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使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~  作者: チョコ大福


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17/53

第17話:霧の中の罠と、差し伸べられる手

登場人物

レイン・アークライト

主人公。アークライト家を出奔し、ミニドラゴンのファル、ウルフのフェリル、小型ゴーストのポルカ、そして召喚師の少女シルビアと共に新しい旅を続ける心優しき召喚師。知性的で柔らかな物腰と「僕」という一人称を好む。

ファル

レインの相棒である手のひらサイズのミニドラゴン。前回の戦いで習得した『フレア・スパーク』を胸に、仲間を守るため勇敢に霧の中へ踏み出す。

フェリル

レインの相棒である小さなウルフ。優れた聴覚と嗅覚で、霧の向こうで危機に陥る者たちの位置を正確に捉える。

ポルカ

小型ゴーストのマスコット。お化けでありながら少し怖がりだったが、レインたちと過ごす中で少しずつ勇気を持ち、幻影の力でサポートに奮闘する。

シルビア

名門の家出中で、レインのパーティに正式加入したエリート召喚師の少女。冷静な分析力で戦況を把握し、レインたちのサポートを行う。

ガレルト

名門出身の高慢な召喚師。力任せの命令と恐怖による支配で霧幻の谷の奥へ進もうとした結果、自身の魔獣たちから見放され、絶体絶命の窮地に陥る。

前書き

『使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~』第17話をお届けします!

前回、不気味な濃霧に包まれた「霧幻の谷」に足を踏み入れたレインたち。その先で、先を急ぐあまり傲慢なやり方で突き進んでいたガレルトのパーティが、思わぬ窮地に陥る瞬間を目撃します。第17話では、危機に瀕したガレルトたちを前に、レインたちがどのような選択を下すのかを描く、緊迫感と感動の波乱のエピソードです。ぜひじっくりとお楽しみください!

霧幻の谷の奥深く、その一層濃さを増した淀んだ霧の向こう側から、ガレルトの悲鳴とも怒号ともつかない切迫した声が響き渡った。

「くそっ……! なんだこいつらは! いつまで群がってくるんだ!」

「ガレルト様、もうダメです! このままではオークが持ちこたえられません!」

取り巻きの冒険者たちの恐怖に満ちた叫び声が、冷たい谷の空気を切り裂くように響いた。

「……! 音の方向は、あの岩山の裏手の広場ね。急ぎましょう!」

シルビアは険しい表情を浮かべながら魔導書を構え、足早に霧の中の小道を駆け抜けた。レインもそれに続き、フェリルを先頭にして一気に声の主の元へと急いだ。

数秒後、目の前にパッと開けた谷の広場に飛び込んだレインたちの目に飛び込んできたのは、あまりにも凄惨で、しかしどこか自業自得とも言える悪夢のような光景だった。

広場の中心で、ガレルトが引き連れていた巨大なオークや他の戦闘用魔獣たちが、全身に無数の傷を負いながらも、恐怖に怯えたような目でその場にしゃがみ込んでいた。その周囲を囲んでいたのは、通常の魔獣とは異なる、深い紫色の魔力のオーラを纏った凶暴な霧の魔獣――「ファントム・ハウンド」の群れだった。全部で五体。鋭い牙と影のような漆黒の毛並みを持つそれらの魔獣は、ガレルトたちが放つ恐怖の魔力に反応して激しく逆上し、いつでも飛びかかれるような殺気を放っていた。

何よりも異常だったのは、ガレルトが絶対的な服従を強いるために使っていた「強制の魔導具」から、バチバチと激しい火花が散り、すでに制御不能のオーバーロードを起こしていたことだ。

「ふざけるな! お前たちは俺の命令に従っていればいいんだ! 動け、この役立たずどもが!」

ガレルトは顔を真っ青に染め上げ、冷や汗をダラダラと流しながら、自分の足元で震えている魔獣たちを杖の柄で荒々しく叩きつけた。しかし、日頃から恐怖と暴力で支配され、心を踏みにじられてきた魔獣たちは、もはやガレルトの命令に従うどころか、恐怖のあまり牙をむいてガレルト自身へと威嚇の唸り声を返す寸前になっていた。

「ガレルト様を攻撃する気だ……! この魔獣たち、完全に暴走しているぞ!」

取り巻きの冒険者たちは腰を抜かしたままその場にへたり込み、誰もガレルトを助けに入ろうとしなかった。

「……やっぱり、こうなったわね」

シルビアは冷ややかな視線を向けながらそう呟いた。

「力で従え、恐怖で縛り付けるだけの関係なんて、少しでも形勢が崩れれば一瞬で崩壊するのよ。自業自得だわ……」

しかし、レインの瞳は違っていた。ガレルトがどれほど傲慢で自分を蔑んできた相手であっても、目の前で命の危機に瀕している人間がいること、そして何よりも、恐怖に怯えさせられて利用されている魔獣たちが苦しんでいる姿を、レインが黙って見過ごすことは絶対にできなかった。

「シルビアの言う通り、彼のやり方は間違っている。でも……だからといって、あの人たちや、怯えている魔獣たちをこのまま見捨てるわけにはいかないよ」

レインはまっすぐ前を見据え、落ち着いた声でそう宣言した。

『きゅっ! レイン、助けに行こう! あの魔獣たちも、本当は怯えているだけみたいだよ!』

肩の上のファルが小さな翼をピンと張り、戦闘態勢に入りながら力強く声を上げた。

ポルカもフワフワと空中で震えを抑えながら、『お化けの僕だけど、みんなを守るために頑張るよ!』と小さな決意を込めた顔を見せる。

フェリルは「ワンっ!」と低く頼もしく一声吠え、主の指示を待ち構えていた。

レインは一歩前に踏み出すと、深く息を吸い込み、ゆっくりと地面に左手をそっと添えた。

――シュウゥッ……!

その瞬間、レインの足元から、周囲のどんよりとした濃い霧を綺麗に払い除けるほどに美しく、透き通るような青い魔方陣が鮮やかに広がった。

その穏やかで温かい青い光の波は、広場全体にゆっくりと広がり、ファル、フェリル、ポルカ、そしてシルビアの体を包み込んだだけでなく、ガレルトの足元で怯えていた暴走状態の魔獣たちの心にも、そっと優しく触れ始めた。

「なっ……なんだ、この光は……!?」

ガレルトは恐怖に歪んだ顔を上げ、突如として足元に現れた美しい青い魔方陣を見つめて驚愕の声を漏らした。

「フェリル、ファル、ポルカ! ガレルトたちの周囲を囲んでいるファントム・ハウンドの注意を引きつけて、これ以上誰も傷つかないように抑え込んで!」

レインの凛とした指示が広場に響き渡った。

「ワンッ!」

フェリルは青い魔方陣の加護を受けて風のような超速度で走り抜け、ファントム・ハウンドの一体の側面へと回り込んで鋭く威嚇し、その突進の軌道を完璧にそらした。

「今だ、ポルカ! みんなの目を眩まして!」

『お任せ!僕の目眩ましで 、びっくりしちゃえ!』

ポルカは透明になりながらファントム・ハウンドたちの真ん中にふわりと現れ、可愛らしいポーズと共に小さな霊力の閃光と、温かい光の幻影をフワッと広げた。

「グルゥ……!? なんだ、この温かい光は……?」

攻撃しか考えていなかったファントム・ハウンドたちは、その思いがけない温もりのある霊力の前に、一瞬動きを止めて混乱した。

「そして、ファル!」

『僕に任せて! みんな、危ないところから離れてね!』

ファルの小さな体が、青い魔方陣の光に背中を押されて流星のように宙を舞った。ファルは口元に小さな熱の奔流を集中させ、一発の鮮やかな青い炎の弾丸――**『フレア・スパーク』**を、暴走しているファントム・ハウンドたちの足元の地面へと正確に撃ち込んだ。

――ドォンッ!!

爆発自体は魔獣を傷つけないよう、あくまで威嚇と視界の遮断を目的とした絶妙なコントロールだったが、その鮮やかな青い炎の衝撃と熱量は、ファントム・ハウンドたちに「これ以上近づけば危ない」という本能的な警戒心を抱かせるのに十分すぎた。

「グルルル……!」

ファントム・ハウンドたちは怯んだように一歩後ろへ下がり、霧の奥へと次々と身を翻して逃げ出していった。

わずか数合の交戦の末、一人の負傷者も出すことなく、ファントム・ハウンドの群れは完璧に追い払われていた。

広場には、静寂が戻った。

ガレルトは自分の足がガタガタと震えているのを抑えきれず、その場に崩れ落ちるように尻餅をついていた。彼の傍らにいた巨大なオークや他の魔獣たちも、先ほどまでの殺気はすっかり消え去り、どこかホッとしたような様子でその場に伏せっていた。

「……う、嘘だろ……。なんでお前らが……俺を……」

ガレルトは信じられないものを見るような、そして自分のプライドが音を立てて砕け散っていくような絶望的な顔で、目の前に立つレインを見上げた。

レインは冷たい言葉を投げかけることはせず、ただ静かに、優しくガレルトを見下ろした。

「力でねじ伏せ、恐怖で命令するだけでは、いざという時に魔獣たちは君を守ってくれないよ。彼らは道具じゃない、命を持った相棒なんだからね」

その言葉は、ガレルトの胸の奥深くに突き刺さった。

エリートとしてのプライドをすべて踏みにじられたような屈辱感と、しかし自分がどれほど間違っていたのかを突きつけられたショックで、ガレルトは唇を噛み締め、それ以上一言も言い返すことができなかった。

少し離れた場所でその様子を見ていたシルビアは、複雑なため息をつきながらも、どこか誇らしげな微笑みを浮かべてレインの隣に歩み寄った。

「まったく、あなたという人は……。助けられた相手があんな態度でも、お説教だけで済ませてあげるんだから、お人好しにもほどがあるわよ」

「はは、そうかもしれないね。でも、怪我人が出なくて本当によかったよ」

レインが柔らかく微笑むと、肩の上のファルも『レイン、かっこよかったよ!』と嬉しそうに羽をパタパタさせた。

霧幻の谷の深い霧は、まだ少しだけ辺りを包み込んでいたが、その中心には確かな温もりと、本当の絆の力がしっかりと輝いていた。

ガレルトの件を無事に収めたレインたちは、谷の奥に潜む本当の異源の核心へと向けて、再び歩みを進めていくのだった。

後書き

第17話「霧の中の罠と、差し伸べられる手」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

霧幻の谷の奥で自身の力任せのやり方に限界を迎え、絶体絶命の窮地に陥ったガレルトを、レインたちが仲間たちとの完璧な連携(ファルのフレア・スパーク、ポルカの幻影、フェリルの索敵)で救い出すドラマチックなエピソードを描かせていただきました。ガレルトのプライドが打ち砕かれ、レインの優しさと「真の絆の力」がより一層際立つ展開になっていれば幸いです!

次回の第18話では、霧幻の谷の奥深くに眠る異変の核心や、パーティ全員で挑むさらなる大きな試練へと繋がっていきます……!

ブックマークや評価、いいねなどをポチッと押していただけると、執筆のモチベーションがものすごく跳ね上がります!

それでは、第18話でお会いしましょう!

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