れ家で虐げられていた者たちとレインたちの心は完全に一つとなり、ローゼンベルク家本家の支配システムを揺るがす反撃の基盤が整ったのだった。

しかし、まさにその時だった。

地下水路の入口の方角から、張り詰めた空気を切り裂くような鋭い爆発音と、冷徹な魔力の警報が響き渡った。

――一族の刺客たちによる襲撃の足音が、早くもこの隠れ家の目前まで迫っていたのである。

後書き

第33話「地下の隠れ家と、重なり合う光」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

地下水路の奥深くにある隠れ家を舞台に、シルビアのかつての恩師ヴァルターとの感動の再会や、レインの「青い魔方陣」による傷ついた魔獣たちの集団治癒、そしてシルビアの熱い決意表明を描かせていただきました。仲間たちの絆がさらに大きな輪となり、物語がいよいよ本格的な反撃へと向かうワクワク感が伝わっていれば幸いです!

次回の第34話からは、いよいよ一族の刺客との連戦が幕を開けます!

隠れ家を守るための激しい防衛戦の中で、ギルやルナの新技の兆し、そしてフェリルやポルカたちのさらなる奮闘にご期待ください……!

ブックマークや評価、いいねなどをポチッと押していただけると、執筆のモチベーションがものすごく跳ね上がります!

それでは、第34話でお会いしましょう!

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