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混沌の神の再生  作者: 桐ヶ谷本真志
神から少年へ。
1/16

もう、ここから始めるしかない

どれほど強くなろうとも、その上には必ず誰かがいる——それが世の理だと人々は信じている。


だが、その常識には二つの例外が存在した。


一つは「レギュレーター」。すべてを統べる至高の存在であり、この世界において彼を超える者は決して現れないとされている。だが、その詳細はほとんど知られていない。


そしてもう一人——

その領域に最も近づいた存在。


混沌の神、エフラクシス。


世界は十二柱の神によって統治されていた。彼らはこれまで誰の前にも姿を現したことがない。その起源はすべてレギュレーターにあるとされている。


しかし、エフラクシスだけは違った。


その過去は不明。


だが一つだけ確かなことがある。


——彼こそが、十二神の中で最強の存在であるということ。


彼の一撃は銀河すら震わせる。力は他の十一柱すべてを合わせたものに匹敵する。仮に全員で挑んだとしても、戦いは始まった瞬間に終わるだろう。


魔力もまた桁違いだった。そのわずか一%でさえ、世界を覆い尽くすことができる。


そして彼は力だけではない。


知性においても頂点に立っていた。


科学や魔法の枠を超えた技術のほとんどは、彼によって生み出されたものだった。他の神々がどれほど強大であろうと、彼の前では蟻同然だった。


彼は理解していた。


——まだレギュレーターには届いていない。


だが、いつか必ずその領域へ到達する、と。


だからこそ——


想像すらしなかった。


自分が、視界すらまともに保てないほど弱るなど。


冷たい床に横たわるエフラクシス。


胸には剣が突き刺さっていた。


血が流れ出る。


本来なら、この程度の傷は剣が抜けた瞬間に消えるはずだった。


だが——治らない。


ぼやける視界の中、彼を見下ろす十一の影。


「ついに排除できたな」


「世界の均衡を乱した罰だ」


「あんな怪物、生かしておくべきではない」


その声は耳を切り裂く。


だが、それ以上に意識を奪っていたのは——胸の剣から放たれる異様な気配だった。


力が、吸われていく。


その剣を握るのは——


光の神、ルシファー。


かつて友と呼んだ存在。


「お前の力は、有効活用させてもらうよ」


歪んだ笑み。


その瞬間、すべてを理解した。


——裏切り。

——強奪。

——陰謀。


怒りが爆発する。


理性が砕け散る。


そして彼は最後の力で叫んだ。


「テメェら……全員ぶっ殺してやる……!! 千年かかろうが関係ねぇ……!! 必ず——一人残らず殺す!!」


闇が彼を包み込む。


最後に見えたのは、笑う神々の顔。


意識が沈む中、残ったのはただ一つ。


——殺す。

——殺す。

——殺す。


やがて——


光。


眩い光。


エフラクシスは目を開けた。


そこにいたのは——


神ではない。


小さな人間の少女だった。


「ママ!パパ!アベルが起きたよ!」


無垢な声。


彼は自分の手を見る。


——小さい。

——弱い。


拳を振ろうとする。


だが動かない。


ようやく持ち上げた手は、信じられないほど幼く柔らかかった。


混乱が押し寄せる。


だがやがて、彼は一つの結論に至る。


——転生。


エフラクシスは、生まれ変わったのだ。


アベルという名の赤子として。


(いいだろう……)


(むしろ好都合だ)


復讐の炎が再び燃え上がる。


この新たな人生で——


神々を、皆殺しにする。


少女は駆けていった。


彼はその背中を見つめながら考える。


自分は確かに死んだはずだ。


それなのに、なぜ今こうして存在しているのか。


理解はできなかった。


だが答えは一つしかない。


魂が新たな肉体に宿った。


つまり——転生だ。


アベルは静かに目を閉じる。


これは二度目の人生。


そして、復讐のための人生だ。



---


夜。


月が暗雲の下で輝いていた。


少女と両親はすでに部屋を去っている。


アベルは気づく。


自分が今、ベッドではなく揺りかごの中にいることに。


立ち上がろうとする。


だが、身体が弱すぎる。


ならば——


「マナ」を使うしかない。


マナとは、すべての人間が生まれ持つ魔力の源。


それを使えば身体強化も可能。


だが——新生児の状態での発動は極めて危険。


失敗すれば、即死。


それでも彼は迷わない。


なぜなら——


彼は元・神だからだ。


瞑想に入る。


意識を集中させる。


やがて——


脳裏に光景が浮かぶ。


嵐。


巨大な嵐。


その周囲を、赤・紫・氷青の光球が漂う。


風、火、土、水。


複数属性適性。


さらに——


嵐の中心には「剣」。


闇のように揺らぐ刃。


音すら飲み込む静寂。


影属性、剣適性。


常識ではあり得ない数の適性。


だが、驚く暇はない。


最終段階が始まる。


マナが暴走する。


通常なら、すべてコアへ戻して安定させる。


だがアベルは違う。


一部を肉体へ流す。


骨、細胞、脳。


強化。


そして残りをコアへ。


——成功。


彼は笑う。


だが——


立てない。


なぜだ。


完璧だったはずだ。


それでも彼は諦めない。


何度も立つ。


何度も倒れる。


そして——


歩いた。



---


やがて彼は屋敷を探索する。


そして見つける。


扉に刻まれた紋章。


——ルシファーの印。


怒りが蘇る。


だが抑える。


進む。


図書室へ。


無限の書架。


中央に浮かぶ黄金の書。


「何を知りたい?」


アベルは問う。


「この家について」


情報が流れ込む。


頭が割れそうになる。


そして理解する。


——モーニングスター家。


裏切り者と同じ名。


光属性の名門貴族。


さらに——


他の名家。


テラヴァータ。

エーテロン。

イグニス。

セレスティア。


そして——


「破滅の時代」。


300年戦争。


神々の降臨。


世界の分断。


都市セレネ。


だが——


神はその一度しか現れていない。


「なぜだ……」


疑問が残る。


その時——


身体が限界を迎える。


空腹。


疲労。


アベルは揺りかごへ戻る。


今は——


ただの赤子。


眠りにつく。


復讐を胸に抱きながら。

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